健康情報: 1月 2013

2013年1月23日水曜日

芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
芎帰膠艾湯
本方は諸出血が続いて、貧血の状を呈するものを目標として種々の場合に用いられる。もし本方によって出血が加わり、貧血高度の場合、または此方を服用して下痢するものは四君子湯類或はその他の方を考えるべきである。
当帰・芍薬・川芎・地黄は造血剤で、貧血を補い、阿膠・艾葉は地黄と共に止血の効能がある。甘草は諸薬を調和する。
本方は以上の目標に従って、子宮出血、子宮内膜炎、流産の流兆のあるもの、産後の出血・痔出血・腸出血・血尿・外傷後の内出血・紫斑病・諸貧血症等に応用される。


『漢方精撰百八方』
 2.[方名] 芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)

[出典]
 金匱要略

[処方]
 川芎 甘草 艾葉各3.0 当帰 芍薬各4.5 乾地黄6.0 阿膠

[目標]
 子宮出血の有るもの、流産後続いて出血するもの、妊娠中出血するもの、妊娠中腹痛して異常妊娠の徴候のあるもの。

[かんどころ] 子宮出血、膀胱出血は時をうつさず応用する。

[応用]
 当帰、芍薬、川芎、地黄は造血剤で、艾葉、阿膠には止血作用がある。甘草は諸薬を調和する作用をする。

 本方は子宮出血に最も屡々用いられるが、子宮出血には本方の他に桂枝茯苓丸が用いられる。また流産の前兆として出血する場合は成るべく早く本方を応用すると流産を未然に防止することが出来ることが多いのでまず試みるべきである。

 膀胱出血の場合にも応用される。六十才女。大学病院で膀胱癌と診断されて手術を指示され出血の著しかったものに本方を用いて二年ほど続けたが、出血が止まって一応癌も治ったように見える。

 腎臓出血にはいろいろの原因があるが、本方で出血のとまる場合が多い。腎臓結石で血尿を出すものに本方を与えたところ、出血が止まると共に腰部の疝痛もとれた例がある。これで見ると腎出血が止まるとその原因としての腎臓結石の方も同時に処理されるものと思われる。痔出血が猛烈で貧血を呈する場合がある。そんな場合でも本方で止まるのである。

 特発性腎出血というのがある。このものは原因不明のものであるが、自律神経失調の二症状と考えられている。この場合洋方では輸血のほか手のほどこしようもないが、本方をやって見ると僅か二、三日で止まることがあるから試みるとよい。

 また本方で潰瘍性大腸炎の出血が僅か一週間ぐらいの服用で止まった例もある。

 同じく出血でも、肺結核の喀血、胃潰瘍の吐血などには本方は適さないようである。

 文献的には方輿輗(有持桂里)にすべての切迫流産に用いると流産を防止することが出来ると言っている。湯本求真氏は常習流産に本方を常用するとよいと言っている。

 また湯本氏は本方の腹証として左直腹筋撃急して按せば痛むものとしている。

[附記] 本方は七味から成っているが、最近西岡一夫氏が本方は四味が金匱の原方であると興味深い学説を立てている(日東誌 14.2)
相見三郎著


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
3 駆瘀血剤
駆瘀血剤は、種々の瘀血症状を呈する人に使われる。瘀血症状 は、実証では便秘とともに現われる場合が多く、瘀血の確認はかんたんで、小腹急結 によっても知ることができるが、虚証ではかなり困難な場合がある。駆瘀血剤は体質改善薬としても用いられるが、服用期間はかなり長くなる傾向がある。
駆 瘀血剤の適応疾患は、月経異常、血の道、産前産後の諸病その他の婦人科系疾患、皮下出血、血栓症、動脈硬化症などがある。駆瘀血剤の中で、 抵当湯(ていとうとう)・抵当丸は陳旧性の瘀血に用いられる。当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は瘀血の証と水毒の証をかねそなえたものであり、加味逍遙散はさらに柴胡剤、順気剤の証をかねそなえたものである。

7 四物湯(しもつとう)  (和剤局方)
〔当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、地黄(じおう)各四〕
駆 瘀血剤の中で虚証に属するものである。本方は婦人の聖薬といわれ、自律神経失調などの神経症状を呈し、出血によって、また、血液の偏在に よって貧血し、皮膚枯燥、腹部の動悸、発熱、不眠、煩操、冷え症などを目標とする。しかし、口唇が蒼白となるほどの貧血、胃腸の虚弱なものには用いられな い。本方は単独で用いることはまれで、種々の加減や合方が行なわれる。
〔応用〕
駆瘀血であるために、大黄牡丹皮湯桃核承気湯のところで示したような疾患に、四物湯證を呈するものが多い。

四物湯の加減方、合方


(7)芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)  (金匱要略)
〔乾地黄(かんじおう)六、当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)各四、川芎(せんきゅう)、甘草(かんぞう)、艾葉(がいよう)、阿膠(あきょう)各三〕
本方は、四物湯に甘草、艾葉、阿膠を加えたものとして考えることができる。阿膠や艾葉には、止血作用が強いため瘀血によって出血がやまず、貧血状を呈しているものの止血および清血に用いられる。また、下腹部の知覚麻痺、四肢煩熱、下肢の疼痛などを目標とする。本方の服用によって、出血が強くな り、貧血が高度になったものや下痢するものは、四君子湯その他を考える。
〔応用〕
一 子宮内膜炎、子宮癌、月経過多、流産癖、帯下、産後の出血その他子宮出血を伴う婦人科系疾患。
一 腎臓結石、腎臓結核、血尿その他の泌尿器系疾患。
一 痔出血、肛門出血、腸出血、吐血、喀血、衂血、眼底出血、外傷による内出血、紫斑病その他の各種出血。
一 そのほか、諸貧血症。



