健康情報: 柴葛解肌湯(さいかつげきとう)  の 効能・効果 と 副作用

2012年10月8日月曜日

柴葛解肌湯(さいかつげきとう)  の 効能・効果 と 副作用

臨床応用 漢方處方解説 矢数道明著 創元社刊
43 柴葛解肌湯(さいかつげきとう) 〔傷寒六書〕
 柴胡四・〇 葛根・黄芩・芍薬各三・〇  羗活・白芷・桔梗・甘草・大棗 各二・〇 石膏五・〇 乾生姜一・〇

浅田家の柴葛解肌湯
 柴胡四・〇 黄芩・桂枝・半夏・葛根・芍薬 各三・〇 麻黄二・〇 石膏五・〇 乾生姜・甘草各一・〇

一般に浅田家方が用いられている。

応用
 外感で特殊の病態を呈し、麻黄湯・葛根湯の二つの証が解消せず、しかも少陽の部位に邪が進み、嘔や渇が甚だしく、四肢煩疼するものによい。
 流行性感冒・肺炎の一証・諸熱性病の一証として現われる。また肝気亢ぶり発狂するに用いることがある。

目標
 桂枝湯や麻黄湯で発表しても快癒せず、汗が出ないでかえって熱勢が加わり、柴胡の証も現われるが表証が去らず、口渇もある。陽明の証のように思われるし、また白虎湯のようにも見えるところがある。ただ熱がさかんで頭痛・身体疼痛・鼻衂などがあり、上部に熱が鬱塞して甚だしいときは、讝語狂躁の状を呈するに至ることもある。
 頭痛・口渇・不眠・鼻乾き、または衂血・悪寒して汗なく・四肢疼み・脈洪数のものが目標である。

方解
 葛根湯と小柴胡湯とを合わせて石膏を加えるもので、太陽と少陽と陽明と三陽の合病を治すものである。
 柴胡・黄芩・半夏・芍薬・甘草は心下・肝部・胸脇を緩め、少陽の趣を解し、葛根・桂枝・麻黄・芍薬等は太陽の熱を解し、石膏は陽明の熱をさます意味である。

主治
 浅田方函に「太陽少陽合病、頭痛、鼻乾、口渇、不眠、四肢煩疼、脈洪数ノ者ヲ治ス」とあり、
 蕉窓方意解(六書の柴葛解肌湯)には、「此方桂麻ノ類を用イテ発表スレドモ汗快ク出デズ、反テ熱気ジツクリト手ヅヨクアツキ様ナル勢ニナリ、柴胡ノ症モアレドモ亦表症アリテ、柴胡ニテ発汗スベキ様ニモナク、又白虎ヲ用テ用ユベキ様子ニテモナシ。唯熱気熾盛ニシテ、或ハ頭痛甚シキモノアリ、或ハ身体疼痛スルモアリ、或ハ鼻衂スルモアリ、兎角上部閉塞スル形ニテ解熱シ難ク、タマサカニハ譫語或ハ発狂同様ニ躁シキモノモアリ。(中略)外邪ナクシテ肝気亢リ、発狂スル人ニ黄連、白虎ナド夥シク用イテ寸効ナキモノ、此方ニテ即験ヲ得タルコト数度アリ。即チ独立禅師此処ニ工夫アリト見エテ、発狂ニ此方ヲ用イテ灸治を兼タルコト見エタリ」とある。

鑑別
○麻黄湯 136(発熱・太陽病で表熱実証、脈浮緊、舌苔や口渇はない)
○小柴胡湯 69(発熱・少陽病実熱、胸脇苦満、脈弦、口苦)
白虎湯 121(発熱・陽病実熱、汗出で、煩渇)

治例
(一) 流行性感冒
 六〇歳の男子。昭和三三年の流行性感冒は高熱持続するもの多く、本例も三九度五分以上の発熱が五日間続き、稽留熱に近く、頭痛甚だしく、眼球痛み、鼻衂・口渇・腹痛・四肢痛を訴え、昔なくして重病感があり、しかも神経興奮状にて訴えが強い。脈洪大数、舌白苔厚く乾燥し、腹部心下部痞し、肝部硬く胸脇苦満の状がある。すでに麻黄湯・葛根湯・小柴胡湯等を投じて解熱しなかった。そこで本方を与えたところ二日にして平熱となり、諸症漸減し治癒した。(著者治験)


明解漢方処方 西岡一夫著 ナニワ社刊
24柴葛解肌湯(浅田宗伯)
 柴胡四・〇 黄芩 桂枝 半夏 葛根 芍薬各三・〇 麻黄二・〇 石膏五・〇 生姜 甘草各一・〇(二七・〇)

 本方は葛根湯と小柴胡加石膏を合方した処方で、表位の病邪を麻黄湯などで発汗したが、なお表証が残っていて、しかも病邪が裏位にも侵入して小柴胡の証と石膏の証(口渇、煩熱)を帯びてきたものに用いる、いかにも浅田流らしい投網式の処方である。もしこの証で虚証なら柴胡桂枝湯であろう。
 主に使われるのは流行性感冒で、熱はさ程高くないが頭痛し全身倦怠を感じ、胸苦しく食慾不振の者に用いる。
 なお、神秘湯の項でも述べたが、柴胡と麻黄の組合せは古方では見られず、後世方でも本方と神秘湯のみであり、配合に疑問が感じられる。流行性感冒。

【副作用】
麻黄:
心臓疾患のある方、高血圧の方、あるいは高齢者には注意が必要です
消化器に関連して、吐き気、食欲不振、胃部不快感などが起こるおそれがあります。



柴胡・黄芩:
間質性肺炎に注意が必要です。

甘草:
低カリウム血症、僞アルデステロン症 に注意が必要です。
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなるなどの症状が出ることがあります。


皮膚に、発疹、発赤、かゆみなどが起こることがあります。