健康情報: 生と加熱で効能が違う? ショウガを効かせる食べ方とは

2006年12月4日月曜日

生と加熱で効能が違う? ショウガを効かせる食べ方とは

12月3日(日)放映 フジテレビ「発掘!あるある大事典II」
  番組URL:http://www.ktv.co.jp/ARUARU/

◎組の双子タレントがショウガ10gを好きな食べ方で食べて、温まり効果
 をサーモグラフィで比較
 →1人は生のショウガを冷や奴にかけた。もう1人は豚のショウガ焼きを
 食べた
 →2組とも、ショウガ焼きを食べた人の方のみに温まり効果が得られた
◎番組実験。生ショウガを10g食べると3時間後に白血球数が増えた
 →ショウガの辛み成分ジンゲロールが免疫細胞の数を増やして免疫を強化
 →免疫細胞はジンゲロールを敵と勘違いする。ジンゲロールには細菌類に直
 接攻撃を仕掛ける殺菌作用もある
◎ジンゲロールは加熱すると量が減る。空気に触れると酸化しやすい
(すり下ろして3分放置で半減)
 →お薦めの食べ方は、皮ごとスライスしてハチミツ漬け
 →雑炊を食べる直前に刻んだショウガを加えても良い
◎加熱すると得られる成分は、ショウガオール。血管を収縮させるプロスタグ
 ランジンの働きを弱め、血管を拡張し、血液の流れを良くして体を温める
 →加熱の方法でショウガオールの量を比較。生0.15、炒める0.75、煮る0.58、
 茹でる0.38(単位はmg/10g)。お薦めの調理法は炒める
 →きんぴらショウガ、ジャコと合わせた炒め物、卵焼きに刻んで入れる方法
 がお薦め
◎ショウガ湯を作るときはぬるめの湯を使おう
 →生で得られるジンゲロール、加熱で得られるショウガオールのW効果が得ら
 れる

(コメント)
生ショウガを使ったのは「冷や奴」、加熱ショウガは「豚のショウガ焼き」、
これではそもそも料理の温度に差があり、
加熱ショウガで「温まる」のは自然な成り行きではないでしょうか。
対照は、同じものを用いるべきだと思います。
すなわち、「冷や奴」に生ショウガを加えたものと、「冷や奴」に加熱ショウガを加えたもの
などにすべきだったと思います。


参考:日経BPネット「引き始めの風邪に効くショウガ湯」
http://www.nikkeibp.co.jp/archives/415/415434.html#recent


漢方では、ショウガの根茎(こんけい)を
生姜(しょうきょう)や乾姜(かんきょう)と言って
多くの薬方に配合されています。
古い書物になると、姜の文字が薑になっいることもありますが
同じ意味です。

ただ、言葉に多少混乱があって、日局のショウキョウは、
生の生姜ではなく、乾燥させたものなので、
通常、生の生姜と区別するために、
干生姜(かんしょうきょう)や乾生姜(かんしょうきょう)と呼ばれることもあります。
また、干生姜と区分するために、新鮮な生姜は、鮮姜(せんきょう)と呼ぶこともあります。


日本と中国では、この生姜と乾姜が異なり、言葉の混乱が見られるので
注意してください。

日本の市販の生姜(しょうきょう)はほとんど干生姜(乾生姜)ですが、
これは、中国では乾姜(かんきょう)となります。

日本の乾姜は蒸して乾燥させたもので、中国では使われていません。

中国では、干生姜(中国の乾姜)を炮(ほう)じて、炭化(たんか)させたものを
炮姜(ほうきょう)、黒姜、炮姜炭といいます。
散烈の性質は乾姜より弱く、温経止血に働き、虚寒の吐血・衂血(じくけつ;鼻血)・血便・不正出血などに棕櫚炭・烏梅炭などと用います。



漢方の薬方集では、生姜の量が生の量で書いてあるものと、
干生姜の量で書いてあるものがあり、注意が必要です。
そのことを知らずに、生の量が書いてあるのに、
干生姜をその量配合してしまい、
辛くて、困った経験があります。


生姜も乾姜も、体を暖める作用がありますが、
乾姜の方が、体を温める作用は強いと言われています。


通常、生姜の代用に乾姜が使えますが、
嘔吐を止めるには、乾姜では代用できず、
生の生姜でないといけないようです。
例) 生姜瀉心湯

生姜と乾姜の両方を配合している薬方もありますので、
そのような場合も代用ができないと思われます。


生姜の面白い作用として、
半夏(はんげ)という生薬の副作用を抑える作用があります。
半夏をそのままなめると、ノドがチクチクします。
その際、生姜(or乾姜)をなめると、痛みがおさまります。
ですので、半夏の配合された漢方薬には、
大抵、生姜や乾姜が配合されています。

