健康情報: 2008

2008年12月24日水曜日

慢性肝炎に使われる漢方薬

慢性肝炎に使われる漢方薬には色々なものがあります。
一時期は肝炎といえば小柴胡湯(しょうさいことう)と、病名漢方での使用が増え、異常なまでに小柴胡湯が使われましたが、間質性肺炎(かんしつせいはいえん)の副作用問題が起こり、急激にその使用量が減りました。
当時は漢方薬に副作用があることで話題となりましたが、現在は落ちついているようです。
単なる肝炎という病名で小柴胡湯を用いるのではなく、他の症状、体質などを考慮して漢方薬を服用すれば、良くなることもあります。
代表的な薬方とその症状は下記の表のとおりです。

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慢性肝炎に良く用いられる漢方薬方の表(『漢方処方類方鑑別便覧』より)
症状 大柴胡湯 小柴胡湯 茵蔯蒿湯 茵蔯五苓散 柴胡桂枝湯 四逆散 柴胡桂枝乾姜湯 補中益気湯 十全大補湯 人参湯 平肝流気飲 乾姜人参半夏丸料
便秘がち
下痢しやすい
尿の出が少ない
食欲不振
不眠傾向
汗をかきやすい
上半身に汗をかく
首から上に汗をかく
寝汗をかく
顔色が悪い(貧血傾向)
皮膚が乾燥する
黄疸
疲れやすい・だるい
のぼせやすい
肩が凝る
咳・痰
口・のどが渇く
口の中が粘つき、苦い
薄い泡のような唾がたまる
吐き気・嘔吐
動悸がする
鳩尾がつかえる感じ
お腹が張っている
冷たいものを欲しがる
手足が冷える
感情が不安定


肝臓病と言うと小柴胡湯がまっ先に思いうかべますが、小柴胡湯に限定せず、虚実等を勘案して、柴胡剤(さいこざい)から選択する必要があります。一般に柴胡剤と呼ばれるものは、大柴胡湯(だいさいことう)柴胡加龍骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、四逆散(しぎゃくさん)、小柴胡湯柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)加味逍遙散(かみしょうようさん)補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などが入ります。広義では、柴芍六君子湯(さいしゃくりっくんしとう)等も柴胡剤になりますが、柴胡剤に含めることは稀です。

当然ながら、肝臓病でも、柴胡剤以外の薬方が用いられることがあります。

柴胡剤は、いわゆる胸脇苦満(きょうきょうくまん)を目標に用いられることが多いですが、
胸脇苦満が無くても使われることがあります。
胸脇苦満の変形として、肩こりや背部痛などがあらわれることがあります。


茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)は、黄疸(おうだん)の際に良く使われ、柴胡剤と併用されることが多いようです。
茵蔯五苓散は、五苓散に茵蔯蒿(いんちんこう)を加えたものです。


大柴胡湯柴胡加竜骨牡蠣湯茵蔯蒿湯等には、下剤である大黄(だいおう)が含まれていますので、下痢には注意が必要です。煎じ薬でしたら、量を調節した方が良いでしょう。ただ、下痢したほうが、症状が良くなることが多いようです。
大黄は単なる下剤ではありません。下痢を恐れて大黄を抜くと効果は弱くなる(効かなくなる)
可能性があります。

エキス剤の柴胡加龍骨牡蠣湯の中には、大黄を除いているものがありますので、注意が必要です。
これは、エキス製造メーカーから相談を受けた故大塚敬節先生が、大黄は適宜加減した方が良いと言ったことから、抜いたとのことです。このことを知らずに使うと、効果が出にくいので、注意しましょう。
柴胡加竜骨牡蛎湯については、もともとの処方が不明で、一説には大柴胡湯に竜骨・牡蛎を加えたものであるとか、小柴胡湯に龍骨・牡蠣を加えたものであるとかの話もあります。
また、傷寒論に記載されている薬方では、鉛丹が入っていますが、鉛中毒の可能性があるので、現在、鉛丹を入れることはほとんどありません。

大柴胡湯も、傷寒論に記載の大柴胡湯は、大黄が入っていないようですが、多分、転写の際の誤りであろうと言われています。金匱要略の大柴胡湯には、大黄が含まれています。

2008年12月18日木曜日

便秘と漢方薬

原因

便秘の定義はさまざまですが、便が毎日出ないだけではなく、便の量が少なく、排便も残便感があってすっきりしない状態、また、便が固すぎる状態も含みます。女性のう2人に1人は悩んでいる、あるいは悩んだことがあるといわれているほど、ポピュラー症状です。特別深刻な疾患ではありませんが、排泄(はいせつ)されるべきものが体内で滞(とどこお)っていことは、体にとって決していいことではありません。また、大腸がんをはじめ、さまざな病気の誘因になるとされていますので、適切な方法で、積極的に改善しましょう。
慢性便秘症は、その原因から2つに分けられます。1つは腸や腸以外の場所に重大な患があり、それによって起きる便秘、器質性便秘(①)です。この際、便秘を引き起こすの疾患には、大腸がん、大腸ポリープ、大腸憩室(けいしつ)症、腸閉塞(へいそく)など、腸疾患以外でも、子宮(しきゅう)筋腫(きんしゅ)卵巣(らんそう)膿腫(のうしゅl)などがあります。もう1つが、腸の運動がなんらかの理由で阻害され、機能正常でなくなって起きる機能性便秘です。
機能性便秘には、次の3種類があります。
1つめが、結腸の運動や緊張の低下によって便の通過時間が長引き、水分が吸収されぎて、硬くなって出にくくなる弛緩(しかん)性便秘(②)です。
2つめの直腸(ちょくちょう)性便秘(③)は、下剤や浣腸(かんちょう)の乱用で、骨盤(こつばん)の筋肉がゆるんでしまい本来、便を排出するために大事な機能を果たしている直腸神経の反射が鈍くなったため起きます。薬に頼りすぎたことで、体がなまけることを覚えてしまった結果です。
3つめの痙攣(けいれん)性便秘(④)とは、自律神経が乱れることによって、直腸の上にあるS状腸が痙攣し、便通を妨げるために起こるものです。通過を妨げられている間に便の水分収されて、便は小石状に硬くなります。ウサギの糞のような便が出るのは、この痙攣性秘の典型的な症状です。また、このタイプの便秘は、過敏(かびん)性腸症候群が原因であること多いようです。
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また、一部に、何かの疾患の治療のために使用している薬の副作用が便秘の原因になていることもあります(薬剤性便秘)。その疑いがある場合は、薬を処方してくれている師に相談してみましょう。

排便の仕組み


物を食べ、それが胃に入ると、大腸はその刺激で自動的に蠕動(ぜんどう)運動、すなわち、内容物を先へ送る運動を始めます。これによって内容物が下の消化管へ向かい、それまで貯められていた便も直腸へ送られます。この動きを胃結腸(いけっちょう)反射といい、1日、2回から3回起きます。一般的には朝食後に起きるので、そのときに排便をする習慣をつけるといいとされています。


便がおりてくると、直腸が押し広げられ、それによって直腸にも蠕動運動が起こります。この刺激が脳に伝達され、脳から排便の指令が下ると、肛門の括約筋(かつやくきん)がゆるみ、排便となります。人間は、括約筋がゆるんだところで、肛門がむずむずするなど、いわゆる便意を感じるのです。便が腸のなかを移動している最中など、この前段階までは本人にもコントロールができませんが、この括約筋がゆるむ段階では多少の我慢をすることが可能です。ただし、ここで我慢を繰り返すと、便秘につながることが多いのです。

さらに排出するためには「いきむ」という行為が必要です。これには腹圧を高めなければなりません。排便は、これらさまざまな部位の働きが巧みに機能することによって、はじめて成り立っているのです。



症状/治療


一般的な便秘の症状は腹痛、お腹の張り、ガスなどです。微熱(びねつ)が出たり、頭痛や吐き気を感じる場合、また、排泄された便に血が混じるような場合は、背景になんらかの病気が隠れている可能性があるので、早めに病院へ行きましょう。

また、1~2日便が出ない程度であれば問題はありませんので、あまり神経質にならないのが賢明です。3日以上出ないような便秘がたびたび繰り返されるようであれば、慢性便秘症の可能性があり、医療機関を訪ねる必要があるでしょう。長期間にわたって繰り返されるかどうかを1つの目安にしてください。

さらに、便秘が突然始まり長引いた場合や、だんだんと重くなっていく場合は、一度病院に行きましょう。最近は市販の便秘薬も多く、なかには数日ぐらいの便秘で、すぐに下剤を使う人がいますが、腸の自然な運動を妨げることになりますので、下剤を安易に使用するのは考えものです。

慢性便秘の治療は、便秘の原因となっている病気があれば、まずその治療が優先されます。便秘の症状に対しては下剤を使用します。病気が背景にない機能性便秘の場合は、治療の基本は、食生活をはじめとした生活全般の改善と排便を習慣づけます。下剤の使用が習慣的になっている場合などは、自力で排便ができるように訓練をしていきます。


排便は日常的な行為なので、自分の力でより快適な排便ができるようにしていくことが先決です。医師の指導を受けながら生活改善を行っても、便秘の症状がよくならない場合、そこで初めて薬の使用することになります。

また、過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)などのように、便秘になる背景に心理的な要因がみられるケースにおいては、心理面からの治療も必要です。



生活上の注意点


排便を快適にするためには、なにより日常生活の見直しが大事です。

まずは食事の内容です。栄養のバランスを考え、摂取する食品が偏(かたよ)らないようにしましょう。なかでも食物繊維(しょくもつせんい)は積極的に摂(と)るようにしたいものです。食物繊維が多く含まれるのは野菜、海藻類、果物、豆類、いも類などです。

さらに、排便を促す牛乳、ヨーグルトなどの乳製品も、毎日の食事や間食に上手に取りいれましょう。水分を多めに摂ることも効果があります。ただし、糖分の多い清涼飲料水などは避け、ミネラルウォーターやお茶などがおすすめです。(茶はタンニンに注意)

そして、適度な運動が腸の働きをよくします。激しい運動を行う必要はありません。歩く時間を増やす、いつもはエスカレーターやエレベーターを使っているところを階段を利用するなど、日常の範囲内で少しずつ運動量を増やしていきましょう。


規則正しい排便習慣を身に着けることも重要です。一日一度、理想的には朝食後ですが、トイレに入って、便を出す努力をしてみてください。この際、うまく出ない日があっても、気にしないことです。この習慣を実行するためにも、朝食は必ず摂るようにしましょう。


アドバイス


とくに、背景に他の疾患がない便秘の対処には、日常生活を見直すことが基本です。習慣を見直し、改善したからといって次の日から便秘がすっきり解消するなどということはありませんが、気長に対処していく必要があります。1日1回の積み重ねが大切なのです。ただ、あまり神経質になるのもよくありません。便秘には心理的な側面も影響を及ぼしますので、自分なりの解消法を探りながら、上手に排便ペースをつくっていくようにしましょう。

その際には、むやみに下剤を使わないことが重要です。排便は人間の自然な営みで、もともと下剤を使わなくてもできるようになっているものです。下剤の乱用は、自然に発生する便意も失わせることにもつながります。人間は自分が本来もっている機能を上手に使って生きていくことが健康上もいちばんいいことなのです。とくに排便は日常的なことですので、下剤に手を出す前に、自力で出す癖(くせ)をつけてください。

とくに女性には便意を我慢しないことをおすすめします。我慢しているうち、出すきっかけを失ってしまい、便秘につながることが多々あるからです。

排便習慣を身につけるのは根気のいる作業ですが、気を長くもって挑戦していきましょう。1日や2日出なくても気にしないこともポイントです。


便秘を引き起こす病気


①.ヒルシュスプルング病(先天性巨大結腸症)

結腸の蠕動運動を支配する神経細胞の欠如で、自然排便ができず、子供のときから便秘が続きます。

②.老人性巨大結腸症(特発性巨大結腸症)

老人に見られる病気で、もともとS状結腸が長くて、便秘を繰り返しているうちに、ますます長くなっ太くなって、そこに便がたまるようになったものです。とても頑固な便秘が続きます。


③.大腸ガン、大腸ポリープ

大腸にガンができたり、ポリープと呼ばれるイボないしはコブのような突起ができるために、便の通過が妨げられます。便に血や粘液がついたり、便の形がいびつになっているときは特に要注意です。便秘は年齢のせいだろうと、あまり気にしていなかったお年寄りが、実は大腸ガンが原因だったという例にしばしばぶつかります。ポリープが大腸を刺激して、便秘と下痢を繰り返していたという場合もあります。

④.大腸憩室(けいしつ)

大腸の壁に袋のようなくぼみのできる病気で、炎症を繰り返しているうちに、その刺激で腸管が狭くなり、便秘になることがあります。


⑤.クローン病

大腸や小腸に潰瘍が多発する原因不明の難病で、腸管が狭くなり、腹痛、腹部膨満、下痢、便秘を起こします。便に血や粘液のまじることもあります。


⑥.腸閉塞(へいそく)(イレウス)

腸が途中でつまってしまう病気で、そこから先に便が通れないので、激しい腹痛や吐きけ、腹部膨満を起こします。


⑦.腸管癒着(ゆちゃく)

腸や腹膜に炎症を起こしたり、盲腸炎(虫垂炎)や婦人病の手術をした後に大腸に癒着が起こると、便の通過が妨げられて、便秘になることがあります。

20代ぐらいの若い女性の腸管癒着の場合、心身症が原因となっていることが少なくありません。精神的な原因があっておなかが痛むのですが、それを盲腸炎や婦人病と間違えられて手術を受けるのです。原因がとり除かれていないのですから、また腹痛を起こしたり、便秘を繰り返したりします。この場合は、心身症の専門医の治療が必要です。


