健康情報: 一般用漢方製剤の承認基準改正 31処方追加

2012年9月17日月曜日

一般用漢方製剤の承認基準改正 31処方追加

一般用漢方製剤承認基準(いっぱんようかんぽうせいざいしょうにんきじゅん)とは、
日本国にて漢方製剤に対し一般用医薬品として製造販売の承認を与える際の審査基準です。
漢方処方(漢方薬方)の構成生薬の配合量の規格値や記載可能な効能・効果の範囲等が示されています。

この基準から逸脱した漢方薬は、承認を得るのは難しいのが実情です。

この基準に、今回、新たに31処方(薬方)がを追加されました。
追加された漢方薬は、下記のとおりです。



処方番号 処方名
1 6 烏苓通気散
2 19 加減涼膈散(浅田)
3 20 加減涼膈散(龔廷賢)
4 26 栝楼薤白白酒湯
5 26A 栝楼薤白湯
6 30 甘草附子湯
7 55 外台四物湯加味
8 66 柴葛解肌湯
9 66A 柴葛湯加川芎辛夷
10 67 柴梗半夏湯
11 69 柴胡枳桔湯
12 87 梔子豉湯
13 88 梔子柏皮湯
14 113 神仙太乙膏
15 127 洗肝明目湯
16 131 喘四君子湯
17 137 大黄附子湯
18 142 大防風湯
19 167 八味疝気方
20 169 半夏散及湯
21 172 白朮附子湯
22 176 茯苓杏仁甘草湯
23 179 附子粳米湯
24 180 扶脾生脈散
25 189 補陽還五湯
26 190 奔豚湯(金匱要略)
27 191 奔豚湯(肘後方)
28 197 木防已湯
29 200 薏苡附子敗醤散
30 205 苓甘姜味辛夏仁湯
31 209 苓桂味甘湯

各漢方薬方の基準は、次のとおりです。
1. 烏苓通気散(うれいつうきさん/うりょうつうきさん)
〔成分・分量〕 烏薬2-3.5、当帰2-3.5、芍薬2-3.5、香附子2-3.5、山査子2-3.5、陳皮2-3.5、茯苓1-3、白朮1-3、檳榔子1-2、延胡索1-2.5、沢瀉1-2、木香0.6-1、甘草0.6-1、生姜1(ヒネショウガを用いる場合2)

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 下腹部の痛み、乳腺の痛み

《備考》 注)体力に関わらず、使用できる。 【注)表記については、効能・効果欄に記載するのではなく、〈効能・効果に関連する注意〉として記載する。】


2.加減涼膈散(浅田)(かげんりょうかくさん・あさだ) 
〔成分・分量〕 連翹3、黄芩3、山梔子3、桔梗3、薄荷2、甘草1、大黄1、石膏10

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以上で、胃腸の調子がすぐれないものの次の諸症:
口内炎、口の中の炎症



3.加減涼膈散(龔廷賢)(かげんりょうかくさん・きょうていけん)
〔成分・分量〕 連翹2-3、黄芩2-3、山梔子1.5-3、桔梗2-3、黄連1-2、薄荷1-2、当帰2-4、地黄2-4、枳実1-3、芍薬2-4、甘草1-1.5

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度で、胃腸の調子がすぐれないものの次の諸症:
口内炎、口の中の炎症




4.栝楼薤白白酒湯(かろうがいはくはくしゅとう)
〔成分・分量〕 栝楼実2-5(栝楼仁も可)、薤白4-9.6、白酒140-700(日本酒も可)

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 背部にひびく胸部・みぞおちの痛み、胸部の圧迫感

《備考》
注)体力に関わらず、使用できる。
【注)表記については、効能・効果欄に記載するのではなく、〈効能・効果に関連する注意〉として記載する。】


5.栝楼薤白湯(かろうがいはくとう)
〔成分・分量〕 栝楼仁2、薤白10、十薬6、甘草2、桂皮4、防已4

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 背部にひびく胸部・みぞおちの痛み、胸部の圧迫感

《備考》
注)体力に関わらず、使用できる。
【注)表記については、効能・効果欄に記載するのではなく、〈効能・効果に関連する注意〉として記載する。】


6.甘草附子湯(かんぞうぶしとう)
〔成分・分量〕 甘草2-3、加工ブシ0.5-2、白朮2-6、桂皮3-4

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力虚弱で、痛みを伴うものの次の諸症:
関節のはれや痛み、神経痛、感冒



7.外台四物湯加味(げだいしもつとうかみ)
〔成分・分量〕 桔梗3、紫苑1.5、甘草2、麦門冬9、人参1.5、貝母2.5、杏仁4.5

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 のどが痛くて声が出ない感冒

《備考》
注)体力に関わらず、使用できる。
【注)表記については、効能・効果欄に記載するのではなく、〈効能・効果に関連する注意〉として記載する。】



8.柴葛解肌湯(さいかつげきとう)
〔成分・分量〕 柴胡3-5、葛根2.5-4、麻黄2-3、桂皮2-3、黄芩2-3、芍薬2-3、半夏2-4、生姜1(ヒネショウガを使用する場合1-2)、甘草1-2、石膏4-8

