健康情報: 桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう) の 効能・効果 と 副作用

2014年7月7日月曜日

桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
桂枝加附子湯
本方は桂枝湯の證で発汗過度より自汗漏出し、悪寒を覚え、尿快通せず、四肢の屈伸に少しく強ばる感のある者を治する。本方に朮を加えて桂枝加朮附湯と名づけ、脳出血後の半身不随・関節炎・関節リウマチ・神経痛等に用いられる。



 漢方精撰百八方 
66.〔方名〕桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)

〔出典〕傷寒論

〔処方〕桂枝、芍薬、大棗、生姜各4.0 甘草2.0 白朮4.0 附子0.5~1.0

〔目標〕自覚的 発汗傾向があって、悪寒し、尿利がしぶり、手足の関節が痛み、或いはその運動が不自由。
他覚的
 脈 浮弱または浮にして軟。
 舌 乾湿中等度の微白苔又は苔なし。
 腹 腹力は中等度以下。

〔かんどころ〕さむけし、汗ばみ、小便しぶり、節々痛んで、手足が不自由。

〔応用〕1.関節リウマチ又は神経痛
2.脳出血後の半身不随
3.関節炎
4.痛風

〔治験〕先哲は本方を脳出血後の半身不随に多用して、よい治験を数多く報告している。確かに本方は脳出血後の半身不随には奏効する場合が多い。しかし陽実証のそれには応ずることが少なく、それには続命湯の応ずる場合が多いように思う。
  私は本方を陽虚証の関節リウマチ或いは神経痛に実に屡々用いる。
  どちらかというと、関節リウマチには桂枝二越婢一加朮附湯、神経痛には本方という傾向がなきにしも非ずではあるが、一概にそうもいえず、かえってとらわれてはいけないようである。
  悪寒とか、発汗傾向とか、尿不利とかは、必ずしも揃って出てくるとは限らないから、全体的に陽虚証で、身体のどこかに疼痛又は運動障害のある場合には、一応本方を試みてみるべきであろう。
  動悸や、尿不利の傾向が更に加わり、又は強まっている時は、茯苓4.0を加えて、桂枝加苓朮附湯として用いるが、このようにして用いる場合の方がむしろ普通である。
  神経痛やリウマチには、あまりに日常多用しすぎて、例を選ぶのにかえって困惑するくらいなので、症例を挙げるのは省略する。                                    
藤平 健



漢方薬の実際知識 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
4 表証
表裏・内外・上中下の項でのべたように、表の部位に表われる症状を表証という。表証では 発熱、悪寒、発汗、無汗、頭痛、身疼痛、項背強痛など の症状を呈する。実証では自然には汗が出ないが、虚証では自然に汗が出ている。したがって、実証には葛根湯(かっこんとう)・麻黄湯(まおうとう)などの 発汗剤を、虚証には桂枝湯(けいしとう)などの止汗剤・解肌剤を用いて、表の変調をととのえる。

(7) 桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)  (本朝経験)
〔桂枝加附子湯に朮四を加えたもの。〕
桂枝加附子湯證に、水毒をかねたもので、水毒症状の著明なものに用いられる。したがって、関節の腫痛や尿利減少などを呈する。本方は、貧血、頭痛、気上衝、脱汗、口渇、四肢の麻痺感(屈伸困難)・冷感などを目標とする。


臨床応用 漢方處方解説 矢数道明著 創元社刊
p.140
(6)桂枝加附子湯
 桂枝湯の証で発汗過度、自汗漏出し、悪寒を覚え、尿快通せず、四肢の屈伸にこわばる感のある者を治す。
感冒で悪寒、発汗止まらぬもの・産後の脱汗・半身不随・小児麻痺・筋痙攣・神経痛・リウマチ・手足冷え等に応用される。

p.141
(7)桂枝加朮附湯
 さらに朮を加えたもので、脳出血後の半身不随・関節炎:関節リウマチ・神経痛等に用いる。



明解漢方処方 西岡 一夫著 ナニワ社刊
p.62
桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう) (吉益家方)

 処方内容 桂枝湯に朮四、〇 附子一、〇を加える。

 必須目標 ①四肢麻痺感(知覚障害) ②四肢屈伸困難(運動麻痺) ③手足先が冷える ④寒がり症で、すぐに鳥肌になる(陰証型の悪寒) ⑤舌湿潤し、芒刺のないことが多い ⑥脉に力がない ⑦食慾は平常時と変らない。