⑧.婦人病

子宮筋腫や卵巣嚢腫(のうしゅ)が大きくなって腸管を圧迫し、便秘をもたらすことがあります。女性の場合には、婦人科の病気を疑ってみることも大切です。


子宮内膜症といって、もともと子宮の内側にあるべき内膜が、子宮の外に出てしまう病気があります。生理のたびに外にあるある膜も出血を起こし、激しい生理痛を起こします。腸管に子宮内膜の飛び火した女性がいましたが、出血を繰り返しているうちに癒着を起こし、便秘をすするようになりました。


⑨バセドウ病(甲状腺機能亢進(こうしん)症)

甲状腺ホルモンは体の代謝を活発にさせる物質ですが、そのホルモンが過剰に生成されるために代謝が活発になりぎて起こる病気です。甲状腺肥大、眼球突出、心悸亢進、脈拍数の増加などの症状が現れます。


⑩粘液水腫(すいしゅ)

甲状腺ホルモンの機能が低下するもので、顔が丸く太り、皮ふや粘膜に硬い浮腫が出て、毛髪が抜けるなどの症状が現れます。

子供の頃から甲状腺機能が衰えると、クレチン病となり、成長がストップして低身長になります。


⑪その他

・膀胱ガン、膵臓ガン、肝臓ガンなど(腸を圧迫して、便秘の原因となります。)

・脳や脊髄の病気やケガ

・薬物中毒

・高熱の出る全身性の疾患

・糖尿病

・痔(痔核、脱肛、裂肛)

・痴呆

・パーキンソン病

・脳血管障害(脳卒中)後遺症

・脊髄損傷



便秘を引き起こす薬

(薬の副作用で起こる便秘;薬剤性便秘)

①.抗生物質

強い殺菌作用があり、有用な腸内細菌まで殺してしまい、下痢や便秘を起こすことがあります。


②.消化性潰瘍治療薬

ブロッカー
ファモチジン(ガスター)、シメチジン(タガメット)等

スクラルファート(アルサルミン)

アルジオキサ(アスコンプ)

テプレノン(セルベックス)

塩酸セトラキサート(ノイエル)
ヨウ化イソプロパミド

③.制酸剤

ボレイ末

ケイ酸アルミニウム

④.鎮咳薬

デキストロメトルファン(メジコン)

ジメモルファン(アストミン)

コデイン

ノスカピン

チペビジン(アスベリン)


⑤.精神・神経系の薬

抗不安薬 オキサゼパム(ハイロング)等

抗うつ薬 塩酸アミトリプチン(トリプタノール)等


⑥.抗コリン作用製剤

a.パ-キンソン病治療剤:

トリヘキシフェニジル(アーテン他)、レボドパ(ドパストン他)

b.抗うつ剤(三環系):

アミトリプチリン(トリプタノール他)、クロミプラミン(アナフラニール)、イミプラミン(トフラニール)

c.抗うつ剤(四環系):マプロチリン(ルジオミール他)

d.失禁治療剤:

プロパンテリン(プロバンサイン)、オキシブチニン(ポラキス)


(抗コリン薬には胃腸薬、鼻炎薬、頻尿、不整脈等に使われるものもあります)


⑦.筋弛緩薬

ダントロレンナトリウム(ダントリウム)

⑧.免疫抑制剤

タクロリムス(プログラフ)

インターロイキン2の産生を抑制し、強い免疫抑制作用を示します。


⑨.肝疾患治療薬

アミノエチルスルホン酸(タウリン)

⑩.止瀉薬

塩酸ロペラミド(ロペミン)

・腸の働きを調節している神経に働いて、腸の動きを抑える作用を持つ

⑪.抗不整脈薬

塩酸ピルメノール(ピメノール)等

⑫.高カリウム血症治療薬

ポリスチレンスルホン酸カルシウム(カリエード、カリセラム、カリメート)

ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(カリセラム-Na、ケイキサレート)

⑬.抗真菌剤(経口水虫薬)

グリセオフルビン

⑭.イオン交換薬(高脂血症)

コレスチラミン(クエストラン)等


⑮.麻薬

モルヒネ

コデイン(鎮咳薬として使われます)


⑯.抗ガン薬


メトトレキサート

核酸合成に必要な活性葉酸を産生させる転換酵素の働きを阻害することにより、抗腫瘍効果を発揮します。

その他、便秘を起こす可能性のある薬は沢山あります。


便秘による害

①.腹痛、おなら

便秘そのもの(痙攣性便秘は除いて)では、あまり腹痛を伴うことはありません。便秘が続いて腹痛を起こすのは、ほとんどが腸内にたまったガスが原因しているようです。 ガスが生じるルートには、次の二つがあります。一つは、食事やおしゃべりの時に飲み込む空気と、飲食物に含まれる空気など、口から入ってくるもの。もう一つは、腸内細菌の作用で生じるインドール、アンモニア、アミンなどのガスです。いずれの場合も、便秘をして便で出口をふさがれていると、ガスがたまって行きどころがなくなり、腹痛を起こします。

また、便秘をしていると、ウエルシュ菌などの悪玉の腸内細菌が増え、腐敗発酵を起こしてガスの発生が多くなります。この種のガスは、悪臭も強くなります。


②.頭痛、肩凝り

便秘の患者には頭痛、肩凝りを訴える人が多く見られます。また、食欲不振、舌がザラザラする、口がくさい、めまい、不眠、疲れやすい、イライラなどの症状もよく耳にします。便秘とこれらの症状との因果関係ははっきりわかっていませんが、悪玉菌によって生じるアミン類には自律神経に対する毒性があり、そのために自律神経の働きが乱れて、こうした自律神経失調症の症状が発生するのではないかと考えられます。


③.にきび、肌荒れ、しみ、そばかす

自律神経の働きが低下するために、皮膚の血行が悪くなり、にきびや肌荒れの生じることもあります。また、便秘をすると腸内細菌が小腸にまで上昇することがあり、その結果、小腸の栄養を取り込む働きが低下し、肌の健康を妨げているのかもしれません。


④.蕁麻疹(じんましん)、喘息

便秘をしていると、蕁麻疹や喘息などのアレルギー性の病気が起こりやすくなります。 アレルギー性の病気は自律神経の働きと深い関係があり、これも腸内に生じるアミン類が悪さをしているものと考えられています。アレルギーを起こす下手人であるヒスタミンという物質もアミンの一種であり、何かしらの関係がうかがわれます。


⑤.胆石症

胆石症の発作は、便秘をしていると起こりやすいといわれます。確かに胆石症の患者さんには便秘の人が多く、関係があるものと思われますが、その理由についてはわかっていません。


⑥.脳卒中、心筋梗塞

便秘の便を出すのに強くいきむため


⑦.大腸ガン、大腸ポリープ

便の中にはもともと食べ物に含まれていたものだけでなく、消化管の中で新たに生じた有害物が色々混在しています。

中にはガンを誘発する物質もあり、便が長くとどまっていれば、その作用も長時間に及んで、ガンを生じさせることもあります。

便の通過時間の短いアフリカ原住民には大腸ガンがごくまれで、便の通過時間の長い欧米人に多いことからも、その関係が裏付けられています。


⑧.乳ガン

アメリカのカリフォルニア大学で、1481人の婦人を対象に乳ガンの検査をしたところ、乳ガンに移行しやすい異常細胞を持っている人が、1日に1回便通のある人たちの場合には20人に1人だったのに対し、週2回以下の人たちでは4人に1人にものぼるという結果が出ました。なぜ便秘症の人は乳ガンになりやすいのか、その理由についてはわかっていません。




⑨.大腸憩室(けいしつ)

大腸の壁がくぼんで、小さな袋状のものができる病気です。中に便などがたまって、炎症を起こしたりします。便秘のせいで、便やガスの圧力が腸に加わるのが主な原因ではないかと考えられています。大腸憩室のある人が便秘を続けていますと、憩室の出張りの中に便が入り込んで炎症を起こしたり、あるいは破裂したりして、大変なことになります。この大腸憩室の破裂は、細菌の沢山含まれている便が、腸の中からお腹の中(腹腔内)にばらまかれることになるのですから、緊急の開腹手術以外には命を助けることはできません。


⑩.腸捻転(ねんてん)

硬い便とガスで大腸の内部が占拠された状態が続くと、内部の圧力が上がって、タイヤのチューブのように腸がふくらんできます。大腸の固定の悪い場所(直腸のすぐ上に続く部分の大腸・・・・・・S状結腸などの部分)では、腸がねじれて腸捻転を起こしやすく、これを起こせば、緊急手術でなくては助からないということになります。


⑪.脱腸(ヘルニア)

便秘で腸内圧が高まり、これを解消しようとして腹圧をさらにかけ排便行為に及びますと、脱腸(ヘルニア)を誘発あるいは悪化さることがあります。特にお年寄りでは、腹筋が萎縮して弱くなっていますので、脱腸(ヘルニア)を起こし易くなっています。



⑫.腸閉塞(へいそく)(イレウス)

大きな便のかたまりにより、腸管腔が完全にふさがれてしまうと、腸閉塞になります。


⑬.痔

最もポピュラーな痔の病気である痔核(じかく)(イボ痔)は、肛門近くの静脈が欝血(うっけつ)することによって起こります。便秘のために強くいきむと、肛門周辺の欝血が強まり、痔核を起こさせたり、症状を悪化させます。

また、便秘をしていて、かたい太い便を無理に抽出しようとすると、肛門のヘリを切って裂肛(れっこう)(切れ痔)の原因にもなります。

裂肛を起こすと、痛みのために排便をがまんするようになり、その結果、ますます便秘がちになるといった、悪循環に陥りがちです。

⑭.高血圧

便秘は高血圧の原因になり、便秘を治しただけで血圧が下がったという話も耳にします。便秘のために悪玉菌が腐敗発酵をしてアミン類を作り出し、それが自律神経の働きを乱しているのではないかと考えられていますが、はっきりしたことはわかっていません。

長寿村のお年寄りの便を調べると、ビフィズス菌などの善玉の腸内細菌が多く、悪玉菌が少ないといいます。動脈硬化を予防し、脳卒中や心筋梗塞を未然に防いで長寿を保つには、善玉菌を増やすことが大切なようです。そのためにも便秘を治し、日頃から便秘を整えておくようにしましょう。


⑮.肥満

便秘は肥満の原因にもなります。

ケガや手術をすると、これ以上からだが壊れないように、組織と組織を結びつけている脂肪が増えます。便秘によって悪玉菌が増え、毒素をたくさん出しているときにも、これと同じように脂肪が増えるのです。つまり、悪玉菌の毒素から体を守ろうと脂肪が増えるわけです。このときの脂肪は固く、つまむと鈍い痛みを感じます。また、悪玉菌の作る物質の中に、脂肪を増やす働きをするものがあるとも言われています。

便秘をすると内臓の機能が低下します。つまり必要な栄養素を吸収しにくくなります。一方、糖や脂肪といったものは比較的吸収されやすいとされています。このため、便秘になると、必要な栄養素が不足し、その不足分を補おうと食べ過ぎてしまい、食べ過ぎると不要な糖や脂肪だけが吸収されてしまい、肥満になるといったことが起こるとも言われています。


⑯.肝障害、腎障害

食べた物の腐敗や異常発酵によってつくられた毒性物質(アンモニア等)を解毒しようとするため、肝臓や腎臓に負担がかかり、障害を起こすことがあります。


受診勧告のポイント


1.突然起こった変化が2週間以上続いた場合

2.嘔吐、差し込むような腹痛がある場合

3.服用している処方薬に起因すると考えられる場合。


4.便に血液が混じっている場合

便に血液が付着している場合は、痔あるいは肛門の亀裂によることが考えられる。しかし、便に血液が混じっている場合、あるいは突然起こった症状が2週間以上続いた場合には、より重篤な疾患が隠されている可能性がある。また、嘔吐や差し込むような腹痛がある場合には、腸閉塞や腸捻転を疑うことも必要となる。

便秘に用いられる薬(下剤)



一般に、下剤とは、口から飲むこと(内服)により排便を促すことを目的とした薬剤をさしていますが、広い意味では、肛門から挿入する坐薬や、肛門から直腸に注入する浣腸剤、あるいは注射薬でも、それが排便を促すための薬であれば、下剤の範疇に入れられているようです。



分類 一般名 商品名











1.塩類下剤 硫酸マグネシウム

人工カルルス塩

酸化マグネシウム

クエン酸マグネシウム マグコロール(P)他
2.糖類下剤 ラクツロース モニラック他

D-ソルビトール D-ソルビトール液
3.膨張性下剤 カルメロースNa(CMC) C.M.C「マルイシ」

(カルボキシメチルセルロース) バルコーゼ
4.浸潤性下剤 DDS+カサンスラノール 強力バルコゾル

DDS+ダンスロン (強力)ソルベン*













1.小腸刺激剤 (加香)ヒマシ油

オリーブ油
2.大腸刺激剤

アントラキノン系誘導体 カスカラサグラダ流エキス カスカラサグラダ流エキス
(植物性製剤) センナエキス アジャストAコーワ他


センノシド
ダイオウ、アロエ
セノコット、プルゼニド他

フェノールフタレイン誘導体

フェノバリン

フェノバリン「各社」、ラキサトール
ジフェノール誘導体 ピコスルファートNa ラキソベロン他
3.直腸刺激剤 ビサコジル(坐) テレミンソフト坐薬他
(坐剤) 炭酸水素Na配合 新レシカルボン坐剤他