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以上で、激しい感冒様症状を示すものの次の諸症:
発熱、悪寒、頭痛、四肢の痛み、口渇、不眠、鼻腔乾燥、食欲不振、はきけ、全身倦怠


9.柴葛湯加川芎辛夷(さいかつとうかせんきゅうしんい)
〔成分・分量〕 柴胡6、半夏3.5、黄芩3、桂皮5、芍薬3、葛根6、麻黄2、竹節人参2、甘草1、大棗1.2、生姜2.5、川芎3、辛夷2

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以上のものの次の諸症:
慢性に経過した鼻炎、蓄膿症(副鼻腔炎)



10.柴梗半夏湯(さいきょうはんげとう)
〔成分・分量〕 柴胡4、半夏4、桔梗2-3、杏仁2-3、栝楼仁2-3、黄芩2.5、大棗2.5、枳実1.5-2、青皮1.5-2、甘草1-1.5、生姜1.5(ヒネショウガを使用する場合2.5)

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以上で、かぜがこじれたものの次の症状:
腹にひびく強度のせき


11.柴胡枳桔湯(さいこききつとう)
〔成分・分量〕 柴胡4-5、半夏4-5、生姜1(ヒネショウガを使用する場合3)、黄芩3、栝楼仁3、桔梗3、甘草1-2、枳実1.5-2

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以上のものの次の諸症:
せき、たん


12.梔子豉湯(しししとう)
〔成分・分量〕 山梔子1.4-3.2、香豉2-9.5

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以下で、胸がふさがり苦しく、熱感があるものの次の諸症:
不眠、口内炎、舌炎、咽喉炎、湿疹・皮膚炎


13.梔子柏皮湯(ししはくひとう)
〔成分・分量〕 山梔子1.5-4.8、甘草1-2、黄柏2-4

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度で、冷えはなく、ときにかゆみがあるものの次の諸症:
湿疹・皮膚炎、かゆみ、目の充血



14.神仙太乙膏(しんせんたいつこう)
〔成分・分量〕 当帰1、桂皮1、大黄1、芍薬1、地黄1、玄参1、白芷1、ゴマ油30-48、黄蝋12-48

〔用法・用量〕 外用

〔効能・効果〕 切り傷、かゆみ、虫刺され、軽いとこずれ、やけど




15.洗肝明目湯(せんかんめいもくとう)
〔成分・分量〕 当帰1.5、川芎1.5、芍薬1.5、地黄1.5、黄芩1.5、山梔子1.5、連翹1.5、防風1.5、決明子1.5、黄連1-1.5、荊芥1-1.5、薄荷1-1.5、羌活1-1.5、蔓荊子1-1.5、菊花1-1.5、桔梗1-1.5、蒺梨子1-1.5、甘草1-1.5、石膏1.5-3

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度のものの次の諸症:
目の充血、目の痛み、目の乾燥



16.喘四君子湯(ぜんしくんしとう)
〔成分・分量〕 人参2-3、白朮2-4、茯苓2-4、陳皮2、厚朴2、縮砂1-2、紫蘇子2、沈香1-1.5、桑白皮1.5-2、当帰2-4、木香1-1.5、甘草1-3、生姜1、大棗2(生姜、大棗なくても可)

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力虚弱で、胃腸の弱いものの次の諸症:
気管支ぜんそく、息切れ



17.大黄附子湯(だいおうぶしとう)
〔成分・分量〕 大黄1-3、加工ブシ0.2-1.5、細辛2-3

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以下で、冷えて、ときに便秘するものの次の諸症:
腹痛、神経痛、便秘




18.大防風湯(だいぼうふうとう)
〔成分・分量〕 地黄2.5-3.5、芍薬2.5-3.5、甘草1.2-1.5、防風2.5-3.5、白朮2.5-4.5(蒼朮も可)、加工ブシ0.5-2、杜仲2.5-3.5、羌活1.2-1.5、川芎2-3、当帰2.5-3.5、牛膝1.2-1.5、生姜0.5-1(乾姜1も可、ヒネショウガを使用する場合1.2-1.5)、黄耆2.5-3.5、人参1.2-1.5、大棗1.2-2

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力虚弱あるいは体力が消耗し衰え、貧血気味なものの次の諸症:
慢性関節炎、関節のはれや痛み、神経痛




19.八味疝気方(はちみせんきほう)
〔成分・分量〕 桂皮3-4、木通3-4、延胡索3-4、桃仁3-6、烏薬3、牽牛子1-3、大黄1、牡丹皮3-4

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以上で、冷えがあるものの次の諸症:
下腹部の痛み、腰痛、こむら返り、月経痛