 確認目標 ①四肢関節腫張 ②口渇 ③貧血 ④頭痛 ⑤自然発汗(脱汗) ⑥尿量減少(汗が出すぎた場合、体液少なくなって尿量が減る) ⑦肩こり ⑧右直腹筋拘攣

 初級メモ ①本方は傷寒論の桂枝加附子湯に吉益東洞が“朮”を加えたもので、(朮は組織間の水を調節する作用がある)神経痛、リウマチに繁用されるが、本方の一番適応する証は手足関節の運動麻痺、知覚麻痺が主で、疼痛は比袋的軽度のものを目標にする。
 ②もし疼痛甚しいときは類方の桂枝附子湯か甘草附子湯、または当帰剤(甘草附子湯の項参照)を考える。
 ③よく似た処方に芍薬甘草附子湯があるが、この方は脚の屈伸困難が主で手に苦情なく、また疼痛のないことで区別する。

 中級メモ ①原方の桂枝加附子湯にある“小便難”とは、津液の欠乏(この場合は発汗多いため)によって小便少なくなっていることを示しており、“小便不利”とは毒に邪魔されて当然出るべき小便が体内に滞り、水症を起す場合を指す。加朮附湯はむしろ小便不利である。
 ②華岡青洲等は附子の代りに烏頭を用い、宿疾の治療を行っている。
 ③東洞「本方は上衝し、身体骨節疼痛、小便不利の者を治す」東洞は梅毒患者の神経痛に用いている。
 適応証 リウマチ様関節炎。小児麻痺、不身不随、梅毒

 類方 ①桂枝加苓朮附湯(東洞家方)
 前方に茯苓四、〇を加えた処方で前方の症に動悸と尿量減少がはなはだしくなったときに用いる。この処方内容は苓桂朮甘湯真武湯甘草附子湯などを含んでおり、慢性リウマチで動悸、目眩、身ふるえる場合に用いる他、梅毒の眼病、筋肉痙攣にも応用する。
 ②桂枝附子湯(傷寒論)
 桂枝四、〇大棗三、〇甘草二、〇生姜一、五附子一、〇(一一、五)即ち原方より芍薬を去った処方で身体疼痛し寝返りすることが出来ず、嘔吐も口渇もない(即ち裏位に苦情がない)ものに用いる。桂枝加朮附湯より一層重症のリウマチが目標である。




『新版 漢方医学』 財団法人 日本漢方医学研究所
p.242

桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう) 

桂枝・芍薬・大棗・生姜(乾1.0)・蒼朮、各4.0、甘草2.0、附子1.0


1.原典の指示
原典〕 『方機』吉益東洞
〔本文〕

 湿家(しっか)、骨節疼痛(こっせつとうつう)する者、或は半身不逐(はんしんふずい)、口眼喎斜(こうがんかしゃ)する者、或は頭疼(いた)み重き者、或は身体麻痺する者、或は頭痛劇き者、桂枝加朮附湯之を主る。
(集成12巻、p.456)

〔解説〕
 『傷寒論』の太陽病篇にある桂枝加附子湯に朮を加味したもの。水毒体質のものが関節炎を患ったり、半身不随になったり、顔面神経麻痺になったりした場合などに、吉益東洞(よしますとうどう)は好んで処方した。実際には、さらに大黄剤や水銀剤、甘逐(かんずい)剤、巴豆(はず)剤のような極めて激しい丸散剤も併用されたが、湯本求真(ゆもときゅうしん)や大塚敬節は、不要であると述べている。

2.臨床上の使用目標
 冷え性で,比較的体力のないものの,手足の痛みやシビレ。
 腹証:胃内停水のあることが多い。

3.応用
(1)慢性関節リウマチを含む関節痛疾患
(2)神経痛
(3)腰痛症

4.古典
○浅田宗伯勿誤薬室方函口訣
 「此の方(桂枝加附子湯)に朮を加えて風湿,或流注梅毒の骨節疼痛を治す」

5.症例
 47歳の女性。数年来の肩の痛みで、俗にいう五十肩。アチコチの医院で、鎮痛消炎剤をもらったが、胃をこわしてしまって続けられない。血色もよくない。痩せぎすの、見るからに虚証。もちろん、冷え性。迷わず桂枝加朮附湯を処方。2週間後、今まで色々なお薬を飲んだが、今度の薬はおなかにも障らず一番飲みやすく、痛みも少し薄らいできて自分のからだにピッタリ合っている感じがする、と言う。冷えがとても強いため、さらに加工附子末を加え、結局8ヵ月服用し、痛みも運動制限も消失し、治癒。
(著者治験例)