その





副交感神経刺激剤 交感神経麻痺剤 臭化ネオスチグミン 塩酸トラゾリン ワゴスチグミン イミダリン
浣腸 グリセリン グリセリン坐薬、-浣腸「各社」

薬用石鹸 薬用石鹸「各社」
電解質配合剤 塩化ナトリウム等配合剤 ニフレック(経口腸管洗浄剤)
ビタミン剤 ビタミンB1 アリナミンF、ノイビタ

パントテン酸Ca パントシン他

上記のほか、整腸剤である乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌などの生菌製剤やコール酸などのような利胆薬が便秘に使われることがあります。


便秘に用いられる漢方薬


がっしりしている人、またはかた太りしている人で、肩凝りがしやすく、朝起きると口の中が粘ついていたり苦かったりする、みぞおちのあたりがつかえる傾向がある、胸脇苦満(きょうきょうくまん)(胸や脇の圧迫感)がある、などの自他覚症状がある人の便秘。


体力のある肥満、太鼓腹(たいこばら)タイプで、高血圧気味の人の便秘。


体力があり、腹力強く、へそと右の腰骨を結ぶ線の中間あたりを押すと抵抗・圧痛がある人の便秘。


体力があり、頭重、肩凝り、下腹部に圧痛、月経不順、足が冷える人の便秘。


体力は中等度以上で、口渇、みぞおちが張る、吐き気などがある場合の便秘。


高血圧でのぼせ気味、頭痛やめまい、不眠、鳩尾(みぞおち)の痞(つかえ)があるタイプの便秘。



体力は中程度~やや落ちた人で、多少冷えがちで、尿が近く、口渇や皮膚のカサカサがある人の便秘。




上下の腹部が張り、時に痛むという便秘に用います。外科手術のあとなどに体力が弱っていて、便秘が起きてきた、という場合も有効です。また、ストレスにより、下痢や便秘となる過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)にもよく用いられます。


体力が中等度が、またはやや落ちてきている人、特に婦人の便秘に用います。背中に熱さを急に感じたかと思うとそのあと寒けがする、午後になると顔がほてってくる、肩が凝る、なんとなく気分がいらだつ、食欲がない、根気がない、などの症状を伴う便秘によいものです。


体力が中等度の人からやや落ちた人にまで幅広く使える処方です。便秘、食欲不振以外にこれという症状の場合に用いてよいものです。



老人など体力のない人の便秘に用います。便はウサギのふん状で、皮膚はカサカサして、うるおいがないことが目標です。麻子仁丸と良く似ています。


体力のやや落ちている虚証の便秘に良く、腰から下に力がない、ひざがガクガクして転びやすい、夜しばしば小便に起きる、のどが渇きやすい、などの症状があることが目標です。


虚弱体質で疲れやすい(特に小児)タイプに使います。食欲不振、胃腸の炎症、ときに下痢、口渇、夜尿などの症状を伴うことがあります。

14.三和散(さんわさん)

飲食するとみずおち(みぞおち、鳩尾)に柵をかけたように痞えて下がらないように思われるものに用いる。大便が秘結(ひけつ)しても、大黄を用いると腹が痛むだけで下がらないもの。
麻子仁丸かなと思われる方ですっきりせず、市販薬、処方薬全て不可という人に使って効く。
身体のどこかの筋が引っ張って痛み、或は屈伸できない者。

15.桂枝加芍薬湯加蜀椒人参
   大塚敬節先生の創案処方で、胃下垂症、胃アトニー症、開腹手術後癒着のため腸蠕動が円滑にゆかぬもの、腸管の狭窄、などのためにおこる便秘に用いる。腹が張ってガスがたまりやすく、腹痛があり、大便はやわらかいのに快通しない、腹は軟弱無力で冷えるといった症状によい。
上記の他、証に合わせて、大承気湯(だいじょうきとう)、小承気湯(しょうじょうきとう)、中建中湯(ちゅうけんちゅうとう)、神効湯(しんこうとう)、半夏瀉心湯はんげしゃしんとう)、柴胡加竜骨牡蛎湯さいこかりゅうこつぼれいとう)、小柴胡湯(しょうさいことう)、柴芍六君子湯(さいしゃくりっくんしとう)、六君子湯りっくんしとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、附子理中湯ぶしりちゅうとう)、真武湯しんぶとう)、通導散つうどうさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、大黄附子湯(だいおうぶしとう)、厚朴三物湯(こうぼくさんもつとう)、茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)、旋覆花代赭石湯(せんぷくかたいしゃせきとう)、枳実芍薬散(きじつしゃくやくさん)、蜜煎導(みつせんどう)、厚朴七物湯(こうぼくしちもつとう)などが用いられます。

下剤にあらずして通じを通ずる。古方の妙(みょう)、思議(しぎ)すべからず。」と言われるように、一般的に下剤とされないものでも、便秘が治ることがあります。




【参考】
下剤・温補(おんぽ)剤は表裏の関係であり、便秘していても実証か虚証かによって使い分けなければならないことはいうまでもない。気の鬱滞(うったい)を治す順気(じゅんき)剤である厚朴(こうぼく)、枳実(きじつ)、蘇葉(そよう)と大黄(だいおう)+芒硝(ぼうしょう)を加えたもの、例えば大承気湯(だいじょうきとう)(大黄、芒硝、枳実、厚朴)は最も実証の人に用い、大黄のみを加えたもの、例えば小(しょう)承気湯(大黄、厚朴、枳実)がこれに継ぐ。気の上衝(じょうしょう)を治す順気剤である桂枝(けいし)と大黄+芒硝を加えたもの、例えば桃核(とうかく)承気湯(大黄、芒硝、桂枝、桃仁(とうにん)、甘草(かんぞう))はさらに弱くなり、大黄のみを加えたもの、例えば柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)(柴胡、半夏(はんげ)、茯苓(ぶくりょう)、桂枝、黄芩(おうごん)、大棗(たいそう)、人参、竜骨(りゅうこつ)、牡蛎(ぼれい)、生姜(しょうきょう)、大黄)がこれに継ぐ。順気剤のない大黄+芒硝を加えたもの、例えば調胃(ちょうい)承気湯(大黄、芒硝、甘草)はさらに弱くなり、大黄のみを加えたもの、例えば三黄(さんおう)瀉心(しゃしん)湯(とう)(大黄、黄芩、黄連(おうれん))がこれに継ぐ。ここまでは実証の便秘に用いられる。

次いで、梔子(しし)を加えたもの、例えば黄連解毒湯(梔子、黄?、黄連、黄柏(おうばく))が続く。虚証の便秘となると、さらに虚したときに用いる乾姜(かんきょう)を加えたもの、例えば人参湯(にんじんとう)(人参、白(びゃく)朮(じゅつ)、甘黄、乾姜)を用いる。新陳代謝がさらに衰えると附子(ぶし)を加えたもの、例えば真(しん)武(ぶ)湯(茯苓、芍薬(しゃくやく)、生姜、白朮、附子)を用い、さらに虚になると附子+乾姜を加えたもの、例えば四逆(しぎゃく)湯(甘草、乾姜、附子)を用いて新陳代謝を亢進させる。下痢の場合でも虚実によって同様に使用する。

【下剤、温補剤】

大黄 + 芒硝 + 順気剤(鬱滞)


大黄 + 順気剤(鬱滞)



大黄 + 芒硝 + 順気剤(上衝)


大黄 + 順気剤(上衝)


大黄 + 芒硝


大黄≒センナ≒アロエ


山梔子



車前子


乾姜≒麦芽糖(マルツエキス)≒蜂蜜


附子


乾姜 + 附子



『漢方薬の実際知識』(東洋経済社刊)p293-294より(一部改変)

(アロエは使わない方が良い)




便秘に用いられる民間薬・健康食品

ドクダミ、イチジク、カワラケツメイ、エビスグサ(ハブ茶)、ギシギシ、赤松、枸杞、桑、ハコベ、オオバコ、ウツボグサ、小豆、ゴマ、ノイバラ、ムクゲ、タンポポ、ヤマゴボウ
ジャガイモ、ハチミツ、プルーン、アロエ、サラシア、クルミ、糖アルコール、食物繊維、寒天、コンニャク(グルコマンナン)、海藻、乳酸菌、ビフィズス菌、食物繊維、オリゴ糖、納豆菌
などが、民間薬や健康食品として利用されています。

桃の花
生薬名を白桃花(はくとうか)や桃花(とうか)といい、モモ(桃)の花あるいは蕾(つぼみ)を用います。中国では桃の花の咲き乱れる桃源郷を理想とする道教思想や桃の生命力が強いことから、桃には邪気を払う魔除けの作用があるとされていました。日本でも桃の節句には桃の花を飾り、魔除けにお酒に花びらを浮かべて飲む風習もみられます。
成分としては、フラボノイドのケンフェロール(kaempferol)配糖体やマルチフロリンが含まれ、その他、クマリン、ナリンゲニン等も含まれます。
ケンフェロール配糖体には、瀉下、利尿効果があります。

クマリン類は、血液が異常に固まるのをふせいだり、血管を拡張させたりして血流を良くします。最近では抗ガン作用も認められ応用範囲が拡大しています。ですから、血液が停滞しやすい子宮の環境を改善したり、組織の代謝を活発にして、肩こり、めまい、動悸、手足の冷え等の女性の血の道症状の改善に役立つのです。

漢方では利水(りすい)・活血(かっけつ)・通便(つうべん)の効能があり、浮腫(ふしゅ)や脚気(かっけ)、便秘、無月経に用いられます。

『名医別録(めいいべつろく)』には“白桃花は味は苦、性は平で、無毒、大小便を利し、三虫を下し、身を軽くする”と記されています。又、『本草綱目(ほんぞうこうもく)』では“宿水(しゅくすい)痰飲(たんいん)、積滞(せきたい)を利し、狂気(きょうき)を治す”と書かれています。更に同時期の『本草彙(い)言』においては“婦人の血閉血塊、血風癲狂(てんきょう)を破る“とも記されています。

どのような意味かといいますと“白桃花には大便や小便の出を良くする作用があるので、飲食物の停滞がなくなり、お腹がすっきりし、体重が減る。又、月経を規則正しくしたり、閉経時の自律神経の乱れを改善する。尚、白桃花は味が苦いが、無毒で、身体を温め過ぎたり、逆に冷やし過ぎたりさせないので長く利用できる”ということになります。つまり、便秘、むくみ、肥満、月経痛、月経不順、更年期障害等の改善に効果があり、安全性が高いということです。

日本の民間でも便秘薬として用いますが、作用が強いため、妊婦や虚弱者には適しません。

桃の花を服用すると、肌の色が白くなるとも言われています。肌を白くするには外用しても良いそうです。

硫酸マグネシウム(magnesium sulfate)
別名:瀉利塩(しゃりえん)、硫苦(りゅうく)
漢方で大黄とともに利用される下剤に芒硝(ぼうしょう)というものがあります。
朴消(ぼくしょう)や消石(しょうせき)とも呼ばれることがあり、古来から呼び名は混乱しています。
一般に、芒硝には硫酸ナトリウムをあてることが多いのですが、硫酸マグネシウムを芒硝として使用することもあります。
正倉院に保存されている芒硝は、硫酸マグネシウムであることが判明しており、古来の芒硝は硫酸マグネシウムであったと考えられています。

硫酸ナトリウムも硫酸マグネシウムのどちらも塩類下剤の一種とされています。塩類下剤は、腸内での水分吸収を阻止し、腸管内に水分を貯留して、腸管内容量を増加させ腸管を刺激し、蠕動運動を亢進させることで緩下作用をあらわします。塩類下剤は、水には溶けるのですが、腸管内からはほとんど吸収されない塩類であるために、腸管内の濃度は高張性となり、逆に組織から水分を腸管内に吸引します。硫酸マグネシウムは、3.4%が等張なので、これより高張の場合は、この濃度になるまで浸透圧により周囲の組織から水分を吸収します。このように塩類下剤は浸透圧により、効果を発揮しますので、難吸収性のものほど効力が強いことになります。

イオンの吸収度を見ると、次のとおりです。

陽イオン:Mg2+<Ca2+<Na=K


陰イオン:PO3-<SO2-<NO3-<Br<Cl

硫酸マグネシウムと硫酸ナトリウムとを比較すると、陽イオンのマグネシウムがナトリウムより吸収されにくく、陰イオンの硫酸イオンは共通ですので、硫酸マグネシウムの方が硫酸ナトリウムより作用は強いことになります。


◎塩類下剤は水分を吸収して効果を発揮しますので、効果を高めるには、充分な水で服用することが必要です。

塩類下剤は消化管からは余り吸収されないとされていますが、少量は吸収されますので、腎臓に障害のある人には注意が必要です。腎臓障害のある人に硫酸マグネシウムを与えると、高マグネシウム血症(症状としては、筋の麻痺症状、悪心、嘔吐、意識障害など)が起こることがあります。(通常問題となることは、まずありません。)

硫酸ナトリウムは、うっ血性心疾患には禁忌であり、高血圧などでナトリウムの摂取を制限されている人も注意が必要です。


芒硝として硫酸マグネシウムを採用し、硫酸ナトリウムを採用しなかった理由

①.歴史的背景(正倉院の芒硝は、硫酸マグネシウム)

②.マグネシウム塩の方がナトリウム塩より作用が強い

③.高血圧等でナトリウムの摂取の制限を受けていても大丈夫

一般の食生活では、ナトリウムの過剰摂取が問題となっていますが、
マグネシウムは逆に足りないとされています。近年話題となったニガリ(苦汁)の主成分もマグネシウム(塩化マグネシウム)です。


檳榔椰子の種子

ヤシ科(Palmae)のビンロウヤシ(Areca catechu)の成熟種子を乾燥したもので、漢薬名を檳榔子(びんろうじ)といいます。台湾の南部やマレーシア、タイ、フィリピン、インドといった東南アジアの亜熱帯地域に広く見られます。

