健康情報: 排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう) の 効能・効果 と 副作用

2013年9月5日木曜日

排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方精撰百八方
32.〔方名〕排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)

〔出典〕「類聚方広義」(尾台榕堂)

〔処方〕大棗6.0 枳実3.0 芍薬3.0 桔梗3.0 甘草3.0 生姜3.0

〔目標〕急性化膿性炎症、患部は発赤、腫脹、堅硬で疼痛を伴い、可能の兆しのあるもの。胸腹つかえ膨満感、粘痰や膿血を吐いて急迫するもの。

〔かんどころ〕急性化膿炎症で病勢の強い時期に用いるが、托裏消毒飲と関連して区別を要す。虚証なら内托散がよい。急性実証で病勢強く全身症状のないものが本方の主治。

〔応用〕本方は古方の排膿散と排膿湯を吉益東洞が合方したもので、本方の方が原方よりすぐれている。それに排膿散は、排膿湯よりも初期に病勢を頓挫させる薬方とされているが、時期の判定に問題があるから合方の方が使い易い。原方を重んじて煎じてから適温になったところで生卵一個をよくほぐし、煎汁とともにのむとよい。フルンケル、カルブンケル、リンパ腺炎などの初期に用いる機会が多い。ただしヒョウソに応用する時は細心の注意を要す。また冷性膿瘍や化膿菌以外の大腸菌、結核菌などによる慢性のものには用いない。

〔治験〕三十四才の会社員、男性、平生から皮膚が弱く、カミソリまけから顔面の吹き出物が絶えない。今度は眼の下にフルンケルが出来てしまった。面疔はいのち取りと大いに驚いて病院に行ったところ、抗生物質(種類は不明)を注射されたが病勢は衰えない。腫脹と疼痛に悩んで五日目に投薬を請いに来た。実証肥満、どうやら望診では糖尿病でもあるらしく思えるが、本人は否定するし今まで検尿はしたことがないという。火急の場合であるから排膿散及湯エキス散を生卵にとかして白湯でのませた。三日後に自潰排膿したので伯州散を兼用し、十日ほどでいちおうはおさまった。その後強くすすめて人間ドックに入れたら、果たせるかな糖尿病があり、美食を好んで不摂生をしていることが判明。そこで厳に食養を守らせ、証により八味丸料(炮附子0.8g使用)に防風通聖散原末を兼用すること三ヶ月。糖尿は半減し体重が一キロ減った。そしてフルンクロージスも根治したが、糖が消失するまで連用する約束で丸剤に代えて一年間服用して根治した。その後四年経過するが健康である。
石原 明



《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集 中日漢方研究会
59.排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう) 吉益東洞
枳実3.0 芍薬3.0 桔梗4.0 生姜3.0 大棗3.0 甘草3.0

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
 患部が発赤腫張して疼痛を伴うか,または化膿しているもの。
 炎症症状の激しいフルンケル,カルブンケルの内服薬として,その劇的な効果から繁用され,知名度の高い処方である。患部が発赤腫張して灼熱様疼痛を伴うものには,消炎鎮痛作用を発揮して散らす効果があるし,また化膿の傾向があるか,あるいは化膿を形成しているものに対しては,排膿を促進せしめる。前記外科疾患に本方エキス散を応用する場合,主として急性症状が多いので,1日分6gを分三として3~4日頓用さしめ,以後は3~4gを分三して3~4日程度投与するといい。本方の特徴として,消炎,鎮痛,排膿作用は時間的にも効果からも,化学薬品のそれに比べて遜色のないことはもちろん化学薬品服用後によく見受けられる患部の急性症状はとれたが,触診上患部に固まりを認めることがほとんどないことと,また服用時間も何時間おきにと言った制限を受けないなどの利点がある。本方は以上のとおり速効効果をもっているが頓用または一般的な服用法によって,局部症状が緩則または好転後に,化膿しやすい体質者には十味敗毒湯を要用せしめるとよい。また顔面中央部にできた面疔で,化膿性髄膜炎を起こすおそれあるものは,本方に依存せず専門医にまわすほうがよい。癤腫症で頭重,発熱を伴うものは本方より葛根湯に桔梗石膏の加えて用い,虚弱な癤瘡症には小柴胡湯加桔梗石膏を応用する。