《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
14.芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう) 金匱要略
川芎3.0 甘草3.0 艾葉3.0 当帰4.5 芍薬4.5 乾地黄6.0
 右法の如く煎じ滓を去り阿膠3.0を加え再び火に上せ溶解し尽すを度としこれを温服す。

(金匱要略)
○師曰,婦人有漏下者,有半産後,因続下血都不絶者,有妊娠下血者,仮令妊娠腹中痛,為胞阻膠艾湯主之。(妊娠)

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
 冷え症で出血過多により貧血するもの。本方はその増血作用により各種出血による貧血を治すものである。従って一次性の貧血症には無効であるから,その場合は柴胡桂枝干姜湯,補中益気湯などを考慮すべきである。
 本方を服用後更に出血がひどくなる時は,黄連解毒湯2グラムを冷水で服用させると止血できる。また本方で胃腸障害を起し,悪心または下痢をもよおす場合も不適で,このような場合は半夏瀉心湯などで治療すればよい。充血による出血には三黄瀉心湯あるいは黄連解毒湯が適する。


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○下血その他主に身体下部の諸血および,うっ血があり,出血が長びいて貧血状を呈するもの。
○痔が痛んだり,出血がつづいたりして貧血したもの。貧血が甚だしいときは,めまい,四肢脱力,下腹部の刺すような痛み,などがおこることがある。
○婦人の子宮出血,流産ぐせ,流産の前徴があるとき,流産のあとで出血が止まないもの,妊娠中の子宮出血を伴う腹痛など。
○本方の証は瘀血による症状である。しかし,桃核承気湯桂枝茯苓丸と異なり,桂枝がないので上衝することがなく,茯苓がないので心悸亢進がない。また桃仁,牡丹皮がなく,代りに当帰,川芎,艾葉があることから本方の証は陰虚証である。したがって本方の適応する患者の腹証は軟弱であり,ときには軟弱無力である。



漢方治療の実際〉 大塚 敬節先生
○芎帰膠艾湯と当帰芍薬散はともに当帰,川芎,芍薬あり,前者には地黄,甘草,艾葉,阿膠があり,後者には茯苓,朮,沢瀉がある。だから前者は多く血に働き,後者は多く水に働く,尾台榕堂は類聚方広義の中で,芎帰膠艾湯の条で“腸痔,下血,綿々として止まず,身体痿黄,起れば則ち眩暈し,四肢力なく,小腹刺痛する者を治す”といい、当帰芍薬散の条では“脱肛,腫痛,水を出して止まざる者に奇効あり”とのべている。痿黄は貧血のこと。
○芎帰膠艾湯は痔出血によく用いられるが、出血に疼痛を兼ねたもの。手術後,または注射,軟膏等で,腐蝕せしめたのち,患部の瘡面癒合せず,疼痛,出血等のあるものに用いる。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
 本方は諸出血が続いて,貧血の状を呈するものを目標として種々の場合に用いられる。もし本方によって出血が加わり,貧血高度の場合,または此方を服用して下痢するものは四君子湯類或はその他の方を考えるべきである。当帰,芍薬,川芎,地黄は造血剤で,貧血を補い,阿膠,艾葉は地黄と共に止血の効能がある。甘草は諸薬を調和する。本方は以上の目標に従って,子宮出血,子宮内膜炎,流産の前兆のあるもの,産後の出血,痔出血,腸出血,血尿,外傷後の内出血,紫斑病,諸貧血症等に応用される。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 虚寒証(虚証で寒冷性)の出血,もしくは貧血があってさらに瘀血の証があり,左腹直筋の攣急,腹部は一般に軟弱無力で,下腹部に知覚鈍麻,四肢煩熱,下腹の疼痛を目標とする。



漢方入門講座〉 竜野 一雄先生
 構成 本方から阿膠,甘草,艾葉を抜くと後世方の四物湯になる。当帰芍薬散にくらべると水に行く薬の代りに血に行く薬ばかりになっている。(中略)

 運用 子宮出血
 虚寒性の子宮出血を治す。虚寒性であることは処方内容が温補の薬から成立っているので知られる。虚寒性だから冷え性で,腹も軟く,出血の模様も弛緩性でだらだら出るものが多い。腹に寒があれば腹痛も起る。「師の曰く,婦人漏下あるものは半産後因って続いて下血都て絶えざるものあり,妊佐下血するものあり。たとえば妊娠腹中痛むを胞阻となす。膠艾湯之を主る。」(金匱要略妊娠)
(中略)
 臨床的には妊娠や流産の有無に関せず本方を使うのであって,子宮出血を起す各種の産婦人科疾患に対し病名の如何を問わず使ってよい。また下血を子宮出血ばかりでなく男女の前陰後陰の出血,即ち血尿,肛門出血,痔出血等に転用する。凡て弛緩性の出血である。脉,腹その他の条件を参照して使うことは言うまでもない。
 浅田宗伯先生曰く「此方は止血の主薬とす。故に漏下胞阻に用いるのみならず,千金,外台には妊娠失仆傷産及打撲傷損諸諸失出に用ゆ。(中略)又痔疾又一切下血此方を与。」(勿誤薬室方函口訣)(中略)吐血のみならず,睡血即ち喀血,口内出血にも使い得る。類証鑑別を要するのは当帰芍薬散,当帰建中湯,桃花湯,八味丸,土瓜根散,猪苓湯桂枝茯苓丸桃核承気湯大黄牡丹皮湯などである。

