健康情報: 桂麻各半湯(けいまかくはんと)(桂枝麻黄各半湯(けいしまおうかくはんとう)) の 効能・効果 と 副作用

2014年9月17日水曜日

桂麻各半湯(けいまかくはんと)(桂枝麻黄各半湯(けいしまおうかくはんとう)) の 効能・効果 と 副作用

漢方薬の実際知識 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
4 表証
表裏・内外・上中下の項でのべたように、表の部位に表われる症状を表証という。表証では発熱、悪寒、発汗、無汗、頭痛、身疼痛、項背強痛など の症状を呈する。実証では自然には汗が出ないが、虚証では自然に汗が出ている。したがって、実証には葛根湯(かっこんとう)麻黄湯(まおうとう)などの 発汗剤を、虚証には桂枝湯(けいしとう)などの止汗剤・解肌剤を用いて、表の変調をととのえる。

6 桂枝麻黄各半湯(けいしまおうかくはんとう)  (傷寒論)
〔桂枝湯と麻黄湯の合方〕
表証である悪感、発熱、頭痛があり、汗が出ないが体力は弱く、虚実の中間のものに用いられる。汗が出ないために、皮膚がかゆく感じられるものを目標とすることもある。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、桂枝麻黄各半湯證を呈するものが多い。
一 感冒、気管支炎その他の呼吸器系疾患。
一 皮膚瘙痒症、じん麻疹、湿疹その他の皮膚疾患。



明解漢方処方 西岡 一夫著 ナニワ社刊 
p.67
桂麻各半湯(けいまかくはんとう) (傷寒論)

処方内容 桂枝二・〇 芍薬 生姜 甘草 麻黄 杏仁 大棗各一・〇(八・〇)

必須目標 ①蕁麻疹(顔面、手足などの露出部分に発生し、砂のような小さな赤い斑点で痒みが劇しい) ②顔面紅潮 ③脉浮 

確認目標 ①腹部には発生しない ②大小便に異常がない ③食中毒によるものでない。

初級メモ ①汗腺の機能障害を治す薬で、寒冷蕁麻疹に繁用する。
②桂枝湯は自汗あり。麻黄湯は無汗で、その両者を合したので甚だ方意に苦しむ。現に吉益南涯は後人の攙入として傷寒論より削除している程である。がこれは条文によれば表熱病を誤治して壊証となり、汗腺の機能障害を起こしている場合の薬で実証の発汗剤である。

中級メモ ①傷寒論の本方の条文は錯乱している、これを復原されたのは荒木正胤氏で「身必痒」は桂枝二越婢一湯(大青竜湯より芍薬を去る)の条文に移すべし、という(漢方と漢薬一一巻七号)。

適応証 寒冷蕁麻疹。乾性皮膚病。



和漢薬方意辞典 中村謙介著 緑書房
桂枝麻黄各半湯(けいしまおうかくはんとう) [傷寒論]

【方意】 表の寒証による頭痛・悪寒・発熱・欬嗽等と、熱証による熱感・顔面紅潮等のあるもの。
《太陽病.虚実中間証》


【自他覚症状の病態分類】

表の寒証 熱証

主証 ◎頭痛
◎悪寒 ◎発熱
◎欬嗽
◎熱感
◎顔面紅潮


客証  咽痛
 項背痛
 身疼痛
 腰痛
 知覚異常
 知覚鈍麻
 瘙痒感
 高熱
 自汗





【脈候】 浮で脈力中等度・やや浮やや弱・浮で力あり・浮やや数。

【舌候】 著変なし。またはやや乾燥して無苔。

【腹候】 腹力中等度で著変なし。

【病位・虚実】 構成病態に表の寒証があり、更に浮脈より太陽病に位置する。脈力、腹力共に中等度のため虚実中間である。

【構成生薬】 桂枝5.0 大棗3.0 芍薬3.0 甘草3.0 麻黄3.0 杏仁3.5 生姜1.0

【方解】 本方は桂枝湯と麻黄湯との1/3ずつの合方であって、重複する生薬はそのまま合せて加えてある。また、桂枝湯に麻黄・杏仁が加わったものと考えることもできる。麻黄・杏仁は共に表の水毒による欬嗽に対応するため、本方には桂枝湯証にはみられないこれらの症状が存在する。一方本方には麻黄・桂枝の組合せがあるため、麻黄湯証ほど強くはないが、桂枝湯証よりは深部の疼痛に有効である。本方のような温剤を用いなければならない場合には、一般に身体は寒冷を感じて体表を引きしめ、熱の放散を極力抑えて効率よく産熱にはげむ。しかし本方証の患者では体温調節失調をきたしているのか熱証が存在し異常な病態を呈している。