明解漢方処方 西岡一夫著 浪速社刊
排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)(吉益東洞家方)
 処方内容 桔梗四・〇 甘草 大棗 芍薬各三・〇 生姜 枳実各二・〇(一七・〇)

 必須目標 ①局所(腹部、大腿部が一番多い)に炎症を伴った化膿症 ②全身的な発熱悪寒なし ③白内的苦情(便秘、季肋部圧痛など)なし。

 確認目標 ①化膿性が急性のものである。

 初級メモ ①本方は卵黄一個を一緒に服することが排膿散の条文に指示されている。
 ②本方は処方名の通り,排膿散(枳実,桔梗,芍薬)に排膿湯(甘草,桔梗,生姜,大棗)を合方したものでその意図は,極めて初期の炎症に用いる排膿湯と,本格的炎症に用いる排膿散と,排膿後再び用いる排膿湯を合して急性炎症の全期を通じて一処方で治療を行おうとするものである。


 中級メモ  ①麻杏甘石湯証のように粘痰の排泄に苦しむ喘息患者に、同湯を与えて無効で本方に変えたところ軽快したことがある。その後、しばしば本方を用いるが,案外に本方証の喘息患者は多いのではないかと思う。多分、排膿袪痰作用のある桔梗白散の軽効に本方は効くであろう。
 ②本方は勿論,投網式便法の処方で,証さえ確定しておれば,排膿湯,排膿散とも各々単方の方が効果は優っているであろう。

 適応証 瘭疽。疔。淋巴腺炎。蓄膿症。喘息。乳腺炎。

 文献 「排膿散の証」 竜野一雄(漢方と漢薬10、12、1)




『重要処方解説(103)』
 排膿散及湯(ハイノウサンキュウトウ)・当帰建中湯トウキケンチュウトウ
   北里研究所附属東洋医学総合研究所診療部長 石野尚吾

■排膿散及湯・出典・構成生薬・薬能薬理
 最初に排膿散及湯(ハイノウサンキュウトウ)の解説をいたします。この方は『金匱要略』と排膿散と排膿湯を合わせたものです。その内容は枳実(キジツ),芍薬(シャクヤク),桔梗(キキョウ),甘使(カンゾウ),大棗(タイソウ),生姜(ショウキョウ)です。その薬用量は,『漢方処方集』(龍野一雄)によれば枳実,芍薬各5g,桔梗2g,甘草3g,大棗6g,乾生姜(カンショウキョウ)1gとなっており,『明解漢方処方』(西岡一夫)によれば,桔梗4g,甘草,大棗,芍薬3g,生姜,枳実各2gとあります。
 排膿散は『金匱要略』瘡癰腸癰浸淫病篇の薬方です。瘡癰腸癰とは,現在のフルンケル,カルブンケルなどの化膿性の疾患のことであり,浸淫病とは現在の何になるかよくわかりません。この処方は枳実,芍薬,鶏子黄(ケイシオウ)の4味です。枳実,芍薬,桔梗を細末として,卵黄1個とよく混ぜて白湯で飲みます。これは『金匱要略』では方のみ記載され,証がありません。
 排膿湯は甘草,桔梗,生姜,大棗からなり,排膿散の枳実,芍薬の代わりに大棗,甘草,生姜を配したものであります。腫れもののごく初期で,皮膚からあまり盛り上がっておらず,少し熱を帯びて赤競然工ている程度の時期に用います。局所が赤く腫れ上がって,圧痛のある場合には排膿散になります。大塚敬節は排膿湯と小柴胡湯(ショウサイコトウ),排膿散は四逆散(シギャクサン)に相当すると述べております。
 普通使われるのは排膿散で,排膿湯を投与する患者さんはわれわれのところにはあまり来ません。また大塚敬節は「排膿湯は排膿湯だけで単方で用い,排膿散を合方して用いない」と述べております。
 主要構成生薬の薬能としては,桔梗は去痰,排膿剤で,粘痰,膿腫に用います。
 甘草は緩和,緩解,鎮咳,去痰作用があり,特に筋肉の急激な疼痛,急迫症状を緩解します。
 大棗は緩和,鎮静,強壮,補血,利水の作用があり,筋肉の急迫,牽引痛,知覚過敏を緩和します。咳,煩躁,身体疼痛,腹痛をも治します。
 芍薬は収斂,緩和,鎮痙,胃痛作用があり,腹直筋を攣急するもの,腹満,腹痛,身体疼痛,下痢に用います。
 生姜は健胃,鎮吐剤で,嘔気,咳,吃逆,悪心,噯気に用います。
 枳実は芳香健胃剤,胸満,胸痛,腹満,咳痰に用い,胸痺,停痰,濃瘍を治します。