6.鑑別
(1)関節痛疾患に対して
  ①桂枝二越婢一湯:やや実証
  ②桂枝二越婢一湯加朮附:やや実証で陰証のもの。
  ③薏苡仁湯:比袋的体力のあるもの
  ④越婢加朮湯:実証で、関節の炎症所見もかなり活動的なもの
  ⑤防已黄耆湯:水毒体質が明らか
  ⑥桂枝芍薬知母湯:かなり虚症になったもの
  ⑦大防風湯:気・血とも虚したもの、慢性関節リウマチの末期

(2)神経痛に対して
  ①葛根湯:脈に力があり、筋肉の緊張のよいもの
  ②五苓散:口渇と尿量減少
  ③八味地黄丸:主に老人で腰から下に力がないもの
  ④五積散:下半身が冷え上半身がほてる(上熱下寒)と訴えるもの
(関)



『健保適用エキス剤による 漢方診療ハンドブック 第3版』
桑木 崇秀 創元社刊


桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
方剤構成
 桂枝 芍薬 生姜 大棗 甘草 蒼朮 附子

方剤構成の意味
 桂枝湯に蒼朮と附子を加えたものである。桂枝湯は汗の出やすい,顔色のあまりよくない,いわゆる虚証者の軽い発散剤であるが,これに燥性で発散性の蒼朮と附子を加えたものが本方剤である。
 附子は石膏が寒性薬の代表であるのと対照的に,熱性薬の代表であり,これの入った方剤は必ず寒証者向きと考えてよい。蒼朮も温性で,本方剤は桂枝湯よりも一層はっきりと寒証者向きであることがわかる。もう一つ桂枝湯と異なる点は,湿証者向きだということで,方剤は全体として寒虚証である場合に,これを発散させる方剤だと言うことができる。

適応
 冷え症で体力のない人、汗の出やすい人のリウマチや神経痛に用いる。リウマチは関節に水がたまりやすく、原則として湿証である。
 芍薬が入っており、かつ附子によ鎮痛作用があるので,鎮痛効果が期待される。


 本方剤に茯苓を加えたものを桂枝加苓朮附湯けいしかりょうじゅつぶとう)と言い、ほぼ本方剤と同様に用いられる。茯苓には湿を除く作用とともに鎮静作用もあり、桂枝加朮附湯よりさらにそれらの作用が強化されたと考えればよい。


『健康保険が使える 漢方薬 処方と使い方』
木下繁太朗 新星出版社刊

桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
  (桂枝加苓)
 ツ、三、J、松、東、コ、タ、カ
吉益東洞(よしますとうどう)

どんな人につかうか
 冷え症で、手足の関節や筋肉が腫(は)れて痛み、屈(ま)げ伸(のば)しが不自由(運動障害)で、冷えると増悪し、麻痺感があり、尿量が少なく、あまり体力のない人に用い、関節痛や筋肉痛に広く応用します。

目標となる症状
 ①手足の関節痛。②筋肉痛。③手や足先が冷える。④四肢(しし)の麻痺感(まひかん)。⑤寒がりですぐ鳥肌(とりはだ)がたつ。⑥手足の運動障害。⑦微熱。⑧盗汗(ねあせ)、自然発汗。⑨朝手がこわばる。⑩寒いとひどくなる。⑪尿量減少。⑫手足の関節の腫張(しゅちょう)。⑬頭痛、肩こり。⑭貧血。⑮比較的に体力が低下。