アレコリン(arecoline)、アレカイジン(arecaidine)、グバコリン(guvacolen)、グバシン(guvacine)などのアルカロイド、ラウリン酸(lauric acid)、ミリスチン酸(myristic acid)などの脂肪酸、タンニンなどが含まれます。アレコリンには強い副交感神経刺激作用および中枢作用があり、腸の蠕動運動を亢進させます。また、精神を高揚させる作用もあります。

漢方では、駆虫・消積・理気・利水・瀉下の効能があり、消化不良や腹痛、寄生虫症、便秘、脚気などに用います。利水作用とは、水分の代謝を良くすることで、脚気で足にむくみがある時や心不全などでむくみがある時にも利用されてきました。

また、のどの乾きの防止や消化の助長、解毒作用などがあるといわれています。その効用は茶と共通するものが多く、茶文化のない地域では茶の代替品として使われてきたとのことです。

愛知大学の松下智教授は「ベトナムなど南方から北上したビンロウの習俗が、中国南部で北方の漢民族からの茶文化と接触した。雲南省南部の山岳地帯では両者がせめぎあっており、漢文化の普及で今では次第に茶に変わりつつある」と説明しています。


ベトナムでは、ビンロウとキンマは結婚式の儀式に欠かせない品とされてます。これは、キンマのツタがビンロウ樹に巻きつくことから、相愛のシンボルになっているからです。

また以前のベトナムでは、訪ねてきた客のもてなしにビンロウとキンマを出す習慣がありました。ベトナム語には「一片のキンマは話のはじまり」という成語があります。

同じビンロウヤシの成熟果皮は、大腹皮(だいふくひ)と呼ばれ、同じビンロウヤシの種子である檳榔子と効能は似ていますが、檳榔子のほうが行気の効能が強く瀉下に働き殺虫の効能をもち、大腹皮は、止瀉に働きます。また、食薬区分により、檳榔子は健康食品に使えますが、大腹皮は健康食品には使えません。


リコリス(Licorice)

マメ科カンゾウ(Glycyrrhiza glabra)又はその他同属植物の根及びストロンのことで、漢薬名は甘草(かんぞう)です。甘草は漢方生薬として最も繁用されています。ただし、薬としての利用よりも、味噌や醤油、ソースなどの甘味料としての利用の方が多いようです。その甘味成分のグリチルリチンは、砂糖(蔗糖)の100倍ほどの甘を持っています。このグリチルリチンは抗炎症作用や抗アレルギー作用が強いので、医薬品、ドリンク剤としても利用されています。また、1980年代にはエイズ治療にこの薬用ハーブが有効であるという報告もされています。さらに現在ではアメリカの国立ガン研究所では、これに含まれる有効成分が、ガン細胞の成長を阻害するとして研究を進めています。

漢方では、甘草は単独で用いると、急迫症状を緩解させる作用があるとされています。

甘草湯(甘草一味)は、神経の興奮による各種の急迫症状を緩解します。咽喉の痛む時に甘草湯でうがいをしたり、脱肛で痛むものに、甘草湯を染みこませたガーゼ等で温罨法したりします。


その他甘草には、◆解毒の主薬(附子の中毒には、黒豆と甘草をひとつかみずつ煎じて飲みます。) ◆抗炎症(特に咽喉痛や口内炎など) ◆鎮痙作用 ◆咳を鎮め去痰する、などの作用があります。

ただし、甘草単独の作用は、他に強い作用の薬物があれば、おもてにはあらわれ難くなり、一般には、薬性を調和させるための補助薬として、多くの漢方処方に配合されています。例えば、熱薬や寒薬に配合してその熱性や寒性を穏やかにしたり、半夏・細辛と一緒に使用して刺激性を中和したりというようにです。

加えて、その甘味から、味の調整剤として利用され、特に小児薬にはよく使用されます。


プランタゴ・オバタ

1.プランタゴ・オバタ種皮末とは
プランタゴ・オバタ(Plantago ovata)とは、インド等に自生するオオバコ科(Plantaginaceae)の植物のことで、日本に自生するオオバコ(Plantago asiatica)に似ているため、単にオオバコと呼ばれることもあります。
利用する部位は種子の外皮で、それを粉末にして用います。別名をサイリウムハスク、又はイサゴールともいいます。主成分として、食物繊維を約80%以上も含み、さらに細かくみると、ヘミセルロース53%、セルロース3.7%、水溶性食物繊維23%、ペクチン5.8%などで構成されています。
2.プランタゴ・オバタ種皮末の効能
a.満腹感
プランタゴ・オバタは、吸水性が高く、30~50倍にも膨潤するといわれています。このため、食前にプランタゴ・オバタを食べると、適度な満腹感が得られ、自然に無理せず食事の量を減らすことができます。
b.消化・吸収の抑制
プランタゴ・オバタの不溶性食物繊維が、食物の消化・吸収を阻害します。これは、食物繊維が脂肪や炭水化物を抱合するためです。この抱合のため、消化酵素と反応しにくくなり、消化されにくくなります。また、小腸の粘膜と接触する確率も減るため、吸収もされにくくなります。

以上のことにより、同じ量の食事をしても、プランタゴ・オバタによって、吸収されるカロリーは抑制されます。


炭水化物の吸収が抑制されることで、血糖値の上昇も抑制されます。

インスリンは、膵臓で作られるホルモンの一種で、血中の糖分(血糖)を細胞のエネルギーとして効率よく利用するために必要なものです。このインスリンは、血中の糖分の濃度(血糖値)に応じて分泌されます。つまり、血糖値が高いほどインスリンも多く分泌されます。非常に重要なホルモンですが、一方では過剰な糖分を脂肪にして蓄える作用があり、また、食欲増進効果もあるといわれています。プランタゴ・オバタは、食物中の糖分をゆっくり吸収させる効果があるので、血糖値が急激には上昇せず、この結果インスリンの分泌を抑え、余分な脂肪の蓄積を抑え、更に過剰な食欲も抑え込むと言われています。

また、急激に血糖値が上昇すると、それだけ膵臓は酷使され、ひいては成人型の糖尿病になりやすくなりますが、プランタゴ・オバタを用いることにより、血糖値の上昇が抑制され、インスリンの分泌も節約されるため、膵臓も酷使されずにすみ、結果として糖尿病の予防にもなります。

また、血糖値が徐々に上昇すると、「腹持ち」がよくなり、過食を防げます。


c.便秘の改善

かなり古い時代からインドやヨーロッパで、緩下作用があり、便秘を治すということが知られていました。
便秘を改善する理由としては、

1. 便量が増加し直腸を刺激する。


2. 水分を保持して便を柔らかくする。

の2点があげられます。

便秘を改善すると、痔、大腸癌、直腸癌の予防にもなります。

d.血清コレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)の低下作用

主として水溶性の食物繊維であるヘミセルロースの作用と考えられています。ヘミセルロースは、吸水性をもち膨潤性を示し、かつ粘性をもった食物繊維です。

このヘミセルロースが、血清コレステロール及び中性脂肪を下げますので、高脂血症、動脈硬化、心臓病、脂肪肝等の成人病を防ぎます。

上記4点の作用により、プランタゴ・オバタはダイエットに効果があります。

3.プランタゴ・オバタを使用する際の注意点
a.吸水性が高く、30~50倍に膨潤しますので、水分の摂取量が少ないと、逆に便秘になる場合もあります。ですから、プランタゴ・オバタを飲む際は出来るだけ、水を多く飲むようにして下さい。 (コップ1~2杯程度は必要です)
余分な水分はプランタゴ・オバタが吸収してしまいますので、「水太り」が気になる人も、気にせず水を飲んで下さい。

b.プランタゴ・オバタは膨潤性の下剤として、医薬品にも使われることがあるように、体質によっては、下痢をする場合もありますので、その場合は量を加減して用いて下さい。また、逆に効きにくい場合もありますので、この場合も量を加減して下さい。

c.効果のb.で書いたとおり、プランタゴ・オバタは栄養素の消化吸収を抑制する働きがあります。これはカロリー源となる炭水化物や脂肪だけでなく、ビタミンやミネラルも同様です。ですから、ビタミンやミネラル不足にならないよう充分補うようにしましょう。


乳糖(lactose)

グルコース(ブドウ糖)とガラクト-スが結合した二糖類です。牛乳中には約5%含まれています。
小腸上皮に結合する乳糖分解酵素ラクターゼによりグルコースとガラクトースに分解されると同時に吸収されます。
乳糖は難消化性糖質であり、一部は未消化のまま大腸に到達し、そこで腸内細菌によって発酵を受け、有機酸のあるものは、大腸壁細胞の栄養源となったり、腸内を酸性側に傾かせて、いわゆる善玉菌優位の腸内菌叢(ちょうないきんそう)を作り上げたり、便性改善を行うなど様々な形で寄与しています。また乳糖は、病原菌の基質にはなりにくく、乳酸菌を増やす働きがあるので、整腸作用があり便秘等に効果があります。

更に、カルシウムやマグネシウムの吸収を助けるとも言われています。

乳糖不耐症といわれるのは、牛乳中の糖質(=乳糖)を消化する酵素の少ないひとのことで、白人と比べて東洋民族には多いといわれ、牛乳を飲むと下痢をすることがあります。


結晶セルロース(Microcrystalline Cellulose)

微結晶セルロースともいい、不溶性食物維繊の一種です。ブナやカエデから採取されたパルプを酸で加水分解し、中和、水洗、精製後、乾燥して作ります。
近年、食物繊維摂取量の減少とともに、大腸ガンや大腸憩室疾患が増加していると言われています。食物繊維には、糞便増大作用、腸管通過時間の短縮作用があり、発ガン物質と大腸粘膜との接触が押さえられるため、食物繊維には大腸の発ガン抑制効果があると考えられています。また、食物繊維のこのような作用に伴って大腸内圧も低下するため、大腸憩室の発生も抑制できると言われています。


牻牛兒(げんのしょうこ)
 牻牛兒は、下痢にもよい薬草ですが、便秘(べんぴ)にもまたよく利きます。
一摑みを水五、六合に入れ、三分の二ほどに煎じ、お茶代りに飲用する。

朝顔の種(牽牛子(ケンゴシ))
 朝顔(アサガオ)の種子を四、五粒(子供には二粒位)そのまま飲みます。
昔より白花の方がよく利くと申しますが、別にそれとは限らぬ様です。

無砂糠(むさぬか)
砂の入っていない糠(ぬか)を焙烙(ほうろく)で狐色になるまでいり、一日二合位ずつ食します。
ご飯にかけて食べるのも一法で、二日ほどで大抵よく通じます。

ハブ草
 ハブ草の実を一匙(おほさじ)に一パイほど、三、四合の水で煎じ、お茶代りに常用していますと、身体の具合が大変よくなり、自然通じがある様になります。

人参(セリ科)+苹果(リンゴ)
 毎朝起きぬけの空腹時に、人参(普通のお台所で使う野菜のもの)と苹果(りんご:を卸し、布でしぼった汁を盃半バイほど飲みます。一ヶ月も続けますと、頑固な便秘もケロリの治ります。

大黄+重炭酸ソーダ+炭酸マグネシヤ
 大黄末一匁、重炭酸ソーダ三匁、炭酸マグネシヤ五分ほどを混ぜてよく擂り、就寝前に茶匙に一パイほど、粉薬を用いる様にして水で服みますと、翌日には大抵軟便となって通じます。

小豆(あずき)
 小豆をこく煎じて、その汁を湯呑茶碗に一日二、三バイ、二回ほども飲みますと便通のあるものです。

小豆(あずき)+昆布(こんぶ)
 小豆(あづき)と昆布(こんぶ)を一緒に軟らかく煮て、砂糖を少し入れて甘味をつけ、胃を悪くしない程度に食べます。昆布の嫌いな方は鍋底に敷いて小豆だけを食べても結構です。

水飴+卵
 水飴に卵をまぜて食べますと、効目があるとされてゐます。

センナ(蕃瀉葉)
 アフリカのナイル川流域に産するセンナという小潅木の葉を一摑みほど、二合の水で半量に煎じ、お茶代りに飲みます。ハブ草と同じ様な効果のあるものです。


塩水
 お腹の空いている、朝の起きたてなどに、コップ一杯の塩水(好みで砂黄水でもよろしい)を飲むと、大抗の便秘が治ります。

人工カルルス泉塩
 人工カルルス泉を毎朝最飲に飲む番茶の中へ、親指の爪にのるほど落して飲んだら、頑固な便秘が自然に治り、身体が丈夫になりました。


炒り玄米
 玄米を炒って粉末としておき、茶匙二杯と塩少々を茶呑茶碗に入れ、一日二三回、熱い注を注いで飲むと、便秘によろしい。


蓬湯(よもぎゆ)
 蓬の葉の乾したのを、湯呑茶碗に三分の一ほど入れ、熱湯を注いで、朝の食前に飲むと、苦いけれどよく効きます。これは煎じたのでは駄目です。


蜂蜜(はちみつ)
 蜂蜜茶匙一杯に熱湯を注し、約七八倍に薄めた飲み物は、便秘に特効があります。


卵の油
 二十個分の卵の黄身を鍋にいれて火にかけ、黒飴状に煮つめて、一週間分として服用する。

プルーン
セイヨウスモモ (プラム) を乾燥させたもので、俗に「造血作用がある」、「便秘によい」などといわれている。

コリアンダー
地中海沿岸が原産のセリ科の一年草。
消化器系の働きを調整し、食欲不振に効果があるとされ、ドイツでは便秘を防ぐ医薬品とし て認められている。

難消化性オリゴ糖

乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌・糖化菌・納豆菌






音楽療法

音楽療法の権威で、東京芸術大学教授の桜林仁教授によると、
重度の便秘患者に、食前と就寝前、モーツァルトの『メヌエット』、ショパンの『マズルカ舞曲』等を聴かせたところ、3日目に便通があったといいます。
便秘の原因の一つとして、精神的なもの、神経性のものがあります。
そして、これらの音楽には、ストレスや緊張で弱った神経を鎮める効果があると考えられています。
効果の程はわかりませんが、害は無いと思いますので、試しに聞いてみるのも良いかもしれません。