■古典・現代における用い方
 排膿散について吉益東洞(よしますとうどう)の『類聚方(るいじゅほう)』には「瘡家,胸腹拘満,或は粘痰を吐し,或は便膿血の者を治す。また瘡癰ありて胸腹拘満する者これを主る」とあり,さらに「この方は諸瘡癰を排脱(押し出す,打ちのめす)の効,最も速やかなり。その妙,桔梗と枳実を合わせたるところにあり」ということは,排膿作用のある桔梗に,枳実のしこりを取る働きを加味することが秘訣であるということでしょう。
 排膿散及湯としては『類聚方広義』排膿散の頭注に,「東洞先生,排膿湯と排膿散を合して排膿散及湯と名づけ,諸瘡癰を療す。方用は排膿散の項に詳かなり」とあります。また浅田宗伯の『勿誤薬室方函口訣』排膿散の項には,「この方を煎湯に活用するときは排膿湯と合方して宜し」とあります。
 以上を総合しますと,排膿散及湯の臨床上の使用目標は,急性または慢性の炎性に用い,炎症の初期から排膿後まで広く用いられます。すなわち排膿湯は炎症の初期で,皮膚表面からあまり盛り上がりがない時期に吸収を目的に用い,排膿散は皮膚表面から半球状に隆起して硬く腫脹する時期で,その名の示す通り,排膿を目的として用います。以上の合方ですから,いずれの時期でも使用は可能ということであります。
 応用としては,副鼻腔炎,中耳炎,乳腺炎,カルブンケル,フルンケルなどです。抗生物質の発達した今日では,急性の化膿症にはあまり用いないと思いますが,慢性副鼻腔炎,中耳炎などには用いられます。

 鑑別としては,千金内托散(センキンナイタクサン)は化膿性の慢性疾患があり,虚弱な人,また疲れやすい人に用います。十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)は神経質で胸脇苦満のある人の体質改善を目的に用います。伯州散(ハクシュウサン)は慢性に移行した時に用い,急性期にはあまり用いません。またこの用い方は頓用が主です。荊防敗毒散(ケイボウハイドクサン)は頭痛があることが多い,局所の発赤,腫脹,疼痛に用います。荊芥連翹湯は皮膚全体がドス黒い,腹直筋の緊張があり,青年期の体質改善を目的とします。この荊芥連翹湯は一貫堂のものであります。

■症例提示
 私自身の症例をご紹介します。30歳の男性,主訴は鼻閉および黄色の鼻汁,鼻の部分の不快感であります。体力,体格は中等度,身長はやや大きい方です。小児期より蓄膿症の診断を受けており,ここ数ヵ月間,主訴で耳鼻科を受診しておりましたが,あまり芳しくありませんでした。そこで私のところを訪れました。排膿散及湯をエキス剤で投与し,3ヵ月後には不快な症状がとれました。まだ膿汁様鼻汁は多少続いています。6ヵ月後には症状はほとんど取れました。私は耳鼻科ではありませんので,蓄膿症が治ったかどうかは不明ですが,症状は明らかに改善されました。