 運用 2. 下腹痛
 出血の有無に拘らず下腹部の鈍痛に使うことが出来る。私が経験したのは脉腹ともに著しく弱く,貧血性の冷え性の人で,大小便普通,腹部の深部に著変を認め得なかった。


古方薬嚢〉 荒木 性次先生
 婦人妊娠中夥しく出血ありて,腹中大いに痛む者,又は所謂永血とて経水月を過ぎて止まざる者,此場合腹は痛む者もあり,痛まざるものもあり。


類聚方広義〉 尾台 榕堂先生
 腸痔,下血綿々として止まず,身体痿黄,起きれば即ち眩暈,四肢力なく,少腹刺痛する者を治す。若し胸中煩悸,心悸鬱結して大便燥結する者には瀉心湯,黄連解毒湯を兼用す。




【一般用漢方製剤承認基準】
芎帰膠艾湯
〔成分・分量〕 川芎3、甘草3、艾葉3、当帰4-4.5、芍薬4-4.5、地黄5-6、阿膠3

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以下で、冷え症で、出血傾向があり胃腸障害のないものの次の諸症: 痔出血、貧血、月経異常・月経過多・不正出血、皮下出血
 


【添付文書等に記載すべき事項】
 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕


 相談すること 
 1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸が弱く下痢しやすい人。
(4)高齢者。
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)次の症状のある人。
     むくみ
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)次の診断を受けた人。
     高血圧、心臓病、腎臓病
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
関係部位症状
皮膚発疹・発赤、かゆみ
消化器食欲不振、胃部不快感、腹痛
 


2013年1月19日土曜日

乙字湯(おつじとう) の 効能・効果 と 副作用

『漢方精撰百八方』
19〔方名〕 乙字湯(おつじとう)
〔出典〕 叢桂亭醫事小言(そうけいていいじしょうげん)(原南陽) 

〔処方〕 当帰6.0 柴胡5.0 黄芩3.0 甘草2.0 升麻1.5 大黄1.0 

〔目標〕
 肛門の疼痛、痔出血、痔核腫脹、陰部瘙痒、軽度の脱肛、皮膚病内攻による神経症、血便。 

〔かんどころ〕
 あらゆる痔に試みるべき処方で、痛みが激しいときには甘草を増量し、大黄は便通の具合によって加減する。しかし下痢のある場合には用いない方がよい。  

〔応用〕
 痔に本方を用いても効のないことがある。こんな時には駆瘀血剤を証によって合方するか、または丸、散剤で兼用すると著効を得る。一例を示すと冷え性で貧血気味、本方の大黄を減量しても下痢して困るものには当帰芍薬散を。炎症が強く肛門周囲の充血が著明なときには桃核承気丸、それほどでもなければ桂枝茯苓丸という具合に。
  また本方は陰部や肛門周囲のそう痒症に奇効のあることがある。ただし女子のトリコモナスに起因するものには無効、こんな時は竜胆瀉肝湯が効くこともある。      頑固な皮膚病に強い刺激性の外用薬を用いてこれが内攻し、精神不安、逆上、頭重などの神経症状を訴える場合にも効くことがある。  

〔治験〕
 三二才の主婦、すでに五回の分娩を経験しており、初産の直後から切れ痔で出血が続いたという。頻回の分娩で痔は益々悪化するばかり。座薬などは全くうけつけない。五回目の分娩後は軽い脱肛を伴い頭重、便秘、冷え性がとくに著しい。万策つきて相談に来たので乙字湯を煎剤にし、当帰芍薬散の原末を一日量3.0として散を湯でのませることにした。大黄1.0で一週間続けたが便通が思わしくないので0.5増量。その後消息不明であったが、後日会ったら三週間で全治し、それから半年間全く痛苦を忘れたと喜んでいた。
  五三才の男子、三年ごしの疥癬で悩んでいたが、少しもよくならないので友人のすすめで水銀軟膏に硫黄華を混じたものを素人療法で塗ったところ五日ほどで患部がよくなったのに力を得て、広範囲に使用したら不眠、頭重、動悸を訴え、食欲なく便秘してしまった。来診時、上腹部膨満、胸内不穏で脈は力があったので大柴胡湯を投じたところ、便通があって上腹部膨満はとれたが他の症状は変わらない。そこで乙字湯に転方したら、こうせいげかん一週間で主訴は消失した。
  石原 明




漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
1 柴胡剤
柴胡剤は、胸脇苦満を呈するものに使われる。胸脇苦満は実証で は強く現われ嘔気を伴うこともあるが、虚証では弱くほとんど苦満の状を訴えない 場合がある。柴胡剤は、甘草に対する作用が強く、解毒さようがあり、体質改善薬として繁用される。したがって、服用期間は比較的長くなる傾向がある。柴胡 剤は、応用範囲が広く、肝炎、肝硬変、胆嚢炎、胆石症、黄疸、肝機能障害、肋膜炎、膵臓炎、肺結核、リンパ腺炎、神経疾患など広く一般に使用される。ま た、しばしば他の薬方と合方され、他の薬方の作用を助ける。
柴胡剤の中で、柴胡加竜骨牡蛎湯柴胡桂枝乾姜湯は、気の動揺が強い。小柴胡湯加味逍遥散は、潔癖症の傾向があり、多少神経質気味の傾向が ある。特に加味逍遥散はその傾向が強い。柴胡桂枝湯は、痛みのあるときに用いられる。十味敗毒湯荊防敗毒散は、化膿性疾患を伴うときに用いられる。
各薬方の説明(数字はおとな一日分のグラム数、七~十二歳はおとなの二分の一量、四~六歳は三分の一量、三歳以下は四分の一量が適当である。) 

