健康情報: 加減涼膈散(龔廷賢)(かげんりょうかくさん・きょうていけん)  の 効能・効果 と 副作用

2012年9月28日金曜日

加減涼膈散(龔廷賢)(かげんりょうかくさん・きょうていけん)  の 効能・効果 と 副作用

一般用漢方製剤の承認基準改正が改正され、31処方が追加されましたが、
その中に、加減涼膈散という名前のものが2つあります。

一つが
加減涼膈散(浅田)(かげんりょうかくさん・あさだ) で、
もう一つが、
加減涼膈散(龔廷賢)(かげんりょうかくさん・きょうていけん)です。

龔廷賢は、明代の医師で、『万病回春』(萬病回春;まんびょうかいしゅん)をまとめました。
万病回春には、千近い薬方が収載されています。

この万病回春に収載されているのが、
加減涼膈散(龔廷賢)になりますが、
実際に記載されている名称は、
「涼膈散加減」となっているそうです。

また、一般用漢方製剤の基準が設定される際、
もともとは、
加減涼膈散(回春)(かげんりょうかくさん・かいしゅん)
となる予定だったのですが、
「「回春」という言葉を用いるのは、精力剤と誤解されて誤用・濫用されるおそれがあり、妥当でない」
という意見が出て、
『万病回春』の著者である龔廷賢の名前を取り、「加減涼膈散(龔廷賢)」となったそうです。


さて、同じ名称の加減涼膈散を比較すると下記のようになります。


万病回春 浅田家方
連翹
2-3
3
黄芩
2-3
3
山梔子
1.5-3
3
桔梗
2-3
3
黄連
1-2
薄荷
1-2
2
当帰
2-4
地黄
2-4
枳実
1-3
芍薬
2-4
甘草
1-1.5
1
大黄
1
石膏
10

十一味
八味



この表を見ると、
連翹(れんぎょう)、黄芩(おうごん)、山梔子(さんしし)、桔梗(ききょう)、薄荷(はっか)、甘草(かんぞう)は共通で、
万病回春の加減涼膈散には、
黄連(おうれん)、当帰(とうき)、地黄(じおう)、枳実(きじつ)、芍薬(しゃくやく)があり、
大黄(だいおう)、石膏(せっこう)が無く、
浅田家方は逆に、
大黄(だいおう)、石膏(せっこう)があり、
黄連(おうれん)、当帰(とうき)、地黄(じおう)、枳実(きじつ)、芍薬(しゃくやく)がありません。

万病回春の加減涼膈散を見ていると、
黄柏(おうばく)と川芎(せんきゅう)が足りませんが、
黄連解毒湯(黄芩、山梔子、黄連、黄柏)と四物湯(当帰、芍薬、川芎、地黄)の合方、
すなわち、温清飲(うんせいいん)から、黄柏・川芎を除いたものが
あるように思われます。

黄連解毒については、湯本求真先生の『皇漢医学』を見ると、
○黄連解毒湯及び丸方(黄解丸)
 黄連 黄芩 梔子(各一・〇) 大黄(二・〇)
 右細剉し、瀉心湯法の如く煎じ、又は丸となし、一日三回に分服す。
○第二黄連解毒湯及び丸方
 黄連 黄芩 梔子 黄蘗(各一・〇)
煎法用法は前に同じ。

註、本方は本黄連解毒湯と称し、是れ亦王燾氏(『外台秘要』)の創始なれども、
その実は瀉心湯中の大黄を去り、
梔子蘗皮湯中の甘草を除きて、合方せしに外ならざれば、
本方の方意方用は、即ち瀉心湯去大黄及び梔子蘗皮湯去甘草の求むべきものにして、
前方と異る所は、大黄の有無如何にありて、黄蘗の存否に関せざれば――黄蘗の存否は毫も関係なきにあらざれども、此の薬物は彼此二方に共通なる梔子と大同小異なれば、しばらく之を除外するも敢えて不可なし――大黄を有せる前方は実証を治し、之を含まざる本方は虚証を治するにあり。
 
とありますので、
加減涼膈散(回春)に、
黄蘗(黄柏)が無くても、黄連解毒湯の意味(方意)はあると考えられます。

浅田宗伯先生の『勿誤薬室方函口訣』にも、
「古人涼膈散を調胃承気の変方とすれども、其の方意は膈熱を主として瀉心湯諸類に近し」とあり、
 瀉心湯類(三黄瀉心湯、大黄黄連瀉心湯、黄連解毒湯など)の方意が
あるようです。

また、四物湯去川芎 となっている漢方薬方は、他にもありますので、
やはり、四物湯の方意に近いものがあるのかもしれません。


万病回春の加減涼膈散、すなわち加減涼膈散(龔廷賢)は、
甘草を含んでいますので、
甘草による副作用、すなわち偽アルドステロン症が発生する可能性がありますが、
加減涼膈散(浅田)には、甘草が含まれていませんので、
偽アルデステロン症の心配はいらないようです。

ただ、加減涼膈散(龔廷賢)の甘草の量は、
1~1.5gと、それほど多くは無いので、
他の漢方薬方と組み合わせて使わない限りは、
それほど心配は無さそうです。