20.半夏散及湯(はんげさんきゅうとう)
〔成分・分量〕 半夏3-6、桂皮3-4、甘草2-3

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 のどの痛み、扁桃炎、のどのあれ、声がれ

《備考》 注)体力に関わらず、使用できる。
【注)表記については、効能・効果欄に記載するのではなく、〈効能・効果に関連する注意〉として記載する。】


21.白朮附子湯(びゃくじゅつぶしとう)
〔成分・分量〕 白朮2-4、加工ブシ0.3-1、甘草1-2、生姜0.5-1(ヒネショウガを用いる場合1.5-3)、大棗2-4

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力虚弱で、手足が冷え、ときに頻尿があるものの次の諸症:
筋肉痛、関節のはれや痛み、神経痛、しびれ、めまい、感冒


22.茯苓杏仁甘草湯(ぶくりょうきょうにんかんぞうとう)
〔成分・分量〕 茯苓3-6、杏仁2-4、甘草1-2

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以下で、胸につかえがあるものの次の諸症:
息切れ、胸の痛み、気管支ぜんそく、せき、動悸




23.附子粳米湯(ぶしこうべいとう)
〔成分・分量〕 加工ブシ0.3-1.5、半夏5-8、大棗2.5-3、甘草1-2.5、粳米6-8

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力虚弱で、腹部が冷えて痛み、腹が鳴るものの次の諸症:
胃痛、腹痛、嘔吐、急性胃腸炎



24.扶脾生脈散(ふひしょうみゃくさん)
〔成分・分量〕 人参2、当帰4、芍薬3-4、紫苑2、黄耆2、麦門冬6、五味子1.5、甘草1.5

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以下で、出血傾向があり、せき、息切れがあるものの次の諸症:
鼻血、歯肉からの出血、痔出血、気管支炎



25.補陽還五湯(ほようかんごとう)
〔成分・分量〕 黄耆5、当帰3、芍薬3、地竜2、川芎2、桃仁2、紅花2

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力虚弱なものの次の諸症:
しびれ、筋力低下、頻尿、軽い尿漏れ



26.奔豚湯(金匱要略)(ほんとんとう・きんきようりゃく)
〔成分・分量〕 甘草2、川芎2、当帰2、半夏4、黄芩2、葛根5、芍薬2、生姜1-1.5(ヒネショウガを使用する場合4)、李根白皮5-8(桑白皮でも可)

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度で、下腹部から動悸が胸やのどに突き上げる感じがするものの次の諸症:
発作性の動悸、不安神経症





27.奔豚湯(肘後方)(ほんとんとう・ちゅうごほう)
〔成分・分量〕 甘草2、人参2、桂皮4、呉茱萸2、生姜1、半夏4
〔用法・用量〕 湯
〔効能・効果〕 体力中等度以下で、下腹部から動悸が胸やのどに突き上げる感じがするものの次の諸症:
発作性の動悸、不安神経症



28.木防已湯(もくぼういとう)
〔成分・分量〕 防已2.4-6、石膏6-12、桂皮1.6-6、人参2-4(竹節人参4でも可)

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以上で、みぞおちがつかえ、血色すぐれないものの次の諸症:
動悸、息切れ、気管支ぜんそく、むくみ



29.薏苡附子敗醤散(よくいぶしはいしょうさん)
〔成分・分量〕 薏苡仁1-16、加工ブシ0.2-2、敗醤0.5-8

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力虚弱なものの次の諸症:
熱を伴わない下腹部の痛み、湿疹・皮膚炎、肌あれ、いぼ





30.苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)
〔成分・分量〕 茯苓1.6-4、甘草1.2-3、半夏2.4-5、乾姜1.2-3(生姜2でも可)、杏仁2.4-4、五味子1.5-3、細辛1.2-3

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度又はやや虚弱で、胃腸が弱り、冷え症で薄い水様のたんが多いものの次の諸症:
気管支炎、気管支ぜんそく、動悸、息切れ、むくみ


31.苓桂味甘湯(りょうけいみかんとう)
〔成分・分量〕 茯苓4-6、甘草2-3、桂皮4、五味子2.5-3

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以下で、手足が冷えて顔が赤くなるものの次の諸症:
のぼせ、動悸、からぜき、のどのふさがり感、耳のふさがり感



流派などにもよると思いますが、
比較的知名度の高い漢方薬方もあれば、
それほどでも無いような漢方薬方もあります。


以前は一般用漢方処方は、別名、210処方と呼ばれていて、
(実際は213処方)
それに、
2010年4月に、23の基本処方と加減方が追加され、
2011年4月に、27処方を加えて
263処方になっていました。
今回、更に、31処方追加され、
合計294処方となりました。

これは、あくまでも基準ができたということで、
これに沿った漢方薬が市場に出てくるかどうかは別問題です。
一般用漢方製剤を製造販売しているメーカーも、
採算が合うと判断しなければ、承認を取得してまでも
上市しないと思われます。


今まで使えなかった薬方が増えるのは良いことのようにも思えます。
ただ、和田東郭は、「方を用いること簡なる者は、その術、日に精し。方を用いること繁なる者は、その術、日に粗し。世医ややもすれば、すなわち簡を以って粗となし、繁を以って精となす。哀れなるかな」と戒めています。
気を付けたいものです。