11 乙字湯
〔当帰(とうき)六、柴胡(さいこ)五、黄芩(おうごん)三、甘草(かんぞう)二、升麻(しょうま)一・五、大黄(だいおう)一〕
諸痔疾患で、陰部の掻痒、疼痛、出血などのある場合に用いられる。また、皮膚病の内攻して神経症状を呈するものにもよい。
〔応用〕
つぎに示す様な疾患に、乙字湯證を呈するものが多い。
一 痔核、痔出血、裂痔、脱肛、肛門裂傷、陰部痒痛など。



《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
8.乙字湯湯(おつじとう) 原南陽
大黄1.0 柴胡5.0 升麻1.5 甘草2.0 黄芩3.0 当帰6.0

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
 便秘して時々少量の出血があり,局処の痛みの甚しいもの。本方は痔核,脱肛には先ず試みるべき処方である。
 本方でなお便通の悪いものは桃核承気湯に転方するか,あるいは両者を合方すればよい。反対に本方で下痢の甚しいものには当帰芍薬散に転方すべきである。痔出血が著しくて便秘するものに三黄瀉心湯が適し,貧血する場合には芎帰膠艾湯を使用する。なお本方は女子前陰部瘙痒症に奇効を得る場合があるから,一度試みるとよい。


漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
 痔疾は湿度の高い気候,冷えやすい日本式家屋,日本式座法や便所,妊産婦,刺激性食品,習慣性便秘などによって痔静脈の鬱血から起ると言われているだけに,日本人には特に多く成人の約80%が,何らかの痔疾をもっていると言われている。本方はこられの誘因や素因に対して,血液循環や腹圧,肝臓機能や便通を改善して,痔疾を体内から治療する内服薬として,漢方では有名な処方である。
(1)痔核 前記記載の症状を目安に,一般的に繁用されているが,特に飲酒や刺激性食品摂取後におこる外痔核や内痔核で,痛みや出血便秘などあるものによい。また習慣性便秘で,排便時に肛門裂傷や脱肛,痔核痛や出血を伴うものに投与すると,可及的速かに痛みをとり快便を得ることができる。
(2)脱肛 便秘や分娩など過大に腹圧が加わった場合に誘発す識ものに適し,その他のものは次項を利照されたい。
 注意事項 本方は平素健康なものの痔疾に適するが,胃腸が弱く下痢の傾向があるものには,その程度によって当帰芍薬散を合方するか,または同方に転方する。体力や内臓無力症であったり,直腸や肛門括約筋の弛緩によるものには,補中益気湯の応用を考慮する。本方が適応する出血はおおむね少量出血を目安にするが,多量に出血するものには桂枝茯苓丸,さらに便秘がひどくて出血の多いものには,三黄瀉心湯を併用する。
 妊婦の痔疾で初期妊娠や晩期妊娠には,本方と当帰芍薬散を合方することが多い。
 肥満婦人や更年期の婦人に見られる神経性陰部瘙痒症に本方を用いて奇効を得ることがある。また本方を鼻腔フルンケルや鼻茸に,偉効があった経験も報告されている。


漢方診療の実際〉 大塚 敬節先生
 叢桂亭医事小言には「痔疾,脱肛,痛楚(脱肛して痛む。)或は下血腸風(腸や肛門よりの出血)或は前陰痒痛するものを治す。諸瘡疥誤って枯薬にて洗傳(外用薬で洗ったり,これをつけたりして)頓に癒え,後上逆,鬱冒(頭に物をかぶった重苦しい感じ)気癖(神経症)の如く,繊憂細慮,或は心気定まらざる者,並せてこれを治す。」とあり,浅田宗伯はこの方の大棗を当帰に代え,升麻は犀角の代用で止血の効があるといい,またこの方は甘草の量を多くしないと効かないとのべている。しかし乍ら痔出血には出血のところでのべたように三黄瀉心湯,芎帰膠艾湯,温清飲などを用いた方がよい。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 原南陽の経験方で種々の痔疾患に一般的に用いられる。とくに痔核の疼痛,出血,肛門裂傷などによい。また脱肛の初期軽症のもの。婦人の陰部痒痛にも転用される。また皮膚病を誤って治療して内攻の結果,神経症になったものにも用いてよいことがある。諸痔疾患で病状がそれほど激しくないものである。虚実に偏しない一般的な病状を目標とする。


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
 此方は原南陽の経験にて,諸痔疾,脱肛,痛楚甚しく,或は前陰痒痛,心気不定の者を治す。南陽は柴胡,升麻を升提(ひきあげる)の意に用いたれども,やはり湿熱清解の功に取るがよし,其内升衣は古より犀角の代用にして,止血の効あり。此方甘草を多量にせざれば効なし。




【一般用漢方製剤承認基準】

乙字湯
〔成分・分量〕 当帰4-6、柴胡4-6、黄芩3-4、甘草1.5-3、升麻1-2、大黄0.5-3
〔用法・用量〕 湯
〔効能・効果〕 体力中等度以上で、大便がかたく、便秘傾向のあるものの次の諸症:
痔核(いぼ痔)、きれ痔、便秘、軽度の脱肛