2008年12月15日月曜日

漢方の勉強方法

「醫之学也。方焉耳。」(医の学たるや方なり)『類聚方』という言葉があるように、
日本の漢方を学ぶとは極言すれば薬方の使い方を学ぶことになります。
特に「方証相対」という場合、方と証(證)を覚えることになります。

その方法としてはおおまかに、
1.薬方の證を覚える
2.病名・症候名からの薬方の使い方を覚える
の二つになります。

二者の中間的なものとして類方鑑別があります。

薬方の勉強には、薬味(生薬)単味の作用や組み合せの作用についても学ぶ必要があります。

薬方を学ぶには、単独に覚えると効率が悪いので、各薬方をグループ化して覚えると良いと思います。
例えば、柴胡剤として、大柴胡湯 → 柴胡加龍骨牡蠣湯 → 小柴胡湯 → 柴胡桂枝湯 → 柴胡桂枝乾姜湯 → 加味逍遥散 → 補中益気湯 を一連のグループとして覚えると便利です。
グループ分けについては、『漢方薬の実際知識』や『漢方処方応用の実際』などを参考にして下さい。

http://ww7.tiki.ne.jp/~onshin/zakki09.htm も参考になります。



日本の漢方と特長として、口訣(くけつ)があります。口訣とはノウハウとかコツとかいったものです。
口の悪い人は、日本の漢方は「口訣漢方」であり、理論が無いと言ったりしますが、口訣も薬方を学ぶのに重要です。


治験例を学ぶのは、病名・症候名からの薬方の使い方を覚えるのにもつながります。

多くの薬方の證(証)を覚えることは、多くの病気・症状に対応できるように思えますが、江戸時代の名医、和田東郭は、「方(薬方)を用いること簡なる者は、その術、日に精(くわ)し。方を用いること繁なる者は、その術、日に粗(あら)し。世医ややもすれば、すなわち簡を以って粗となし、繁を以って精となす。哀れなるかな」と戒めています。

基本となる薬方については、流派や使う方の好みなどがあり、一概には決められませんが、最初のうちは、基本となる薬方の使い方を徹底的に学ぶのが良いようです。



病名や症候名から薬方を出すことは、「病名漢方」と呼ばれ、本格的に漢方をやられている先生には異論があると思います。

確かに、風邪に葛根湯や痔に乙字湯のような一つ覚えでは問題です。ただ、病名や症候名を薬方決定の手掛りの一つとして扱うことまでは否定されるものではないと思います。現に、『傷寒論』と並ぶ湯液の古典である『金匱要略』は、(症候名に近い)病名別に対応する薬方を示したもので、いわば病名漢方の元祖とも言えます。傷寒論にしても、傷寒という病名についてより詳しく論じたものと考えられなくもないと思います。


入門
1.『漢方医学』 大塚敬節著 創元社
2.『漢方医学の基礎と診療』 西山英雄著 創元社
3.『漢方薬と民間薬』 西山英雄著 創元社(2,3は、2冊セットが望ましい)
4.漢方事始め 織部和宏著 日本医学出版
5.漢方入門 中村謙介著 丸善

新樹社書林の和田社長は、大塚敬節先生の『漢方医学』を何回も読むのが良いと仰っています。
不妊治療で有名な寺師睦宗先生は、この『漢方医学』を何冊も擦り切れるまで読まれたそうです。

『漢方事始め』は薄い本でサラッと読めてしまいますが、現代医学的な知識を持った方が漢方の全体的なことを把握するには良いと思います。



総論的なもの
1.『漢方診療の實際』 大塚・矢数・清水・木村 南山堂 →  『漢方診療医典』 大塚・矢数・清水 南山堂
2.『漢方概論』 藤平健・小倉重成 創元社

『漢方診療の実際』は、絶版で入手困難ですが、山田光胤先生は、『漢方診療医典』よりも『漢方診療の実際』の方が良いとおっしゃています。



薬方の勉強に役立つ書物
1.『臨床応用漢方処方解説』 矢数道明著 創元社
2.『漢方処方応用の実際』 山田光胤著 南山堂
3.『漢方処方応用のコツ』 山田光胤著 創元社(絶版)
4.『和漢薬方意辞典』 中村謙介著 緑書房
5.明解漢方処方 西岡一夫著 浪速社(絶版)
6.『漢方常用処方解説』 高山宏世著 泰晋堂
7.『古今名方 漢方処方学時習』 高山宏世著 泰晋堂
  6.7.は一般の書店では購入が難しいですが、
  新樹社書林(株)や(株)漢方医学図書 などで購入可能です。
  漢方の本としては、比較的安価ですので、セットでの購入がお勧めです。


病名・症候名による漢方治療に役立つ本
1.『症候による漢方治療の実際』 大塚敬節著 南山堂
2.『漢方処方類方鑑別便覧』 藤平健著 リンネ社
3.『病名漢方治療の実際 ―山本巌の漢方医学と構造主義―』 坂東正造著 メディカルユーコン

辞書類
1.漢方医語辞典 西山英雄著 創元社
2.漢方用語大辞典 創医会学術部 燎原


雑誌
1.『漢方の臨床』 東亜医学協会
2.『月刊 漢方療法』 谷口書店
3.『月刊 東洋医学』 緑書房
4.『漢方と漢薬』 (廃刊 漢方の臨床へ引き継がれる)
  昭和50年1月、復刻版(全28巻).発行、春陽堂 (中古として時々見かける)
5.『東亜医学』 東亜医学協会
  1939年(昭和14年2月1日)-第1号--- 1941年(昭和16年3月15日)-第26号
  機関誌「東亜医学」は戦時下雑誌統合令により廿六号を以て
  「漢方と漢薬」に合併して廃刊、戦後「漢方の臨床」として再出発した。
  『東亜医学』は、下記サイトにて、閲覧可能。
http://aeam.umin.ac.jp/a/dennou.html


また、『漢方の臨床』、『漢方と漢薬』、『東亜医学』については、目次のデータベースが有ります。
http://aeam.umin.ac.jp/siryouko/zassidb.html




傷寒論の解説書
1.『臨床応用傷寒論解説』 大塚敬節著 創元社
2.『傷寒論入門』 森田幸門 (絶版)
3.『傷寒論講義』 奥田謙蔵著 医道の日本社(オンデマンド版有)
  →傷寒論演習 緑書房
     奥田謙蔵氏の『傷寒論講義』をテキストとし、
     高弟である藤平健氏が5年以上にわたって講師を勤めた
     「賢友会」の講義録をもとに一冊にまとめた傷寒論の解説書。
     『傷寒論講義』の内容がそのまま入っています。
4.『臨床傷寒論』 細野史郎 現代出版プランニング
1,4はいわゆる康平本、2,3は、宋本の解説書になります。
『現代比較傷寒論』は、お得な本です。

康平本や宋本とは異なるもので、康治本と呼ばれるものもあります。
康治本傷寒論については、もっとも原始的な傷寒論であるという意見と
古書に見せかけた偽書であるとの意見があります。
どちらが本当かはわかりませんが、条文が少ないので、最初に学ぶには簡単かもしれません。


康治本傷寒論の解説書
1.『康治本傷寒論の研究』 長沢 元夫著 健友館(絶版)
2.『康治本傷寒論要略』 神 靖衛、越智 秀一、長沢 元夫著 たにぐち書店
3.『傷寒論再発掘』 遠田裕政著 東明社
4.『ステップアップ傷寒論―康治本の読解と応用』 村木毅著 源草社
5.『康治本傷寒論解説』 森山健三著 入手困難
  (範疇理論を基に解説をしたもの)


沢山の本を上げましたが、流派や好みのようなものもあり、本によって異なる主張をしていることがあるので、まずは一人の先生のものから入って、ある程度自信がついてから、他の先生の著書を研究した方が良いかもしれません。
『老子』にも、「多ければ則ち惑う(おおければすなわちまどう)」とあります。


大塚敬節先生も、「散木になるな」と戒めていらっしゃいます。


最後に、大塚敬節先生著「漢方療法」からの漢方を学ぶ基本的な心がまえの抜粋です。


(一)志をたてること。
たいへん古めかしい言葉で恐縮だが、まず漢方医学を研究しようとする志を立てることからはじまる。志の立て方が厚くて、真剣であれば、研究の道はおのずからひらけ、そのテンポも速いが、ちょっとした好奇心で、漢方の世界をのぞいてみようという態度であれば、十年やっても、二十年やっても、この深くて広い漢方を自分のものにすることはむずかしい。

(二)白紙になって、漢方ととりくめ。
漢方医学を研究する場合に、はじめから近代西洋医学の立場で批判しながら研究したのでは、漢方を正しく理解することはむずかしい。漢方が一応自分のものになるまで、白紙になって、この医学と取り組むことが必要である。近代医学の立場で批判するのは、漢方が自分のものにしてから、のちのことである。


(三)散木になるな。
散木は、中心になる幹がなくて、薪にしかならない小木の集まりである。漢方の世界は広いから、研究の態度を誤ると、まきにしかならない散木のようなものになってしますおそれがある。まず一本の幹になるものをえらんで、これをものにするまでは、あれこれと心を動かさないことが必要である。幹がていていと空にそびえるようになれば、枝、葉は自然に出てくる。病気を治療する方法はいろいろあり、それを巧みに応用して、病気を治すということは結構なことであるが、中心になるものがなくて、「あれもよし、これもよし」と、こじき袋のようなものになってしまう人がある。
鍼灸も漢方の一分野であり、私(大塚)は湯本先生の門人になるまでは、これにも手をつけるつもりでいたところ、先生は、傷寒論を中心にした古医方をまず自分のものにせよといわれたので、鍼灸の研究をおあずけにして、薬物で病気をなおす方面の研究に没頭するようになった。


(四)師匠につくこと
漢方のような伝統ある学術の研究には、師匠について、伝統を身につけることが必要である。はじめから伝統を無視した自己流では、天才は別として、普通の場合は、問題とするに足りない。しっかり伝統を身につけたうえでは、その殻を破って自分で自分の道をきりひらいて進むのがよい。師匠を乗り越えて、進むだけの気概がなけらばならない。
ところで、現在の日本では、師匠につきたくても、その師匠がない。師匠はあっても、いろいろの事情で制約をうけて、師匠につくことができない。このような人たちは、講習会に出るようにするとよい。東京や大阪あたりでは、ときどき講習会が開かれる。ところで、いつどこで、講習会が開かれるかは、「漢方の臨床」「漢方研究」「活」「和漢薬」などのように、月々刊行されている漢方の雑誌に、ニュースとして報道されるから、これらの雑誌の読者になっておくと便利である。これの雑誌の発行所は別項に出ているので参照してほしい。

(五)研究グループに加入すること。
漢方には各地に、研究グループがり、随時例会や総会を開いて、互いに意見を交換したり、研究を発表したりしているから、これらの会の一員になっておくと、いろいろの知見をうることもできるし、はげましにもなる。どこにどんな研究会があるかは、別項に一括してあげておく。


(六)読むべき書物。
漢方医学の根幹となるのは傷寒論と金匱要略とであるから、オーソドックスの漢方の研究は、この古典の研究に始まって、この古典の研究に終わるといってもよいほどである。ところで初心者が手軽に読んで理解できるような、これらの古典の現代人向きの注解書がないのは遺憾である。来年になれば、私が執筆中の傷寒論の入門書が刊行される予定。
はじめから難解なこの古典ととりくむのは、(一)のところで述べたように、志を立てることの厚い人でなければ、とうていやりとげることはむずかしい。そこでまず実際の診断、治療を書いた現代人の書物から読み始めるのがよい。これらの書物で入手しやすいものを別項にあげておいたから、自分で選択して読むとよい。
現代人のものを読んだら、次になるべくわれわれの時代に近い人のものから、逆に古い時代の人のものにさかのぼるのがよい。
とくに浅田宗伯の勿誤薬室方函とその口訣、橘窓書影、古方薬義、尾台榕堂の類聚方広義と方伎雑誌、本間棗軒の内科秘録、和田東郭の蕉窓雑話、有持桂里の方輿輗、稲葉文礼の腹証奇覧、和久田叔虎の腹証奇覧翼、吉益東洞の薬徴などは、ぜひ読んでおく必要がある。

2008年12月9日火曜日

漢方の肝腎要

漢方ではよく「肝と腎とは関係が深い」とは申すのですが、いざ文献となると、仲々良いものが見つかりませんでした。

五行(ごぎょう)説について

漢方の理論に五行説というものがあります。

もともとは、古代中国の人が鋭い観察力で全てのもの(森羅万像)を観察し、法則性を見出したもので、素朴な自然哲学であり、これを医学にも利用しました。

万物を木(もく)・火(か)・土(ど)・金(ごん)・水(すい)の5つのグループに分類します。

これを表わしたものが、五行色体表(ごぎょうしきたいひょう)と呼ばれるものです。

<五行色体表>
 
  五色 五味
小腸 血脈
口唇 肌肉
大腸 悲憂 皮毛
膀胱 恐驚 骨=歯

横一列を1つのグループとしてとらえます。

例えば、この『水』のグループには、「腎」・「膀胱」・「黒い色」・「しょっぱい(塩からい)味」・「恐怖心・不安感・驚き・ショック」・「耳・ニ陰=大小便の出口、つまり尿道と肛門」・「骨・歯」・「髪」・などの全てが水のグループです。単に「腎」と称した場合、五臓の腎を指す場合と、この水のグループ全体を指すことがあります。