誌上漢方講座 症状と治療
 生薬の配剤から見た漢方処方解説(3) 村上光太郎
 4.桔梗について
 桔梗を民間薬として使用する場合は排膿、鎮痛、袪痰、解熱、強壮剤として咽喉痛、扁桃炎、気管支炎、肋膜炎、化膿症等に広く用いられている。しかし漢方では桔梗の薬効が他の生薬と組み合わせて用いることによって変化することを重視している。すなわち、桔梗の作用は患部に膿や分泌物が多いものを治すが、この桔梗を芍薬と共に用いれば患部が赤く腫れ、疼痛のあるものを治すようになる。
これを間違えて、桔梗を発赤、腫脹、疼痛のある人に用いたり、桔梗と芍薬を合わせて膿や分泌物の多い人に用いたりすれば、治すどころかかえって悪化する。
それでは患部に膿がたまって分泌物が出ている所もあるし、発赤、腫脹、疼痛のある部分もあって、どちらを使ったらよいかわからないような時にはどうしたらよいであろうか。このような時には桔梗に芍薬と薏苡仁を組み合わせて用いるか、桔梗に荊芥、連翹(荊芥あ識いは連翹だけでもよい)を組み合わせて用いるようにすればよいのである。
 これを実際の薬方にあてて見ると更に明瞭となる。すなわち排膿湯(桔梗、甘草、生姜、大棗)では桔梗に芍薬が組み合わされていないため、患部は緊張がなく、膿や分泌物が多く出ている場合に用いる薬方である。しかし排膿散(桔梗、芍薬、枳実、卵黄)では桔梗は芍薬と組み合わされているため、患部は赤く腫れ、疼痛のある場合に用いるようにかっている。ところで、この薬方に組み込まれている枳実のように、気うつを治す生薬(例、厚朴、蘇葉)を加えれば他の生薬の薬効を強くする作用がある。従って本方では桔梗と芍薬の組み合わせにこる腫脹、疼痛を治す作用は更に強くなっている。
 葛根湯の加減方は多くあるが、その中で桔梗の入った加減方を見ると、炎症によって患部に熱感のあるものに用いる葛根湯加桔梗石膏という薬方がある。この基本の薬方である葛根湯をわすれ、桔梗と石膏のみを見つめ、桔梗は温であるが、石膏は寒であるから逆の作用となり、組み合わせるのはおかしいと考えてはならない。なるほど桔梗と石膏は相反する作用をもったものであっても、桔梗と葛根湯の中に含まれている芍薬とを組み合わせたものと、石膏とは同じ作用となり、相加作用を目的に用いられている薬方であることがわかる。従って同じ加減方は桂枝湯にも適用され、桂枝湯加桔梗石膏として用いられるが、同じ表証に用いる薬方でも、麻黄湯に適用しようと思えば、麻黄湯加桔梗石膏ではなく、麻黄湯加芍薬桔梗石膏として考えなければならないことは今更言うに及ばないことであろう。
また患部に化膿があり膿汁も多く、また発赤、腫脹もある人に葛根湯を用い識場合は葛根湯加桔梗薏苡仁として与えなければならないことも理解できよう。桔梗と荊芥(連翹)の組み合わせの例には十味敗毒湯(柴胡、桜皮、桔梗、生姜、川芎、茯苓、独活、防風、甘草、荊芥)がある。本方は発赤、腫脹もあるが化膿もあり、分泌物が出ている人に用いる薬方である。
※村上光太郎先生は、排膿散及湯の効能は、基本的には、排濃散の効果、すなわち、桔梗と芍薬の組み合わせの効能になるとおっしゃっています。
『漢方薬の実際知識』の初版(昭和47年12月25日)には、排膿散及湯が記載されていましたが、増補版(昭和56年8月25日)からは、排膿散及湯は削除されました。
同様に、小柴胡湯に桔梗と石膏を加えた小柴胡湯加桔梗石膏についても、小柴胡湯(柴胡、半夏、生姜、黄芩、大棗、人参、甘草)には芍薬が含まれていないので、組み合わせとしてはおかしいとのことです。