【添付文書等に記載すべき事項】
 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕


2.本剤を服用している間は、次の医薬品を服用しないこと
他の瀉下薬(下剤)


3.授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること




 相談すること 
 1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
(4)胃腸が弱く下痢しやすい人。
(5)高齢者。
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(7)次の症状のある人。
     むくみ
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(8)次の診断を受けた人。
     高血圧、心臓病、腎臓病
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕


2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

関係部位 症状
皮膚 発疹・発赤、かゆみ
消化器 はげしい腹痛を伴う下痢、腹痛


2013年1月16日水曜日

温清飲(うんせいいん) の 効能・効果 と 副作用

『漢方精撰百八方』

80.〔温清飲〕(うんせいいん)
〔出典〕万病回春
〔処方〕当帰、乾地黄 各4.0 芍薬、川芎、黄芩 各3.0 黄連、黄柏、山梔子 各2.0
〔目標〕
  この方は万病回春婦人門に「婦人経脈住(とど)まらず、或いは豆汁の如く、五色相雑え、面色痿黄、臍腹刺痛、寒熱往来、崩漏止まざるを治す」とある。 温清飲は四物湯と黄連解毒湯との合方で、実熱を瀉する黄連解毒湯を、虚熱を治し、血を養い温める四物湯とを組み合わせて作られたものである。  本方証の多くは、慢性に経過したものか、体質的に本方証のあるものが急性症状を発したものである。体質的には皮膚黒褐色または黄褐色を呈し、渋紙の如く、皮膚枯燥の傾向がある。症状としてはソウ痒甚だしく、あるいは粘膜に潰瘍出没し、のぼせて出血の傾向がある。また神経興奮の症状がある。脈は一定しないが弱くはない。腹は柴胡証に似て肋骨弓下部及び腹直筋が緊張し、抵抗があるものが多い。肝障害を伴うものである。

〔かんどころ〕
  皮膚の色が黄褐色で、渋紙の如く枯燥し、慢性的に経過し、あるいは体質的疾患に多く、肝機能障害を伴い、神経症や、アレルギー性のものが多い。虚実寒熱の複雑化したものである。

〔応用〕
  諸出血(子宮出血、血尿、衂血、喀血等)・皮膚掻痒症・皮膚炎・湿疹・蕁麻疹・面皰・肝斑(しみ)・ベーツェット症候群・神経症・高血圧・肝障害・アレルギー性体質改善などに応用される。

〔附記〕
  本方を基本として森道伯翁は、柴胡清肝湯、荊芥連翹湯、竜胆瀉肝湯を創方し、体質改善薬とした。大塚敬節氏は本方に釣藤、黄耆、魚腥草(どくだみ)を加えて高血圧の、のぼせ、顔面紅潮、不眠、気分の不安定なるものに用いるという。

〔治験〕
  ベーチェット症候群
  33才の主婦。約10ヶ月前より発病し、口中舌頬粘膜、及び陰部に潰瘍ができ、出没常なく、繰り返し発生していた。また下肢に斑点が現れ、陰部に潰瘍ができるときは、悪寒高熱を発して非常に苦しむ。ベーチェット症候群という診断を受け、3ヶ月入院加療を受けたが少しも好転しなかった。これを血熱生瘡久しきものとして温清飲に連翹を加えて与えたところ、1ヶ月後には現発の潰瘍は消失し、新しい潰瘍の発生なく、4ヶ月間服用して全治し、以来数年を経過するが再発をみない。
矢数道明



漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
四物湯の加減方、合方
(1)温清飲(うんせいいん)  (万病回春)
〔四物湯に黄連解毒湯(おうれんげどくとう)を合方したもの〕
本方は、黄連解毒湯證(後出、瀉心湯類の項参照)に瘀血の症状をかねたもので、諸出血がつづいて貧血状となり、のぼせ、神経の興奮などを呈する。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、温清飲證を呈するものが多い。
一 月経過多、子宮出血、男子の下血、胃や腸の潰瘍による出血その他の諸出血。
一 皮膚掻痒症、湿疹その他の皮膚疾患。
一 そのほか、高血圧症、神経症など。

黄連解毒湯の加減方
(1) 温清飲(うんせいいん)
   〔黄連解毒湯と四物湯の合方〕(前出、駆瘀血剤の項参照)




《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
4.温清飲(うんせいいん) 万病回春
当帰4.0 地黄4.0 芍薬3.0 川芎3.0 黄芩3.0 梔子2.0 黄連1.5 黄柏1.5

漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
 婦人では子宮出血が長びいたり,月経過多で出血が多く,あるいは帯下がつづき,男子では下血が久しくつづいて貧血症状を呈するものである。このときのぼせ,精神興奮,皮膚の熱感を伴う肌荒れなどのあることが少なくない。ただ食欲不振や下痢などの胃腸症状があるときは用いられない。

漢方治療の実際〉 大塚 敬節先生
○湿疹や皮膚炎に用いる。目標は患部が乾燥して赤味を帯び,灼熱感があり,瘙痒がひどく,ひっかくと,粉がこぼれるという点にある。消風散を用いる時のように分泌物が流れることはない。顔面,頸部,項部がひどくおかされる傾向がある。矢数氏は「多くは丘疹性の湿疹で,分泌物はなく,枯燥の傾向があり,瘙痒が甚しく,掻把によって出血痕を残しているものが多い。」とのべている。