五つのグループはそれぞれ関係があり、特に重要なのが「相生」と「相克」です。

相生(そうしょう、そうせい)は、母子関係とも言い、『母が子を産み育てる関係』『守りあう関係』と考えます。

母が弱っていると、子は守ってもらえずに子も弱ってしまいますので、症状が出ているグループの母のグループにも注目するのが漢方流です。

相剋(そうこく)は、主従関係とも言い、グーチョキパーのじゃんけんの様に、「主」が「従」に勝って、全体の力関係のバランスがとれている状態が理想です。

この五行説に関連する言葉は生活の中でも使われています。

「肝胆相照らす(たがいに心の底まで打ちあけて親しくつきあう)」、お酒を飲んだ時の「五臓六腑にしみわたる」、「青春」や北原白秋の「白秋」も五行説からのようです。

また、「青筋を立てて怒る」という言葉がありますが、「青」も「筋」も「怒」も全て「木」のグループに属します。


肝腎要(かんじんかなめ)という言葉があります。最近は、肝心要と書くことが多くなってきたようですが、本来は肝腎要が正式で、腎の文字が心に比べると難しく、常用漢字(以前の当用漢字)にもないので、心の文字で書き換えているようです。肝腎要の言葉の意味(非常に重要である)のとおり、肝と腎は東洋医学では非常に重要視されています。

更に重要なことは、腎と肝は相生(母子)関係にあるので、弱った肝を強めるには、腎も強める必要があるということです。


肝臓と腎臓との相互作用につきましては、『漢方治療の方証吟味』という本のp.10辺りに書かれております。

概要は、「高度の腎障害を実験的に起こさせた家兎で、腎臓に極めて親和性が強いフェノールフタレインを使って、肝臓の胆汁分泌の検査をやっているとき、正常家兎なら肝臓からはほとんど排泄しないはずの同色素が90%以上も排泄される。逆に肝機能障害家兎をつくり、肝に親和性の高いアゾルビンSを与えると、腎から排泄される。肝臓と腎臓の相互補完助的作用が認められた」ということです。

昭和53年に発行された本で、40年以上前と書かれていますので、かなり古い内容です。

なお、著者の細野史郎氏は、漢方をやってる人なら知らない人はまずいないと思われる程の有名な先生です。(確か、平成元年には他界されていると思います)

また、p.7においては、「五苓散加商陸附子(ごれいさん か しょうりく ぶし)」という薬方で、肝硬変による腹水を治療し、肝硬変まで良くなっています。五苓散加商陸附子は、水分代謝を良くする薬で、一般的には腎機能の改善に使われるもので、肝臓に良いと言われるものではないのですが、腹水を除くことにより肝硬変まで良くなってしまっています。腎機能を高めて肝機能を改善した例と考えられます。


古典では、和田東郭(わだとうかく)による、次のものがあるようです。

以下、抜粋

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「肝腎要め」という言葉がありますが、和田東郭は肝腎について時計の重り(腎)とてんびん(肝)の関係にたとえて次のように述べています。

「腎気虚損してある人は肝気上へつき上がり下らぬものあり。手足などけたりとなりて(力がなくなって)用いられざるようになるものなり、このわけは時計の如きものなり。時計の下の重りあれば上のてんびんはひらひらとよく廻るものなり。もしその重り取れる時は、きゅっと上へつり上がって上のてんびんも廻らぬようになるなり。しかし、又再び重りをかければ本(もと)の如く廻るなり。

人の腎気はこの重りと同様のものと心得べし。上部の損したるまでなれば治し易きものなれども、重りなしには治せられず、腎気は最も大切な者なり。

肝気いかほどたかぶりても腎気実したる人は取りかえし(快復)出来るものなり。総じて病の土基は肝より起こることなれども、性命の根底は腎気にあることを知るべし。」


これは病の土基(主因)として肝臓の解毒機能との関連を重視したものと考えられることと、もう一つ、肝を治そうとするなら腎機能が大切で、肝腎一体にて治せよという意味で、肝炎等に漢方で対応する際の参考になるものと思われます。

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古くから肝臓と腎臓が重要視されていたようです。

この和田東郭も有名な漢方家です(江戸時代)。



なお、お断りしておきますが、東洋医学の肝や腎は、「働き」を基につくりあげた観念的なものですので、実際の臓器とは直接の関係はありません。

西洋医学が入ってきた時に、東洋医学の言葉を借りて使用したので、混乱が生じました。肝は西洋医学の肝臓とほぼ近いものですが、腎は腎臓の他、副腎、生殖器等を含み、かなり広い意味があります。

また、「肝は怒気をつかさどる」という言葉がありますように、東洋医学的には、感情なども各臓器に関連があり、西洋医学でいう「脳」という概念はもともとは無いようです。また、「膵臓」もありません。逆に五臓六腑の一つである「三焦」は、西洋医学的な臓器であてはまるものはありません。

ですから、東洋医学でいう腎と肝との関係を西洋医学的な腎臓と肝臓で説明するのは、厳密に申せば誤りなのですが、このことは余り問題にせず、一般的には同じように扱っています。


私としては五行説とはあくまでも「便法」ととらえています。

五行説で全てを説明しようとすると、矛盾を生じることがあります。五行説の基本的な概念に相生・相克がある旨を申しましたが、時には逆の流れになることもあり、これがどのような時になるのかはっきりした基準はなく、時と場合によるようです。

例として、通常、水は火を消します(水克火)が、火の勢いが強すぎると「焼け石に水」となり役に立たないばかりか、油による火災に水を注ぐと、逆に火を広げてしまうように、逆の働きをすることがあります。


このように、五行説には色々と問題はございますが、臓器が関連しているとの認識は重要と思われます。特に腎と肝との関連が深いのは、漢方の世界では常識のようなものになっていますので、

2008年12月8日月曜日

腹水に効果のある分消湯・補中治湿湯(補遺)

分消湯 -万病回春-
凡そ水腫は脾を健やかにし湿を去り水を利すべし。中満鼓脹となるを治す。兼ねて脾虚腫満を発して飽満するを治す。
 蒼朮、白朮、茯苓、陳皮、厚朴、枳実各3、香附子、猪苓、沢瀉、大腹皮各2.5、砂仁2、木香1

 ○気急なるには沈香を加う。
 ○腫脹には莱菔子を加う。
 ○脇痛み面黒きこれ気鼓なり。白朮を去って青皮を加う。
 ○胸満小腹脹満痛し身の上に血絲縷々あるはこれ血鼓なり。白朮、茯苓を去りて当帰、芍薬、紅花、牡丹皮を加う。
 ○噫気酸をなし飽悶し腹脹るはこれ食鼓なり。人参、茯苓を去りて山査子、神曲、麦芽、莱菔子を加う。
 ○悪寒手足厥冷し清水を瀉し去るはこれ水腫なり。肉桂を加う。
 ○胸腹脹満して塊あること鼓の如決なるはこれ痞散せずして鼓となるなり。白朮、茯苓、猪苓、沢瀉を去りて、山査子、神曲、青皮、当帰、延胡索、別甲を加う。
 ○十二味等分に合して実脾飲と名づく。
 ○水腫気急なるに白朮を去りて紫蘇子、葶藶子、桑白皮を加う。
 ○水腫発熱には香附子を去りて山梔子、黄連を加う。
 ○水腫泄瀉残は枳殻を去りて芍薬を加う。
 ○水腫小水通ぜざるには白朮を去って木通、滑石を加う。
 ○悪寒、手足厥冷し脉沈細ならば肉桂を加う。
 ○腰より上腫れば藿香を加え、腰より下腫れば白朮を去りて牛膝、黄柏を加う。
 ○胸腹腫張飽悶せば白朮を去って莱菔子を加う。

按ずるに水腫脹満の主方なり。平胃散ありて脾胃を和らげ、四苓散ありて小水を通じ、枳実、大腹皮腫脹を消し、香附子、砂仁食後の飽悶を除き、木香を以て気をめぐらす。もし気下陥せば升麻、柴胡を加えよ。朝急なるは気虚に属す。人参を加う。暮に急なるは血虚に属す。黄連、当帰、芍薬、川芎加う。朝暮急な者は気血ともに虚す。宜しく双補すべ成。なお加減により数寄あり。
 ○小児面目周身浮腫、この方三貼にして故の如し。


補中治湿湯 -医林集要-
 朝に寛、暮に急なるは血虚、暮に寛、朝に急なるは気虚、朝暮急なるは気血倶に虚す。腫脹を治する大法宜しく中を補い湿を行り小便を利すべし。人参、白朮を以て君薬とし、蒼朮、陳皮を臣薬とし、黄芩、麦門冬を使薬として以て肝木を制し、少し厚朴を加えて腹脹を消し、気運らざれば木香、木通を加え、気下陥せば升麻、柴胡を加えてこれを提げ、血虚には補血の薬を加え、痰盛んならば痰を利する薬を加う。症に隨い加減してこれを用ゆるに効あらざるはなし。

 白参、白朮各3.5、蒼朮、茯苓、陳皮、麦門冬、当帰、木通各3、黄芩2、厚朴、升麻各1
右煎じ服す。
按ずるに、纂要正伝等に論ありて分両なし。而るを一渓叟発開してその木香、柴胡を去りて当帰を加え、分両につけて、脾胃虚して湿に感じて腫脹となるを治す。今の世の医これを以て腫脹を治するに効あらず。愚能く治す。蓋し旨あり。虚人病後の腫脹、或は虚症の脚気、或は産後の腫脹皆能く効あり。
 ○近夏一女産後腫脹を患いて曙ごとに痰咽につかえ驚き醒めぬ。衆医手を束ぬ。愚謂らく。血大いに下りて血気虚すと。この湯三十余貼にして全く癒ゆ。

2008年12月6日土曜日

三七人参について(別名:田七人参)


1.三七人参

1)名称について

 サンシチには、三七(さんしち)、田七(でんしち)、田三七(でんさんしち)、山(さん)漆(しつ)、金不換(きんふかん)、人参三七(にんじんさんしち)、参三七(じんさんしち)と、各種の呼び名があります。

 三七の名称の由来については、葉が左に三枚、右に四枚あるから名付けたと言う説、栽培が容易ではなく、播種後三年から七年かかって採取できるので名付けられたという説、また、三椏七葉から名が付いたという説があります。また、後述の山漆のと音が同じであるので、山漆が転じたという説もあります。

 田七、 田三七の由来については、かつて産地が広西省田陽田東の地であったから名付けられたものといわれています。また、現在多く田野に植えられているから田七という俗説もあります。

 山漆の由来については、漆のように傷口をしっかりと癒合することから、名付けられたといわれています。また、先に述べましたとおり、この山漆の発音が、中国語ではsanqi(サンチー)となり、三七と同じ発音となることから、これが転じて三七になったとも言われています。

 金不換の由来は、お金にかえることのできない貴重なものとの意からきていると言われています。

 人参三七、参三七の由来は、その植物形態が人参(オタネニンジン)に似ていることから、名付けられたと言われています。

 

2)三七の基原について

 三七と称する生薬は、本草綱目及び本草綱目拾遺に収載されている重要な漢薬の一つであり、前記の様な各種の呼び名があります。

 基原的にみるとウコギ科のPanax属を中心とするものと、キク科のGynura属を中心とするものの二系統に大別することができますが、現在三七と呼ばれるものは通常ウコギ科のPanax属を基原とするものです。原植物としては別表1、2に示すとおり、次のものが記載されており、この中には同種異名のものが見られます。

 

 1. Panax pseudo­ginseng WALLICH

 2. Panax notoginseng (Burk.) F. H. CHEN

 3. Panax sanchi Hoo

 4. Panax ginseng C. A. MEYER form.notoginseng (BURKILL) CHAO et SHIN.

 5. Panax notoginseng BIRKILLl

   (Panax ginseng L. f. notoginseng CHAO et SHIN )

 6. Panax pseudo­ginseng WALL.var.notoginseng (BURK.) Hoo et TSENG

以上のように、文献にあらわれる三七の学名は、混乱がみられますが、

1975年の雲南植物研究所による「人参属植物のトリテルペン成分と分類系統、地理分布の関係」(植物分類学報、13巻第2期 P.29~45)により、人参属の三七は、Panax notoginseng (BURK.) F. H. CHEN  であると発表され、従来の各種文献にみられる三七の基原について整理されました。 

 同誌の41項には、次の記載がありますので、参考までに記します。

1.三七(雲南);田七(広西);山漆,金不換(本草綱目);人参三七(本草綱目拾遺);参三七(中国薬用植物誌)(図版6,図1,3)

Panax notoginseng (Burk.) F. H. CHEN

=Aralia quinquefolia (L.) DECNE. et PLANCH. var. notoginseng BURK.

=Panax pseudoginseng auct. non WALL.

=Aralia quinquefolia var. notoginseng BURK.

=Panax sanchi Hoo

=Panaxpseudo­ginseng WALL.var.notoginseng (BURK.) Hoo et TSENG 

 

 以上述べましたとおり、三七の学名は、以前はPanax pseudo­ginseng が繁用されていましたが、先の資料や難波恒雄らの報告「生薬の品質評価に対する基礎研究(第3報)、人参および類縁生薬の化学的ならびに生化学的品質評価について」(薬誌、94(2),252 (1974))により、植物の地理分布を考慮して、分類上、Panax notoginseng (Burk.) F. H.