 腹壁が軟弱で、腹直筋(特に右)が緊張し、みぞおちに振水音(たたくとピチャピチャ音がする)。

 浮いていて大きいが力がない。
 
 湿潤(しつじゅん)してつるつるしている。


どんな病気に効くか(適応症) 
 冷え症で痛み、四肢(しし)の麻痺感(まひかん)があるもの、あるいは屈伸(くっしん)困難なものの、関節痛神経痛関節炎リウマチ。急性及び慢性関節炎、関節リウマチ、偏頭痛(へんづつう)、半身不随(ふずい)、小児麻痺、脊椎(せきつい)カリエス、脊椎脊髄腫瘍(せきついせきずいしゅよう)、腰痛症、座骨神経痛、肩関節周囲炎、変形性関節症、感冒、インフルエンザ、頚肩腕(けいけんわん)症候群。

この薬の処方
 桂枝(けいし)、大棗(たいそう)、芍薬(しゃくやく)、蒼朮(そうじゅつ)各4.0g。甘草(かんぞう)2.0g。生姜1.0g。附子0.5g。
 (桂枝加苓朮附湯けいしかりょうじゅつぶとう)…桂枝(けいし)、大棗(たいそう)、芍薬(しゃくやく)、茯苓(ぶくりょう)、白朮(びゃくじゅつ)各4.0g。甘草(かんぞう)2.0g。生姜1.0g。附子0.5g)。

この薬の使い方
前記の処方を一日分として煎(せん)じてのむ。
ツムラ桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)エキス顆粒(かりゅう)、成人一日7.5gを2~3回に分け食前又は食間にのむ。
コタロー(一日9.0g)、カネボウ桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)エキス細粒(さいりゅう)(一日7.5g、18錠)など前記に準じる。

使い方のポイント・処方の解説
本方は桂枝湯(けいしとう)に(72頁)に朮(じゅつ)(茯苓(ぶくりょう))附子(45頁)を加えたもの、もとは傷寒論の桂枝加附子湯(けいしかぶしとう)で、吉益東洞が、これに朮(じゅつ)(茯苓(ぶくりょう))を加えたつくった処方です。
桂枝加苓朮附湯けいしかりょうじゅつぶとう)は桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)より浮腫(ふしゅ)のはっきりしている人に用いますが、ほぼ同じように使えます。
③附子(ぶし)朮(じゅつ)は冷(ひ)えや湿気(しっけ)に版るしびれや痛み、関節の腫(は)れを改善する効果があります。附子(ぶし)には新陳代謝を促進し、強心作用もありますので、本方は脳卒中後の運動障害にも使えます。
④医宗金鑑に朮附湯(じゅつぶとう)(蒼朮(そうじゅつ)又は白朮(びゃくじゅつ)4.0g、附子(ぶし)1.0g)という処方があります。冷えと湿気で、手足、身体の痛みしびれなどのおきる時、下痢や腹痛をおこす時などに用います。
⑤「桂枝湯は衆方(しゅうほう)の嚆矢(こうし)」ということ
 桂枝加朮附湯の成り立ちからわかるように、桂枝湯(72頁)がもとの処方で、これに附子が加わって桂枝加附子湯になり、さらにこれに朮を加えて桂枝加朮附湯ができます。
 江戸後期の漢方医・尾台榕堂(おだいようどう)は、その著・類聚方広義(るいじゅうほうこうぎ)の中で、「桂枝湯は蓋(けだ)し経方(けいほう)の権輿(けんよ)(物の始め)なり。……亦(また)桂枝湯を以て衆方の嚆矢(物の始め)と為(な)す……」とのべています。
 本書にとりあげただけでも、
 桂枝加朮附湯、桂枝加苓朮附湯桂枝加芍薬湯(67頁)、桂枝加芍薬大黄湯(66頁)、桂枝加竜骨牡蛎湯(70頁)、桂枝芍薬知母湯(71頁)、桂枝加黄耆湯(63頁)、桂枝加葛根湯(64頁)、桂枝加厚朴杏仁湯(65頁)
があります。
 また桂麻各半湯(78頁)も桂枝湯麻黄湯(200頁)をおのおの半量ずつ合方したもので、麻黄湯だけでは強すぎるものに桂枝湯を合わせて、体力のない人でも使えるようにしたものです。
 また、桂枝湯の処方のうち、芍薬を4g~6gにふやしたものが桂枝加芍薬湯で、これで風邪や頭痛などに効いた桂枝湯が、がらりと変わって、腹が張ってお腹が痛み、しぶり腹になったりする人に効くようになり、現在、過敏性腸症候群などに盛に応用します。
 桂枝加芍薬湯に膠飴(こめあめ)を加えると小建中湯(123頁)になり、桂枝加芍薬湯に当帰を加えると、当帰建中湯(166頁)になります。