日本東洋医学会誌〉 第12巻第1号
 温清飲の臨床的研究 矢数道明先生 から
 万病回春には本方の主治として,「婦人経脉住らず,或は豆汁の如く,五色相雑え,面色萎黄,臍腹刺痛,寒熱往来,崩漏止まざるを治す。」としている。この主治をみると,子宮出血のほか,種々の色状の帯下があって,貧血,悪液質様の顔色を呈しているものに用いられている。しかしこれは子宮癌等悪性腫瘍によるもののみとは限らない。(中略)回春の説によると「崩漏(子宮出血)は新久或は虚実によって治療法は同じではない。初期実熱に属するものは黄連解毒湯でよいが,久しくなると虚熱に属するようになるから,そのときは血を養い温め,一方火を清しくすべきである。それには温清飲がよいのだ。」といっている。勿誤方函口訣には「此方は温と清と相合する所に妙があり,婦人漏下,或は帯下,或は男子の下血久しく止まざるものに用いて効験がある。小栗豊後の室は,下血の止まざること10余年に及び面色萎黄,腰痛折るが如く,両脚に微腫があって,衆医は手を束ねていたが,余は此方を与えて全く癒えた。」といっている。この例は子宮筋腫,あるいはポリープ,または出血性メトロパチーなどによる出血と考えられる。牛山方考の黄連解毒湯のところには「婦人崩挑の症,血下ること湧くが如く,身熱甚しく,口渇して譫語するもの,四物湯を合わせ,その煎汁にて棕櫚の灰を用いると奇効あり。」と述べてあり,また「婦人赤白帯下,頭面に熱瘡を生じたもの,四物湯を合せ,連翹,白芷,秦艽を加える。」と記載している。これは即ち温清飲加減のことである。(中略)
 (1)本方証の多くは慢性に経過したものか,あ音便f体質的に本方証のあるものが急性に症状を発したものであると思われる。
 (2)本方の適応する体質傾向として,皮膚が黒褐色を呈し,渋紙の如く枯燥しているものが多い。
 (3)皮膚病の場合は多くは丘疹性の湿疹で分泌物はなく,枯燥の傾向があり,瘙痒が甚しく,掻把によって出血痕を残しているものが多い。
 (4)粘膜の場合は潰瘍の出没を繰返している。
 (5)脉は一定しないが,それほど弱い方ではなく,腹証は多くは心下部及び肋骨弓下に抵抗のあるものが多く,柴胡証に似ているものである。或は臍傍臍下に瘀血と思われる抵抗や圧痛の認められることがある。皮膚色の普通のものも,枯燥のないものもある。興味あることは本方のよく適応するものは,この薬の苦味と香気を喜ぶものの多いことである。(後略)



【一般用漢方製剤承認基準】
〔成分・分量〕
 当帰3-4、地黄3-4、芍薬3-4、川芎3-4、黄連1-2、黄芩1.5-3、山梔子1.5-2、黄柏1-1.5

〔用法・用量〕
 湯

〔効能・効果〕
 体力中等度で、皮膚はかさかさして色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症: 月経不順、月経困難、血の道症注)、更年期障害、神経症、湿疹・皮膚炎


《備考》
 注)血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。
 【注)表記については、効能・効果欄に記載するのではなく、〈効能・効果に関連する注意〉として記載する。】

【添付文書等に記載すべき事項】
 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕


 相談すること 
 1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。 
(3)胃腸の弱い人。 


2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

関係部位症状
皮膚発疹・発赤、かゆみ


まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。



商 品 名 製造販売元
発売元又は販売元
一日 製剤量
(g)
添加物 剤形 効能又は 効果 用法及び用量 当帰(トウキ) 地黄(ジオウ) 芍薬(シャクヤク) 川芎(センキュウ) 黄連(オウレン) 黄芩(オウゴン) 山梔子(サンシシ) 黄柏(オウバク)
1 オースギ温清飲エキスG 大杉製薬 7.5 乳糖水和物、トウモロコ シデンプン、ステアリン 酸マグネシウム 顆粒 皮膚の色つやが悪く、のぼせるものに用いる:
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症
食前又は食間
2~3回
3.0 3.0 3.0 3.0 1.5 1.5 1.5 1.5
2 クラシエ温清飲エキス細粒 大峰堂薬品工業
クラシエ薬品
6.0 日局ステアリン酸マグネ シウム、日局軽質無水ケ イ酸、日局結晶セルロー ス、日局乳糖水和物、含 水二酸化ケイ素 細粒 皮膚の色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症:
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症
食前又は食間
2~3回
3.0 3.0 3.0 3.0 1.5 1.5 1.5 1.5
3 コタロー温清飲エキス細粒 小太郎漢方製薬 12.0 ステアリン酸マグネシウ ム、トウモロコシデンプ ン、乳糖水和物、プルラ ン、メタケイ酸アルミン 酸マグネシウム 細粒 皮膚の色つやが悪く、のぼせるものに用いる:
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症
食前又は食間
2~3回
4.0 4.0 3.0 3.0 1.5 3.0 2.0 1.5
4 ジュンコウ温清飲FCエキス細粒 医療用 康和薬通
大杉製薬
7.5 トウモロコシデンプン、 乳糖水和物 細粒 皮膚の色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症:
月経不順、月経困難症、血の道症、更年期障害、神経症
食前又は食間
2~3回
4.0 4.0 4.0 4.0 1.5 3.0 2.0 1.5
5 ツムラ温清飲エキス顆粒(医療用) ツムラ 7.5 日局ステアリン酸マグネ シウム、日局乳糖水和物 顆粒 皮膚の色つやが悪く、のぼせるものに用いる:
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症
食前又は食間
2~3回
3.0 3.0 3.0 3.0 1.5 1.5 1.5 1.5
6 テイコク温清飲エキス顆粒 帝國漢方製薬
日医工
9.0 乳糖水和物、結晶セル ロース、ステアリン酸マ グネシウム 顆粒 皮膚の色つやが悪く、のぼせるものに用いる:
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症
食前
3回
3.0 3.0 3.0 3.0 1.5 1.5 1.5 1.5
7 〔東洋〕温清飲エキス細粒 東洋薬行 6.0 トウモロコシデンプン 細粒 皮膚の色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症:
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症
空腹時
3回
3.0 3.0 3.0 3.0 1.5 1.5 1.5 1.5
8 本草 温清飲エキス顆粒-M 本草製薬 7.5 乳糖水和物、結晶セル ロース、メタケイ酸アル ミン酸マグネシウム、ス テアリン酸マグネシウム 顆粒 皮膚の色つやが悪く、のぼせるものに用いる:
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症
食前又は食間
3回
4.0 4.0 3.0 3.0 1.5 3.0 2.0 1.5