CHEN に統一すべきであるとされています。

 

3)三七の成分について

 三七はウコギ科のパナックス属の植物の根であるので、同属の人参(オタネニンジン)と同様なサポニンを含有しています。

 植物分類学報13(2),p29~45(雲南植物研究所の人参属植物のトリテルペン成分と分類系統、地理分布の関係)の中の33項表2人参属植物の粗サポニンと粗サポゲニンの含量に、三七Panax notoginseng 、産地雲南省昆明、分析部位全根、エタノール抽出物21.35%、粗サポニン10.86%、粗サポゲニン6.06%となっています。

 また、人参属植物サポゲニン中で既に知られているトリテルペン類成分の組成表では、panaxadiolとpanaxatriolが最多で、oleanolic acidは検出されずとしております。

 日本における研究では、柴田ら(薬誌85(8),753~755(1965))の「薬用人参および類縁生薬のサポニンならびにサポゲニンについて」の研究の中で、「人参三七(香港市場品)のサポニンは白参のそれに類似するが、Roに相当するサポニンはほとんどなく、Rcに相当するサポニンの相対含量は白参に比し低い。総サポニンを加水分解するとpanaxadiolとpanaxatriolとが得られるがoleanolic acidはほとんど検出されない。」とあるのは、先の雲南植物研究所の三七のものと一致しています。

 また、難波ら(薬誌94(2),252(1974))の「生薬の品質評価に関する基礎研究(第3報)、人参および類縁生薬の化学的ならびに生化学的品質評価について」や真田ら(生薬32(2),96~99(1978))の「薬用人参及び関連生薬サポニンの比較研究(第1報)」においても同様の報告がみられます。

 

 以上を総合しますと、「三七は、人参に類似したサポニン配糖体約3~7%を含み、その主成分はginsenoside Rb2,Rg1,Rg2であり、その他少量のginsenoside Ra,e,dを含み、Roはないか、あるいはあっても極めて微量である。また、精油成分として人参と同様にpanaxynol,sitosterolを含む。」となります。

 

 

4)三七の効能・効果について

内服として、止血や滋養強壮等に、また、外用として外傷の止血に利用されています。

 また、『本草綱目拾遺』には、「人参補気第一、三七補血第一、味同而功亦同(人参は気を補うのを主とし、三七は血を補うのを主とするが、味は同じで効能もまた等しい)との記載があり、三七は人参に近い薬効をもつことがわかります。これに関連して、大量出血等に応用する独参湯(人参単味)と三七の効能の類似点を難波氏は『原色和漢薬図鑑(上)』(株式会社保育社刊、p8)で指摘しています。

 

 三七に薬効があることは、食薬区分において、昭和46年の制定当時は1-aであり、昭和62年の改正で1-b成分に指定が変更されたことからも明らかです。

 「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日薬発第476号、改正 昭和58年4月1日 薬発第273号、昭和62年9月22日 薬発第827号、平成2年11月22日 薬発第1179号)の食薬区分表において、三七は、ビタミン、ミネラルやオタネニンジン等と同様に、(1)その成分本質が医薬品として使用される物(b)主として医薬品として使用されるもの-として、いわゆる1-b成分に分類されています。この1-b成分についての医薬品とみなす範囲は、

 A医薬品的な効能効果を標榜するもの 

 B形状及び用法用量が医薬品的であるもの。

  なお、形状が明らかに医薬品的とみなされる場合は、用法用量にかかわらず、医薬品の範囲とする。

となっています。

 「主として医薬品に使用される」となっていることから、三七も当然薬効も期待されます。(現在は、食薬区分の分類方法は、『医』と『食』の二つに変更され、三七は『食』に分類されています。)

 

三七の薬理作用については、報告は少ないのですが、『中薬大事典』では、次の記載があります。

 

1.止血作用 三七はin vitroでは凝血作用はないが、麻酔したイヌに三七粉を経口投与すると、頚動脈からの出血凝血時間が短縮される。もし、あらかじめ門脈を結紮しておくと、上述の作用は消失する。したがってその体内止血作用と肝臓は関係があると推測される。さらにプロトロンビン時簡を短縮する。中国国外では早くから三七根の温浸剤がウサギの凝血時間を短縮できる点に関する報告がされている。三七中に含まれるアラサポニンA・Bはともに溶血作用があるが、比較的緩慢である。

2.循環系に対する作用 麻酔して胸部を開いたイヌの冠状静脈洞にカニューレを挿入し、三七の抽出液を静脈注射すると、冠状動脈血流量が明らかに増加し、下垂体後葉ホルモンの作用に拮抗する。同時に心筋の酸素消費量も減少する。その有効成分はフラボノイド配糖体であって、アルカロイドではないと思われる。抽出液は麻酔したイヌに静脈注射すると、明瞭迅速で、持続時間の比較的長い高圧作用を起こすが、心拍数に対しては顕著な変化はない。 アルコール浸剤にも高圧作用があるが、アラサポニンにはない。五加A素(恐らくアラサポニン)はカエルの摘出心臓に対し強心作用がある。あひるの下肢の血管に対し、低濃度なら収縮作用があり、高濃度なら拡張作用があるが、作用は短時間で、その性質は直接血管壁に作用する。三七のアルコール抽出物はウサギに対し顕著な持続性の降圧作用があり、カエルの摘出心臓を興奮させる。浸剤をマウスに皮下注射すると、毛細血管の透過性を低下させ、毛細血管の抵抗力を高める。

3.その他の作用 ニューカッスル病ウィルスに対し抑制作用があり、感染後の鶏胎児の生命を12~22時間延ばすことができる。皮膚真菌に対し、in vitro(1:3)でなんらかの抑制作用があるといわれている。五加A素はイヌに対して利尿作用がある。50mg/kgを静脈注射すると利尿作用は極めて明瞭となり、もし薬量を75mg/kgに増加すると、さらに顕著になって、正常泌尿量の5倍以上に及ぶ。

 

 2.を要約すると「冠状動脈血流を増加させ、心筋の酸素消費量を減少させる」となりますが、このことから、強壮保健薬として利用されることの裏付けになると考えられます。

 また、久保道徳らは、『三七の実験的DICに対する作用』(薬学雑誌、104(7) 757-762 (1984))で、三七の駆?血作用に注目し、血液の凝固-線溶系に対する作用を検討し、ラットへのエンドトキシン静注による肝臓の出血性壊死に対して、有意に抑制する作用が認められたと報告しています。これは、三七が近年、肝臓病(肝炎、肝硬変等)に利用されることを示唆するものであると考えられます。

 

 三七の薬理の研究は前述のとおり、余りありませんが、同属の人参(オタネニンジン)の研究は多数あります。人参の薬効成分は主にサポニンであると言われておりますが、先に述べましたように三七にも同様のサポニンが含まれていることがわかっております。

 そこで、人参の薬理の報告のうち、これらのサポニンに関する報告を参考までに記します。

 1975年、加来天民ら(Arzneim-Forsch.,25,343,539(1975))はginsenoside Rg1,Re,Rd,Rc,Rb2,Rb1,Rfについて一般薬理学的作用を調べて報告しています。要点は次のとおりです。

(1)一般に毒性は小さいが、ginsenoside Rg1,Rf,Rb1は特に弱い。LD50(mg/kg,

  i.p.)は、Rg1 1250, Rf 1340, Re 405, Rd 324, Rc 410, Rb2 305, Rb1 1110。

(2)全てのサポニンはマウス摘出腸管のアセチルコリンによる収縮を抑制した。

  高濃度のRb2はそれ自身による収縮を起こすが、アセチルコリン誘発収縮は抑制した。

(3)全てにサポニンの静脈注射(5~10mg/kg)で、ラットの心拍数の減少、血圧のわずかな上昇後の低下がみられたが、呼吸への影響は少ない。これらの作用はRg1に目立って現れた。サポニンの昇圧、降圧作用には、アトロピン、ジフェンヒドラミン、フェントラミン、プロプラノールの前処理による影響はなかった。

(4)イヌでRg1、Reがパパベリンのそれぞれ1/20、1/50の血管拡張作用を示したが、 Rc,Rb2では弱く、Rb1では認めなかった。

(5)溶血性は7種のサポニンの中で、Rd,Re,Rb2により強く現れた。これは急性毒性の強弱に対応している。

 

(6)Rf,Re,Rdの1回投与では条件回避反応を抑制したが、連続投与で応答が促進された。Rb2はいずれも弱い抑制を示した。

(7)マウスの闘争実験ではRg1,Rf,Re,Rdに抑制、Rb1,Rb2,Rcにはわずかの作用がみられた。

(8)全てのサポニンにマウスで抗疲労作用がみられた。

(9)猫の脳波測定で穏やかな鎮静作用がみられ、Rg1,Re,Rb2がより強く現れた。

 

 上記のなかで、(3)の血圧降下作用、(4)の血管拡張作用は、三七が近年、高血圧や心疾患などにも利用されることに関連があるように考えられます。

 また、(8)では、すべてのサポニンに抗疲労作用があるとしていることから、三七が滋養強壮剤として使用されることの裏付けの一つと考えられます。

 

 また、喜多富太郎ら(J.Pharm.Dyn.,4,381(1981))は副交感神経緊張型ストレス(SARTストレス)と交感神経緊張型(拘束水浸ストレス)のモデル動物を用いて、ginsenoside Rb2,Rcは副交感神経緊張型ストレスに、Rg1は交感神経緊張型ストレスに、Rb1とReとプロゲサポニンC20(S)Rg3はいずれにも有効であったことを示しており、自律神経失調症、あるいは心身症の予防、治療に人参の有効性を示唆するものである。-と報告しています。 

 また、秦多恵子ら(J.Pharm.Dyn.,8,1068(1985))は、副交感神経緊張型ストレス(SARTストレス)動物(マウス)と交感神経緊張型ストレス(拘束水浸ストレス)動物(マウス)にプロトバナキサジオール系ジンセノサイドの共通構造であるC20(S)Rg3を投与(2.5~10mg/kg/日,i.p.)し、水素クリアランス法で組織外周の血流への影響を調べた。ストレス動物は何れも胃の血流低下、胃幽門部位の血流低下、肩、腰の皮膚血流の増加が起こるが、C20(S)Rg3はこれらの変動を阻止した。-と報告しています。

 このことから、同様のサポニンを含有する三七もストレスに有効であると考えられます。

 

5)三七を配合した漢方薬・中成薬について

三七を配合した漢方薬について、『漢方処方大成』(矢数圭堂監修)を検索すると、次の処方が見出されました。

 















































処方名 薬      味 出典
化血丹

 
花蘂石3三七2乱髪霜1

 
/医学衷中参西録・治吐衂方
加味復肝散

 
人参5当帰5白芍薬5三七5亀板膠5紫河車7.5シャ虫4川キュウ4何首烏4姜黄4丹参4赤芍薬3 /中医方剤手冊新編
月華丸

 
天門冬2麦門冬2地黄2熟地黄2山薬2百部2沙参2川貝母2阿膠2茯苓1獺肝1三七1菊花4桑葉4 医学心吾・巻3・虚労
参黄散

 
三七2大黄0.8厚朴2枳実2桃仁6後期6赤芍薬3紅花3穿山甲3鬱金2延胡索2肉桂1柴胡1.2甘草0.8青皮2 傷科補要・巻3・湯頭歌訣
止血粉

 
川貝母2阿膠6三七1

 
北京中医学院/中医処方解
通変白頭翁湯

 
白頭翁2三七1.5山薬5秦皮1.5甘草1地楡1.5白芍薬2鴨胆子3 /医学衷中参西録・治痢方
平肝開鬱止血湯

 
白芍薬5白朮5当帰5牡丹皮1.5地黄1.5甘草1三七1.5荊芥1柴胡0.5 傳青主女科・上巻・崩漏門
黎山同丸    

 
三七2血竭2阿魏1乳香2没薬2藤黄2竹黄2大黄2阿仙薬2竜脳1雄黄1牛黄1麝香1山羊血1 /中華人民共和国薬典1977

 

 

 また、現在中国で製造されている生薬製剤、いわゆる中成薬のうち、三七を含有した製剤としては、次表に記したものが知られています。




































































































































































処 方 名 薬      味 出典・製造元等 効 能・効 果 等
雲南白薬



 
田七等



 
雲南白薬廠、昆明製薬廠

 
刀傷、槍傷、創傷の出血、打撲症、紅腫瘡毒、咽喉腫痛、慢性胃痛、婦人の出血を治す
田七粉



 
田七末



 
昆明製薬廠



 
吐血、衂血、外傷出血、跌打於血、腫痛、産後血暈、於血腹痛等に用う。
筋骨跌傷丸



 
当帰尾、旱三七、人参、乳香、没

薬、血竭、紅花等
天津中薬製薬廠



 
打撲、骨折、癰腫等の疼痛に用う。

 
田七補酒



 
黄耆、党参、枸

杞、杜仲等10種類余、清酒




 
(薬用酒)新陳代謝の促進、健康増進、成人病の予防

 
田七補精



 
田七、党参、当

帰、白芍薬、川キュウ 雌鶏肉
広西玉林製薬廠



 
身体虚弱、病後補強、神経過敏、疲労回復、精神安定、体力増強
田七鶏精





 






 
雲南白薬廠





 
身体虚弱、栄養不良、病後失調、貧血、コレステロール過多、食欲不振、発育不全、疲労、体力増強
金不換痛片



 




 
南寧製薬廠



 
胃・十二指腸潰瘍疼痛、分娩後の子宮縮痛、神経性胃痛、月経痛、痙攣、咳嗽
片仔廣







 
田七85%、蛇胆15%、牛黄3%、麝香7%



 
章州製薬廠







 
急・慢性肝炎、耳炎、眼炎、牙齦発膿、扁桃腺炎、口舌諸瘡、湯火灼傷、刀傷痛、癰疔腫毒及び一切の疼痛を伴う炎症、疼痛、発熱
熟田七粉







 
熟田七末







 
雲南白薬製薬廠







 
身体虚弱、病後、産後、気血不足・食欲不振、貧血畏冷、神経衰弱、失眠健忘、陰陽盗汗、発育不良、コレステロール血症
田七花精 田七花、 雲南白薬製薬廠 凉血、清熱、平肝、解毒
化血丹