【方意の幅および応用】
 A 1表の寒証:頭痛・悪寒・発熱・欬嗽等を目標にする場合。
    咽痛で始まる感冒、遷延性の感冒、種々の熱性疾患の初期
   2表の寒証:項背痛・身疼痛・腰痛等を目標にする場合。
    感冒の腰痛、腰痛症。
B   熱証:熱感・顔面紅潮・瘙痒感等を目標にする場合。
    蕁麻疹・皮膚瘙痒症などで痒み・発赤があり、発疹・分泌液等の皮膚症状の少ないもの

【参考】 *太陽病、之を得て八九日、瘧状の如く、発熱悪寒し、熱多く寒少なく、其の人嘔せず、清便自可ならんと欲し、一日二三度発し、面白反って熱色ある者は、未だ解せんと欲せざる也。身必ず痒し。桂枝麻黄各半湯に宜し。『傷寒論』
*桂枝湯、麻黄湯、二方証相い半ばする者を治す。『方極附言』
*此の方は外邪の壊症になりたる者に活用すべし。類瘧の者は勿論、其の他風疹を発して痒痛する者に宜し。一男子、風邪後腰痛止まず、医、疝として療し、その痛益々劇し、一夕此の方を服せしめ、発汗して脱然として愈ゆ。『勿誤薬室方函口訣』
*本方は日数を経てなお太陽病位にあるカゼ等の疾患に用いるが、咽喉痛をもって発するカゼの初期にも用いられる。
*本方意には桂枝湯の自汗と麻黄湯の欬嗽とが混在する。
*本方意には裏証を伴わないために二便に変化がない。同様に悪心・嘔吐もない。また、瘙痒症に用いる場合でも皮膚症状が少ないことが目標になる。


【症例】 のどチク奮戦記
 風に吹かれながらウトウトしていたのがいけなかった。ホテルに近づく少し前あたりから、のどがチクチクと痛んできて、両肩から大椎のあたりへかけて、何となくうそ寒い。上衣のボタンをかけ、座席に身をすくめていると、肩のあたりは依然として寒いのに、そのほか全体は何となくむし暑くベットリと汗ばんでくる。鼻水がしきりに出はじめる。宿に着くや否や、麻附細を服用。20分ほどしても、のどは依然として痛く、鼻水も止まらない。食事をしていると、顔も体も暑くて、しきりに汗が出るが、やはり肩から大椎のあたりへかけての、平たい逆三角形の部分が寒い。食事も早めに引きあげ、もう一服麻附細を飲んでベッドにもぐる。一晩中ジトジトと汗をかき、熟睡できないままに早朝に目覚める。洗面所で顔を見ると、異常に赤い。依然としてのどは痛む。脈はかなり速く、浮でやや緊。諸症状は、昨日と少しも変わらない。むしろ熱が高くなっているようだ。麻附細を飲む。早く治さぬと気管におちこむと気が気でないが、一向に良くならぬ。一日ベッドにもぐっていたい所だが、そうもいかない。夕方、宿舎に帰りつく。症状は依然として変わらず、暑くて汗ばみ、そして寒く、かつ鼻水が出る。頭ははじめから全く痛まなかった。麻附細を飲んで寝る。依然のどは痛む。何となくいがらっぽくなってきた。その夜、暑く、かつ寒く、寝苦しい。全身が汗ばんで気持ちが悪い。3時に目覚める。脈は依然として浮数やや緊。腕がかゆい。つばを飲んでみる。やはりまだのどが痛い。わずかに咳が出はじめる。のどにかすかに痰がからむ。待てよ。昨日の朝、あんなに顔が赤かったではないか。自汗が終始つき光選工ているではないか。左腕がかゆいではないか。体が熱くて、汗が出るのに、肩の一部に悪寒を感ずるではないか。そうだ、これははじめから桂枝麻黄各半湯の証だったのだ。
 そこで早速、桂枝湯エキスと麻黄湯各2.0を合わせて服用し、またベッドにもぐる。するとどうだろう。さっきまではジトジト汗ばんで不愉快だったのに、今度はさらっとしていて、実にサッパリしている。自汗が止んだのだ。そのうち、2、30分すると、しっとりと汗ばんできて、体全体がもみほぐされるように心地良い。つばを飲みこんでみると、のどの痛みはすでに半減している。今度はピタリと証に合ったのだ。鍵は錠前の鍵穴にキッチリとはまり、いまや錠前は開かれつつあるのだ。やがて夜の明ける頃には微似汗も全く止み、のどの痛みは完全に消えうせ、3日ぶりに爽快な朝を迎えることができた。
藤平健 『漢方の臨床』 22・11・31