2013年1月12日土曜日

温経湯(うんけいとう) の 効能・効果 と 副作用

『漢方精撰百八方』

51.〔方名〕温経湯(うんけいとう)
〔出典〕金匱要略

〔処方〕呉茱萸、半夏、麦門冬各3.0g 川芎、芍薬、当帰、人参、桂枝、阿膠、牡丹皮、生姜、甘草各2.0g

〔目標〕
1.五十才ばかりの婦人で、子宮出血が数十日もやまず、日暮れになると熱が出て、下腹が引きつれ、腹が張り、掌がぽかぽかと熱っぽく唇が乾燥するもの。
2.冷え性の婦人で、下腹が冷たく、永い間妊娠しないもの、またこのような婦人で、子宮出血が多かったり、月経が多量に下ったり、また月経の不順があるもの。

〔かんどころ〕全体に皮膚ががさがさしている。殊に唇が乾き、掌も乾燥して熱っぽい。それでいて冷え性で月経異状がある。

〔応用〕更年期出血。指掌角皮症。上肢殊に手の甲、掌、指に限局する湿疹。月経困難症。不妊症。

〔治験例〕
 1.進行性指掌角皮症
  三十二才の主婦、三年前より掌が荒れ、殊に右側の掌は、指紋が消失し、がさがさに乾燥し、冬は殊に増悪する。某病院の皮膚科の治療を受けているが、治らないという。
  栄養、血色、普通。月経は正調、腹診上も、特に変化無く、ただ腹直筋が下腹でやや緊張しているだけである。口唇は乾燥する気味だという。
  そこで温経湯を与えたところ、十日目頃より効果が現れ、二ヶ月あまりで全治した。

2.不妊症。
  結婚後十四年になるも、妊娠しないという三十四才の婦人。栄養、血色ともに普通、ただ冷え性で、腰のあたりが殊に冷え、冷えると腰痛を訴える。月経は正調にくるし、困難症はないが、量が少ない。手の指と甲に湿疹があり、時々憎悪すると、かゆくなる。患部は乾燥して、がさがさしている。
  腹部は一体に緊張が強く、左右の下腹に圧痛がある。
  はじめ当帰芍薬散料を与える。服薬一カ年に及ぶも、何の変化もない。そこで桂枝茯苓丸料とする。これをのむと、気持ちが悪いという。そこで温経湯に転方。これをのみはじめると、湿疹が先ずよくなった。月経の量が多くなった。服薬三カ年にして妊娠、めでたくぶじ分娩。
大塚敬節


《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
3.温経湯(うんけいとう) 金匱要略

半夏4.0 当帰3.0 麦門冬4.0 川芎2.0 芍薬2.0 人参2.0 桂枝2.0 阿膠2.0 牡丹皮2.0 甘草2.0 乾生姜1.0 呉茱萸1.0 

(金匱要略)
○問曰,婦人年五十所,病下利,数十日不止,暮即発熱,少腹裏急,腹満,手掌煩熱,唇口乾燥,何也師曰,此病属帯下,何以故,曽経半産,瘀血在少腹不去,何以知之,其証口唇乾燥,故知之,当以本方主之(婦人雑病)

漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○婦人が下腹部が冷えて妊娠しないもの。子宮出血や月経不順,あるいは月経過多,もしくは月経寡少などがあって,下腹部がひきつれ痛み,腹部が膨満するもので手掌が煩熱し,口唇が乾燥するものというのが金匱要略にある正面の目標である。そのほか全身がかっとあつくなるもの,帯下が止まないもの,大便が快通しなかったり秘結するものがあり,帯下は血性のものも血液を混じないものもあると,纂方規範に記してある。
○唇口が乾燥し,手掌が煩熱し,上熱下寒で瘀血塊のないものは温経湯の症である。また塊りが少しぐらいあってもよいと,百疢一貫にある。
○上熱下寒というのは顔色が赤く,腰が冷えるのを感じて逆上(のぼせ)するような場合で月経不調のものだと丹波家方的にある。
○証治摘要に痩せてからだの虚弱な婦人が毎月月経過多で,下腹に力がなく,食が進まないものには,本方に黄連を加えるとよいとある。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 少陰病に属し,陰虚証のもので,婦人雑病門に掲げられている。気血の虚と寒冷が主目標で,手掌の煩熱(ほてり)と口唇の乾燥,下腹部の膨満感または不快感があり,その他月経不順,帯下,不定期出血,子宮出血,腰部の冷え,腹痛,下痢,のぼせ,嘔気,咳嗽等の症候のいずれかを参考目標とする。脈も腹も力のないものが多い。腹中には腫塊がないことが条件である。