例外の代表例は、利膈湯(りかくとう)です。
この薬方は、咽喉ガンなどで、
食物がノドがとおらなくなった際に、
これを飲むことで、食物がノドをとおるようになるそうです。
浅田流では利膈湯加味を用いますが、
これにはショウガが配合されています。


棗姜水煎(そうきょうすいせん)という言葉があり、
漢方薬方の薬味として書かれていなくても、
大棗(たいそう;ナツメの実)と生姜とを一緒に入れて煎じることがあります。


【参考】
ショウガ(生姜)
ショウガ ginger∥Zingiber officinale Rosc.

 ショウガ科の多年草。香辛料として世界的に知られています。
起源は古く、インド原産とされていますが、野生種は発見されていません。
熱帯域が原産地であるので、高温多湿を好み、日本では7月から9月ごろにかけてよく生育します。
千葉・埼玉・長崎県などに栽培が多いようです。
漬物、薬味、菓子用のほか、薬用、ソースなどの調味用やジンジャー・エールの製造などに使われます。        
[薬用] ショウガの根茎を生薬では生姜(しょうきょう)といいます。
精油を含み、独特の芳香があります。
主成分はジンギベロール zingiberol で、ほかにセスキテルペン、モノテルペン、
辛味(しんみ)成分として結晶性のジンゲロン zingerone、油性のショウガオールshogaol などを含みます。
 他の生薬と配合して芳香性健胃、食欲増進、新陳代謝機能促進(しんちんたいしゃきのうそくしん)、鎮嘔(ちんおう)、鼻詰り、悪寒発熱(おかんほつねつ)に用いられます。
消炎鎮痛作用があり、姜汁(きょうじゅう)とサトイモの親芋をつきつぶしたものと小麦粉(こむぎこ)を混ぜ、関節痛,肋間神経痛などに外用します。また食物の毒(肉類,魚類など)および薬毒(半夏(はんげ)、天南星(てんなんしよう)などの)を除く

『薬局の漢方』 清水藤太著 南山堂刊 昭和38年8月20日発行
p.50
ショーキョー ZINGIBER 生姜
〔基〕 各地に栽培するショーガ科の多年草,ショーガZingiber officinaleの生の根茎.生のフルネ(ヒネショーガ)である.「姜汁」は生姜のしぼり汁である。

〔性〕 不規則に分岐した根で太さ1.5~3cm,長さ10~15cm,外面灰褐色で光沢ある表皮がある.横切面は帯緑淡黄色,質重く,特異の芳香と辛味がある.乾姜よりも味がよい.

〔成〕 辛味成分:ジンゲロン,ショーガオール.不揮発性で皮部に多い.精油2%.

〔選〕 肥大で汁が多いものがよい.生の生姜がないときは乾姜(即ち薬局方の生姜)を3分の1量用いる.

〔応〕(温) 健胃,鎮嘔剤で,水毒の上逆による嘔気,咳,吃逆,悪心,噫気に用いる. 「嘔家の聖薬」といわれる.生姜は調味と食欲を増進し,諸薬の香味をよくし,胃に受容しやすくし,オクビをとどめ,胃腸を刺戟して諸薬の吸収をうながす効がある.生姜は健胃鎮嘔の効が乾姜にまさる.生姜は胃内停水なくて嘔するもの,半夏は胃内停水があって嘔するものである.生姜汁は,その効が生姜より早い. (薬徴続) 主治:嘔. 兼治:乾嘔,噫,噦逆. 半夏は嘔と吐と兼発するもの,生姜はただ嘔するもの,又は嘔が多く吐が少ないものを治す.

〔方〕 桂枝湯葛根湯小半夏湯,生姜瀉心湯,その他多数.

〔量〕 1日3~10g.

p.50
ショーキョー ZINGIBER 生姜
〔基〕 各地に栽培するショーガ科の多年草,ショーガZingiber officinaleの生の根茎.生のフルネ(ヒネショーガ)である.「姜汁」は生姜のしぼり汁である。


『漢方処方応用の実際』 山田光胤 南山堂
p.22 8.漢方薬の投薬法 1) 薬物についてで
〔生姜〕 傷寒論にある生姜は,な まのショウガである。
〔乾姜〕 傷寒論の乾姜は,乾燥したショウガである.現在これを乾生姜と慣習上よんでいる.生姜の代りに乾生姜を用いるときは,1日 分2.0gぐらいがよい. 市販の乾姜は,一度蒸したショウガを乾燥したものである.後世方ではこれを用いたようであるが,著者らは乾生姜を用いている.