漢方薬の実際知識 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
 第九章 生薬の配剤からみた薬方解説
 漢方治療は随證療法であることは既に述べたが、このことは言い方を変えれば、病人の現わしている「病人の證」と、生薬を組み合わせたときにできる「薬方の證」とを相対応させるということである。「病人の證」は四診によって得られた各種の情報を基に組み立てられ、どうすれば(何を与えれば)治るかを考えるのであるが、「薬方の證」は配剤された生薬によって、どのような症状を呈する人に与えればよいかが決定される。したがって「病人の證」と「薬方の證」は表裏の関係にある。「薬方の證」は一つの薬方では決まっており、「病人の證」は時とともに変化し、固定したものではない。
 しかし「病人の證」、「薬方の證」のいずれもが薬方名を冠しているため、あたかも證の変化がないように「病人の證」を固定化して考え、変化のない薬方の加減、合方などを極端に排除したり、あるいは反対に各薬味の相加作用のみによって薬方が成立していると考え、無責任な加減がなされるなど、間違ったことがよく行なわれている。本方の薬方解説は 第二章 2漢方薬が薬方を構成する理由 のところで明記したように、生薬の配剤を基に記しているが、配剤に関しての説明が不十分である。したがって薬方解説の各節の区分の理由を明確にし、加減方、合方などを行なうときの参考となれるように記した。
 二種以上の生薬を組み合わせて使用したときに起こる現象は相加作用、相殺作用、相乗作用、方向変換などで言い表されることは既に述べたが、一般の薬方のように多種類の生薬が配剤された場合においてはさらに複雑で、桂枝、麻黄、半夏、桔梗、茯苓、附子などのように個々の生薬の相互作用で理解できるものと、柴胡、黄連・黄芩、芍薬などのようにその生薬の有無、量の多少によって薬方の主證あるいは主證の一部が決定するものとがある。したがってある薬方の薬能を考えたり、薬方を合方して使用する場合にはそれらのことを注意して考えなければならない。

 1 生薬の相互作用で理解できるもの
 5 桔梗について
 桔梗は単独で用いれば膿や分泌物のあるときに使用し、膿や分泌物を除く作用がある。これに芍薬が組み合わされると作用は一変して、発赤、腫脹、疼痛に効くようになるが、誤って膿や分泌のあるときに使用すればかえって悪化する。しかし桔梗に芍薬と薏苡仁を加えれば発赤腫脹の部分があり、しかも分泌物が多く出ている部分もある場合に効くようになる。桔梗に荊芥・連翹を加えても同様の効果がある。
 たとえば排膿湯(桔梗、甘草、生姜、大棗)は桔梗単独の作用、すなわち患部に膿や分泌物のあ識ときに用いるが、排膿散(桔梗、芍薬、枳実、卵黄)となれば、桔梗と芍薬の組合せとなり、発赤、腫脹、疼痛のあるものに用いるようになる。誤って使用しやすい例に葛根湯の加減方がある。すなわち葛根湯加桔梗石膏の桔梗と石膏はあたかも相反した、寒に用いる桔梗と、熱に用いる石膏が組み合わされているように見えるが、桔梗は葛根湯の中に含まれている芍薬と組み合わされたものであり、石膏との相加作用を目的に作られたものである。したがって本方は上焦の部位に発赤、腫脹、疼痛のあるときに用いられる。もし炎症もあるが膿もたくさん出るというようになれば前記の組合わせにしたがって、葛根湯加桔梗薏苡仁にしなければならない。
 これらの加減は同じ表証の薬方中では、梗枝湯には代用できるが、麻黄湯には芍薬とともに考えなければならないことは、いまさら言うに及ばないことであろう。この桔梗の組合せは種々の薬方に応用されるため、一つの系列としてはとりえない。

 ※唐辛子(とうがらし)は、桔梗の作用を無くす。(韓国理料)


【効能又は効果】
 患部が発赤、腫脹して 痛をともなった化膿症、瘍、 、面疔、その他 腫症
 [参考]  使用目標:体力中等度前後の人の化膿性皮膚疾患及び歯槽膿漏、歯齦炎などに用いる

【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
1.アルドステロン症の患者
2.ミオパシーのある患者
3.低カリウム血症のある患者
[理由]  厚生省薬務局長より通知された昭和53年2月13日付薬発158号「グリチルリチン酸等を含 有する医薬品の取り扱いについて」に基づき記載。

【副作用】 発現頻度不明
(1) 重大な副作用と初期症状
(1) 偽アルドステロン症:
 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、 体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等)を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと 。

(2) ミオパシー:
 低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、 観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中 止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと 。

[理由]  厚生省薬務局長より通知された昭和53年2月13日付薬発第158号「グリチルリチン酸等を含 有する医薬品の取り扱いについて」に基づく。

[処置方法]  原則的には投与中止により改善するが、血清カリウム値のほか血中アルドステロン・レニ ン活性等の検査を行い、偽アルドステロン症と判定された場合は、症状の種類や程度によ り適切な治療を行うこと 。  低カリウム血症に対しては、カリウム剤の補給等により電解質バランスの適正化を行う。