漢方治療の実際〉 大塚 敬節先生
○瘀血の証で唇口が乾燥することがある。これは温経湯がよくきく。温経湯は,手の甲や掌の乾燥するものにきく,私は指掌角化症に好んでこの処方を用いるが,まことによくきく,唇や掌に限ったことではない。
 ○この方は金匱要略の婦人雑病門に次のように出ている。『問いて曰く,婦人,年50ばかり,下血(1本に下痢とあるが,今下血の方をとる)を病み,数十日止まず,暮には即ち発熱,小腹裏急,腹満,手掌煩熱,唇口乾燥するは何ぞや。師の曰く,此の病帯下に属す。何を以っての故ぞ,かって半産を経て瘀血小腹に在って去らず,何を以って之を知るや。其証唇口乾燥す。故に之を知る。当に温経湯を以って之を主るべし。』この条文によって,私は更年期の永びく子宮出血症にこの方を用いて,著効を得たことがあるが,更に,この方の方後に「婦人,小腹寒えて,久しく胎を受けざるを主る。兼ねて崩中去血或は月水来ること過多及び期に至って来らざるを治す。」とあるによって,この方を不妊症,月経不順などにも用いる。


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
 此方は胞門虚寒(子宮の機能が衰えて冷えている。)と言うが目的には,凡そ婦人血室虚血にして,月水不調,腰冷,腹痛,頭疼,下血,種々虚寒の候ある者に用ゆ。年50云々に拘るべからず,反て方後の主治に拠るべし。又下血の証,唇口乾燥,手掌煩熱,上熱下寒,腹塊なき者を適証として用ゆ。若し癥塊あり,快く血下らざる者は桂枝茯苓丸に宜し。其の又一等重き者を桃核承気湯とするなり。


古方薬嚢〉 荒木 性次先生
 「婦人で下腹が吊り,腹が張り,手足がほてって唇の燥き,あるいは裂る者,或は其れで下利幾日も止まない者,月経が不順であったり,無かったりする者,或は月経の量が多過ぎる者,或は冷え症のため長く妊娠しない者,冷え症にて頭痛し,月経不順の者に宜し。」




【一般用漢方製剤承認基準】

温経湯
〔成分・分量〕 半夏3-5、麦門冬3-10、当帰2-3、川芎2、芍薬2、人参2、桂皮2、阿膠2、牡丹皮2、甘草2、生姜1、呉茱萸1-3

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以下で、手足がほてり、唇がかわくものの次の諸症: 月経不順、月経困難、こしけ(おりもの)、更年期障害、不眠、神経症、湿疹・皮膚炎、足腰の冷え、しもやけ、手あれ(手の湿疹・皮膚炎)


【添付文書等に記載すべき事項】
 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕


 相談すること 
 1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。 
(3)胃腸の弱い人。 
(4)高齢者。 
  〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕 
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。 
(6)次の症状のある人。
      むくみ 
      〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕 
(7)次の診断を受けた人。
       高血圧、心臓病、腎臓病 
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること


関係部位症状
皮膚発疹・発赤、かゆみ

まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。

症状の名称症状
偽アルドステロン症、
ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。

〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

3.1ヵ月位(下腹部痛、下痢に服用する場合には5~6回)服用しても症状がよくならな
い場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談する
こと
4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕


〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
  〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す
ること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく
注意すること。
 〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
 〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ
服用させること。
 〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」を してはいけないこと に記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕

保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
  〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
  〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくて
もよい。〕





商品名製造販売元
発売元又は販売元
一日製剤量(g) 添加物 剤形 効能又は 効果 用法及び用量 半夏(ハンゲ) 麦門冬(バクモンドウ) 当帰(トウキ) 川芎(センキュウ) 芍薬(シャクヤク) 人参(ニンジン天: 桂皮(ケイヒ) 阿膠(アキョウ) ゼラチン 牡丹皮(ボタンピ) 甘草(カンゾウ) 生姜(ショウキョウ) 呉茱萸(ゴシュユ)
1 コタロー温経湯エキス細粒 小太郎漢方製薬 12.0 ステアリン酸マグネシウム、トウモロコシデンプ ン、乳糖水和物、プルラ ン、メタケイ酸アルミン 酸マグネシウム 細粒 冷え症で手掌がほてり、口唇が乾燥しやすいつぎの諸症に用いる。 指掌角皮症、更年期神経症、月経不順、月経過多、月経痛、頭痛、腰痛、帯下。 食前又は食間
2~3回
4.0 4.0 3.0 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 0.5 1.0
2 ツムラ温経湯エキス顆粒(医療用) ツムラ 7.5 日局ステアリン酸マグネ シウム、日局乳糖水和物 顆粒 手足がほてり、唇がかわくものの次の諸症: 月経不順、月経困難、こしけ、更年期障害、不眠、神経症、湿疹、足腰の冷え、しもやけ 食前又は食間
2~3回
4.0 4.0 3.0 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 1.0 1.0

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