《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集中日漢方研究会

17.桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)  吉益東洞

桂枝4.0 芍薬4.0 大棗4.0 生姜4.0(1.0) 蒼朮4.0 甘草2.0 附子1.0

(方機)
○湿家骨節疼痛スル者,或は半身不逐口眼喎斜スル者,或ハ頭疼重ノ者,或ハ身体麻痺スル者、或ハ頭痛劇キ者桂枝加朮附湯之ヲ主ル。
○湿家眼目明ナラザル者,或ハ耳聾或ハ肉瞤筋惕する者桂枝加苓朮附湯之ヲ主ル。

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
 冷えて痛み,麻痺感のあるもの。あるいは屈伸困難のもの。本方は神経痛,リウマチで患部がしびれているもの,あるいは四肢の運動が不能または極めて困難な症状に適するが,通常尿量減少し,排尿回数が多くなり,四肢の冷感を伴う。もし麻痺感がなく,あるいは日常の行動に左程不自由を感じない時は麻杏薏甘湯が適当である。また本方適応症状に似て,咽喉がかわき,夜間排尿回数が多いものには八味丸を用いる場合が多い。本方は急性症状に適せず,また筋骨体質で体力旺盛な時期には投与してはならない。本方を服用後,運動麻痺あるいは浮腫,口渇などの症状が現われた場合は直ちに中止し,苓桂朮甘湯または五苓散で治療すればよい。

漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
 本方は神経痛,関節痛,リウマチなどの繁用されているが,冷えが著しゆ身体痛と麻痺感あるものに適応する。本方が適応するものは一般的に,身体が虚弱な冷え症であり,反対に体力があって平素身体冷感はないが,気温の低下や温度が高くなるなどの気候条件によって痛むものには,本方よりも麻杏薏甘湯が適する。冷え症で痛み麻痺感を訴えるものに八味丸も用いるが,八味丸の痛みは主として坐骨神経痛や下肢神経に多く,口渇や倦怠感があり,あるいは脚部の熱感などを自覚する点で本方と鑑別することができる。本方は前述のとおり,虚弱体質の冷え症に用いるが,のぼせの傾向があってときには頭痛や顔面紅潮などの症状を訴えることもある。本方が適応する半身不随は脳血出直後よりも,出血後の慢性に経過する運動障害に効果がある。ただし,この疾患の性格上かなり長期にわたる連用が要求される。本方は冷え症で,排尿量が少なく排尿回数の多い関節痛に適するが,関節炎,関節リウマチのほかに,痛風性関節炎の痛みや腫れに,奇効を奏することができる。腕がうしろに回らない。上にあげると痛い,帯が結べないと訴える40腕,50肩で目標欄記載のものに用いると著効がある。体力が充実しているものや,脂肪過多症の50肩には本方は禁忌で,防風通聖散が適する。ただし,この種のものの急性症状には防風通聖散よりも葛根湯を用いるほうが効果的である。本方の服用により,浮腫,のぼせ,麻痺感などが起こる場合は五苓散料を併用すればよい。



漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
 発汗ぎみで悪寒し,尿利がしぶって出にくく,あるいは尿意頻数があり,四肢の関節が痛んだり,腫れたりし,四肢の運動が不自由なもの。脈は浮のことも沈のこともあるが,力が弱く,腹部の緊張もよくない。