 
三七、花蕊石、血余炭 衷中参西録

 
吐血、衂血、便血等、各種内出血
跌打薬精





 
乳香、没薬、紅花、児茶(阿仙薬)、田七、芦薈、当帰尾、血竭 仏山聯合製薬廠





 
刀傷、打撲傷、湯火灼傷





 
熊胆跌打丸





 
田七、熊胆、当帰尾、川紅花、広木香、川鬱金、砂仁、大黄等 広州聯合製薬廠





 
打撲、捻挫、切り傷等の痛み、腫れに使う。



 
定坤丹



 
当帰、川牛膝、田七、白芍薬等、29味



 
気虚血暈から引き起こした、月経不調、行経腹痛、子宮寒冷、崩漏不止等に用いる。
黎山同丸



 
牛黄、雄黄、田七、麝香、冰片等、13味



 
於血、消腫、止痛、跌打損傷、すべての無名の腫毒に用いる。

 
三七傷薬片





 
三七、雪枝一枝蒿、紅花、扞扞活、香附子、細辛、当帰、陳皮等21味 蘇州中薬廠、上海中薬製薬二廠



 
急・慢性挫傷、関節痛、神経痛、打撲傷



 
跌打丸





 
香附子、白及、赤芍薬、陳皮、田七、大黄、元胡、烏薬等23味 抗州第一中薬廠





 
活血止痛、舒筋活経、跌打外傷により引き起こした赤腫疼痛等に用いる。

 
止痛丹



 
田七、麝香、乳香、没薬等

 
広東省茶叶土産進出公司

 
慢性胃炎、胃痛、腹痛、歯痛、切り傷、跌打痛み、悪性腫瘍の痛み等に用いる。
田七片







 
田七頭







 
中国土産畜産進出口公司





 
補気、補血、身体虚弱、産後血暈、発育不良、冠心病、狭心症、心筋梗塞、高血圧、肝臓病、動脈硬化、コレステロール過多症
田七片





 
生田七粉





 
雲南白薬廠





 
狭心症等の心疾患、コレステロール過多症、肥胖症、吐血、鼻血、血便、内外傷出血、外傷腫痛
田七精





 
田七エキス





 






 
滋養増強、強身作用、冠心病の症状改善予防、狭心症の予防治療、新陳代謝促進、コレステロール・血中脂質の低下
田七補丸



 
熟田七85%、北耆8%、党参7%

 
広西梧州製薬廠



 
補血理気、滋養強壮、筋骨を強健にする、神経を休める、貧血、虚弱体質
生田七片 生田七粉    
三七蜜精 

 
三七エキス、蜂蜜

 
雲南省文山州製薬廠

 
三七薬物牙膏

 
三七

 


 
(歯磨) 歯肉の腫、出血、歯槽膿漏等の予防効果
複方丹参片

 
丹参、三七、冰片

 
上海中薬製薬二廠

 
血行促進、於血を除く、胸のもたれ、狭心症

 

 この表からもわかるとおり、これら中成薬は、止血、鎮痛、滋養強壮等に利用されており、三七の薬効と類似しています。

 

6)三七の安全性について

 三七は本草綱目に山漆の名称で記載されていますが、上品に属し、気味の項にも「甘く少しく苦く、温にして毒なし」と記されており、安全性が高いとされています。

 漢方薬は、東洋医学独特の診断によって処方される薬物であり、特に虚実の判別を重視しています。人参(御種人参、朝鮮人参)は、虚証に用いる薬味で、実証に用いても効果はなく、特に高血圧症の人には禁忌となっているのは一般に良く知られたところです。

 これに対し三七は、使用を制限する報告は少なく、虚証から実証まで幅広く用いることができる薬味であるといわれています。更に高血圧に対しては、人参とは逆に三七の服用により改善されることが多数報告されております。その一例として、南ら(臨床薬理15(4),479-487(1984))の「Effect of the Chinese Tienchi Ginseng on Blood Pressure inStroke-

prone Spontaneously Hypertensibe Rats」の研究によりますと、三七(田七)を投与したグループでは、P<0.02で、有意に血圧が下がったとの結果がでています。

 また、現代的な報告として、経利木杉は『愼三七的生理作用』(国立北平研究院生理学研究所中文報告所 4(1),1(1937))で、三七の流エキスの生理作用を試験する際、その毒性についても下記のとおり述べています。

 

   ウサギの致死量     2.5g/kg  (静脈注射)、

   ラットの致死量  0.5~0.75g/100g (腹腔内注射)

   マウスの致死量 0.075~0.1g/10g (腹腔内注射)。

   マウスの致死量     22mg/10g (サポニン成分について)

 

 また、張焜は『新医学雑誌』(10期)(1973年版『中薬研究文献摘要』p.31)で、高血圧症・冠状性心疾患・脳動脈硬化症の患者10例に対して、生山漆粉(三七末)0.6gを毎日3回服用させ、総脂質とコレステロールに対して低減作用があることが認められ、特に副作用はなかったとしています。

 また、先に述べました様に、三七は食薬区分において、昭和46年6月の制定時は1-a成分であったのが、昭和62年9月の改正の際、1-b成分となりました。これは、中国では三七の使用が、医薬品のみではなく、レストランのメニュー(中華料理)にもかなり用いられているからだといわれています。

 一般に1-b成分は、1-a成分に比べ、安全性の高いことは周知のことでありますから、三七も安全性の高いものであると思われます。

 

 また、三七はスープの味を良くするといわれ、食材としても多く用いられています。これを応用した料理の中で特に良く知られているものに、田七汽鍋鶏があります。一説には、三国志で有名な諸葛亮孔明が考案したともいわれており、鶏肉と三七等を特殊な鍋で一緒に蒸した料理です。中国の広州及び雲南省昆明が本場とされていますが、香港でも多くのレストランで提供されています。

 また、嶋野武氏は、『漢方の臨床』(第23巻第2号、1976p6-8、「中草薬紹介」)のなかで、「料理して食べるには田七を鶏油、ラード、植物油でとろ火で黄色に揚げた後、くだくか蒸して柔らかくし薄片に切って鶏・豚肉と煮て食べる。補血の効があり、老若男女を問わず、病後、産前産後に食すれば速やかに健康を回復し、年若くて虚弱な人には補血保暖の作用、小児には発育を促進する。また田七を油で揚げて細末とし、チキンスープ、豚肉スープあるいは牛乳で毎回三~五gを飲んでもよい。雲南特製の鍋で重湯をつくる形で料理する方法もある。」と三七を料理に利用する方法を紹介しています。

 その他にも下表に示すような三七を料理が見出されましたので参考までに

付記します。






















料理名    読み       材 料
冷拌葛皮  リャンバンカッピイ   三七末50g 葛根末20g 桂皮末5g 等 
天麻炒猪肝 ティェンマーツァォヅーカン 天麻30g 三七末20g 等
滷猪心  

 
ルージゥシン

 
甘草20g 桂皮10g 茴香5g 八角10g 三七20g 等

 このように、三七は医薬品以外に料理の材料としても利用され、食用とされていますので、安全性は高いと考えられます。

 

 

人参との比較考察について

 高瀬ら(薬理と治療11(4),115-133(1983))の「薬用人参と田七との急性毒性及び薬理活性比較試験」によると、人参末及び三七末については、マウス及びラットに8g/kgを経口投与して、いずれも毒性を示さなかったと報告しています。

表 人参と田七の薬理活性比較



































































































試験項目

 



動物

 



凡例

 



人参末

 



田七末

(三七末)



竹節人参末

 

















 



血小板凝集

 



ウサギ

↑:促 進

-:作用なし

↓:抑 制






 






 






 



血小板凝集能

(最大凝集率)







ラット



 



 Cont.

(46.2%)

    57.5%

 Cont.と有意差あり

(P<0 .05="" font="">






 






 



血小板粘着能



 Cont.

(70.6%)



    75.1%

 

   81.7%

 Cont.と有意差あり

(P<0 .05="" font="">






 






摘出気管筋に

及ぼす作用

モルモット



 

↑:収 縮

↓:弛 緩


 

   2500μg/mL



 

   2500μg/mL



 

 2500μg/mL



 













 

摘出胃平滑筋に及ぼす作用

ラット

↑:収 縮

↓:弛 緩




 




 




 

摘出回腸平滑筋に及ぼす作用



モルモット

 

↑:収 縮

-:作用なし

↓:弛 緩

   2500μg/mL



 

   2500μg/mL



 

 2500μg/mL



 

抗アセチルコリン、

抗ヒスタミン作用

モルモット

 

↑:収 縮

↓:弛 緩




 




 




 



















 

血圧作用

 

SHR

↑:上 昇

↓:下 降




 




 




 

摘出心房に及ぼす作用





 

モルモット







 

↓:収縮力低下

-:作用なし

 :拍動数減少

   2500μg/mL

   42% 11%



 

   2500μg/mL

   31% 15%



 

 2500μg/mL

 90% 30%



 

血流量に及ぼす影響

 

ウサギ

 

↑:増 大

↓:減 少


 






 






 






 

 

 更に、今田ら(基礎と臨床18(1),133-145(1984))の「田七エキス(HK302)のラットにおける1カ月経口投与毒性試験」においては、田七エキスをラットに1カ月間経口投与(250,500,1000mg/kg)して、1.一般症状、2.体重推移、3.摂餌量および摂水量、4.血液学的検査、5.血液生化学的検査、6.尿検査、7.剖検所見、8.臓器重量、9.病理組織学的検査、10.骨髄細胞の分類の10項目について検討していますが、田七エキスの好ましくない作用は認

められず、ラットにおける無影響量は1,000mg/kg以上と推定されると結論しております。





























































































































  試験項目 動物  作 用     田 七     人 参
















































 




















摘出回腸に

対する作用

























 




















モルモット



























 
直接作用

 
0.025~4.0mg/mL(9)

0.25mg以上で収縮
0.025~4.0mg/mL(9)

0.25mg以上で収縮


抗コリン作用

 
1~3mg/mL(3)

Ach.5×10-8M

作用なし
1~3mg/mL(3)

Ach.5×10-8M

作用なし


抗ヒスタミン作用

 
1~3mg/mL(3)

His.2×10-7M

2mg/mL以上であり
1~3mg/mL(3)

His.2×10-7M

2mg/mL以上であり


抗バリウム作用



 
1~3mg/mL(3)

Bacl2 5×10-4M

1,2,3mg/mLであり

収縮後弛緩
1~3mg/mL(3)

Bacl2 5×10-4M

1,2,3mg/mLであり

   弛緩


アトロピンに

よる拮抗

 
1mg/mL(1)

    Atr.1×10-7M

   あり

収縮の抑制
3mg/mL(1)

    Atr.1×10-7M

   あり

収縮の抑制


ジフェンドラミン

による拮抗



 
1mg/mL(1)

    Dip.5×10-7M

完全ではないがある

収縮は1/3に抑制
2mg/mL(1)

    Dip.5×10-7M

完全ではないがある

収縮は1/2に抑制
ヘキサメトニウム

による拮抗



 
1mg/mL(1)

    Hex.1×10-5M

作用なし
2mg/mL(1)

    Hex.1×10-5M

作用なし








































 


血圧

 






家兎





 


直接作用

 
5~50mg/kg i.v.(4)

12.5mg/kg(i.v.)以上で

一過性に下降
5~50mg/kg i.v.(4)

12.5mg/kg(i.v.)以上で

一過性に下降
総頚動脈

血流
直接作用

 
血圧の下降とともに一過

性の減少
血圧の下降とともに一過

性の減少
心拍数

 
直接作用

 
血圧の下降とともに一過

性の減少
血圧の下降とともに一過

性の減少


摘出心房







 


モルモット







 
直接作用

心拍数



 
3×10-5,×10-4,×10-3g/mL

3×10-4g/mL以上で抑制
3×10-5,×10-4,×10-3g/mL

3×10-4g/mL以上で抑制
直接作用

心収縮力
3×10-3g/mL以上で抑制 3×10-3g/mL以上で抑制
摘出心臓









 
モルモット









 
直接作用

心拍数
0.05~0.8mg(5)

0.8mgで減少
0.05~0.8mg(5)

0.8mgで減少
直接作用

心収縮力
0.2および0.4mgで抑制

 
0.4mg以上で抑制

 
直接作用

拍出滴数
0.2~0.4mgで増大

 
0.2~0.4mgで増大

 
摘出家兎

耳介
家兎

 
末梢血管

拡張・収縮
0.75~3mg(3)

拡張
0.75~3mg(3)

拡張
























 
血小板

凝集能

(in vitro)

 
ラット





 
(ADPによる)

凝集促進

凝集抑制
1mg/mL 対照

50.2±2.0%(60.5±2.3%)

抑制
1mg/mL

54.0±2.0%

抑制

 
血小板

凝集能

(in vivo)

 
ラット





 
(ADPによる)

凝集促進

凝集抑制
2g/kg  対照

54.5±1.6%(51.4±1.7%)

作用なし
2g/kg

51.3±1.9%

作用なし

 
血小板

粘着能



 
ラット





 
粘着促進

粘着抑制



 
2g/kg  対照

49.1±6.5%(49.2±5.2%)

作用なし
2g/kg

49.9±5.9%

作用なし

 

 

その他、南らの研究におきましても、500mg/kg/dayの投与では、体重増加に違いはみられず、血液の化学的データも何の毒性も示さず、毒性は無いと考えられるとも述べています。

 以上の点から三七は人参と同程度の安全性はあると考えられます。


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