漢方入門講座〉 竜野 一雄先生

 桂枝加附子湯に朮を加えたもので,表虚に加るに組織の水分代謝障害を朮と附子とが協同して治すと考えられる。此処方は古方家が好んで使うもので処方の組成も巧みだし,効果もある。頻用というよりは寧ろ濫用されている位に使われる。
 運用 1.運動麻痺,知覚障害 
 運動麻痺だけ,或は知覚障害だけ,或は両者を兼ねたもの,そのいずれの場合にも用いられる。運動麻痺は弛緩性麻痺に使うことの方が多い。知覚障害は知覚純麻,喪失,疼痛でもよい。但し痒み,蟻走感などの異常感に使った経験は私にはない。疼痛は神経痛,筋痛,関節痛のどれでもよい。虚証ではあるが,表虚だけだから全身的に見ては体質の虚実は敢えて問わないが,ただ麻痺以外にこれぞという症状がないことを要する。若しあれば別の処方になる。表虚というのは直接には脉と麻痺とで判断する外はなく,脉は概して弱,沈弱,細,時には弦細などのこともあり,若し熱があるなら浮細,浮弱,沈遅などを呈する。要するに虚脉である。注意して観察するすると小便不利を伴うことがあるが,心在ではない。以上の症状によって本方を使う場合は脳出血後の半身不随,小児麻痺,脊椎カリエス等に伴う疼痛や麻痺,末梢神経の麻痺,神経痛,筋痛,リュウマチ,関節炎,40肩,40腕,その他麻痺を生ずる各種の中枢神経疾患等である。

 運用 2.虚の潰瘍,蓄膿
 普通の潰瘍,下腿潰瘍,中耳炎,副鼻腔蓄膿症,痔漏などで薄い膿や分泌物が比較的多く出て肉芽が不良でなかなか肉が上って来ず,荏苒として愈え難きものに使う。この場合桂枝加黄耆湯真武湯,附子湯などとの鑑別は非常に難かしい。桂枝加黄耆湯は脉浮弱で膿性が著しいときには区別がつく。真武湯は胃内停水症でもあると区別が出来る。附子湯は痛みがつよく,膿性でないときに区別し得る。しかし実際に当ってみるとどうしても区別がつき難いこともある。その時は已むを得ぬから先ず本方を使って反応を見た上,若し効かなければ改めて考え直すようにする。

 運用 3.類方
 桂枝加苓朮附湯 桂枝加朮附湯に茯苓4.0を加えたもので,心悸,目眩,身瞤動するものに古方家は好んで使ったが,私はあまり使った経験がない。こういう時私は茯苓甘草湯又は真武湯を選んで使いたい。(後略)

<桂枝二越婢一湯>
      漢方精選百八方より 伊藤清夫先生
 本方は感冒等に用いるよりは,朮附を加えて神経痛や関節リウマチに適用することが多い薬方である。桂枝二越婢一湯加朮附を関節リウマチに用いる目標は,時に発熱があり,寒気があることもあるが,腫瘍の部だけ熱感があって,他に熱を感じないものもある。とにかく時々発熱することが一つの目標になる。腫瘍があって熱感がない時は,奏効しにくいように思う。身体が重だるい,引きつれて痛むが,腫れて痛みがあって全身が重だるい場合が奏効しやすいように考える。熱感もなく,腫痛,疼重感のない神経痛にはむかないように思う。渇はあった方がよいが,必ずしもあるとは限らない。加薏苡仁にして更によいことがある。

※荏苒:なすことのないまま歳月が過ぎるさま。また、物事が延び延びになるさま。




副作用
1)重大な副作用と初期症
1) 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等) を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。
2) ミオパチー: 低カリウム血症の結果としてミオパチーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。
[理由]
厚生省薬務局長より通知された昭和53年2月13日付薬発第158号「グリチルリチン酸等を含 有する医薬品の取り扱いについて」に基づく。

[処置方法]
原則的には投与中止により改善するが、血清カリウム値のほか血中アルドステロン・レニ ン活性等の検査を行い、偽アルドステロン症と判定された場合は、症状の種類や程度によ り適切な治療を行うこと。低カリウム血症に対しては、カリウム剤の補給等により電解質バランスの適正化を行う。

2) その他の副作
過敏症:発疹、発赤、瘙痒等
このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。
[理由]
本剤には桂皮(ケイヒ)が含まれているため、発疹、発赤、瘙痒等の過敏症状があらわれるおそれがある。また、また、本剤によると思われる過敏症状が文献・学会で報告されているため。

[処置方法]
原則的には投与中止により改善するが、必要に応じて抗ヒスタミン剤・ステロイド剤投与等の適切な処置を行うこと。

その他:心悸亢進、のぼせ、舌のしびれ、悪心等
[理由]
本剤には附子(ブシ)が含まれているため、心悸亢進、のぼせ、舌のしびれ、悪心等があらわれ るおそれがあるため。

[処置方法]
原則的には投与中止により改善するが、病態に応じて適切な処置を行うこと。