『漢方臨床ノート 治験篇』 藤平健著 創元社刊
p86
 咳の治療経験
p.88
 〔3〕 桂麻各半湯
 こじれたカゼの咳には桂枝二麻黄一湯、桂麻各半湯、桂枝二越婢一湯の三方がしばしば応用せられる。この中でも桂麻各半湯は最も頻用される薬方である。
 10歳の小女。一週間ばかり前にカゼをひき、熱はひいたが、だんだん咳がひどくなってきた。ことに夜寝てから特に激しく咳込む。
 脈は浮数やや弱。発汗の傾向はない。舌には乾湿中等度の薄い白苔がある。腹力は中等度よりやや軟で、心下に軽い抵抗と圧痛があり、右肋骨弓下にも軽度の抵抗と圧痛とがあり、両腹直筋も軽度に緊張している。すなわち軽度の心下支結と胸弦苦満とがあるわけである。この女児は平素やや虚弱で、疲れやすく、カゼをひきやすいため、今まで断続的に柴胡桂枝湯をのんでいた患者である。したがって現在このような腹候が見られるからといって、直ちにこれに食い付くわけにはいかない。先急後緩の原則にしたがって、まず急を要するほうから治さなくてはならない。慢性症はしばらく措いておいて、急性症をまず治めなくてはならない。そこでこれらの腹候にはかかわりなく桂麻各半湯三日分を与えた。これがうまく当たって、さしもの咳も三日でおさまった。
(「古医学研究」6巻2号、昭和35年2月)

p.354
 頭痛の治験例
p.355
 〔第3例〕 感冒後の頭痛
 患者は27歳の顔色悪き中背の婦人。約三週間前カゼをひいた。熱や悪寒はなくなったが、頭痛が残ってしまって、どうしてもとれない。
 〔自覚症状〕 ときに咳が出るが、痰はほとんどない。食思はあまり良好でない。二便に著変がない。
 〔他覚症状〕 脈はやや浮。舌にはわずかに乾燥した微白苔があり、腹力は中等度で左右の腹直筋がわずかに拘攣している。
 〔診断ならびに経過〕 桂枝麻黄各半湯の証とみて、三日分を投与。二日間の服用で、三週間苦しんだ頭痛が完全に消退した。
(「古医学研究」2巻10号、昭和31年10月)


『漢方医学〔1〕』  社団法人日本東洋医学会編 財団法人日本漢方医学研究所発行
p.95
桂麻各半湯
 これは傷寒論にある漢方であって,太陽病の桂枝湯と麻黄湯との中間位にあって,両者の合方というような形のものであります。

 内容
 桂麻各半湯正しくは,桂枝麻黄各半湯は,桂枝,芍薬,生姜,甘草,麻黄,大棗,杏仁の7種類の構成から成り立っております。これは桂枝湯1/3量と麻黄湯1/3量を合せたものであります。つまり太陽病の桂枝湯証と麻黄湯証が同時に存在しておりますので,両者の処方の合方によって,同時に治癒をはかるという形をとっているのであります。表証-体表に現われる発熱,痛み,などの諸症状-はあつても桂枝湯証は,脈が浮弱,悪寒,発熱があって,のぼせ,身体痛,発汗しやすいという証が認められますし,麻黄湯証は,脈は浮緊で,悪寒,悪風,発熱,頭痛があり,欬嗽,胸満(胸が一杯になったように苦しい),身体痛,関節痛,腰痛などがあり,自然には発汗しない状態にある場合です。つまり麻黄湯は表実証であって,桂枝湯は表虚証でありますので,桂枝麻黄各半湯は,その中間にある証を示すわけであります。具体的に申しますと,麻黄湯証があって,それにそれよりも弱い,幾分桂枝湯証に傾いた証を現わすということであります。

 目標
 桂麻各半湯は感冒,気管支炎,皮膚瘙痒症,蕁麻疹,湿疹のある時期のものなどに用いられます。

 症例
 (1) 5才の女児,昨年より欬嗽がすこしあったが,今朝から悪寒して発熱したということです。体格は中くらいで,色はやや黒く,しまった身体をしています。頭痛,四肢の筋肉痛があ識。脈でやや緊の方でありますが,舌苔はありません。麻黄湯を用うるには,すこし症状も軽く,脈もあまり緊張も強くないようですし,食欲も便通も悪くないので,桂麻各半湯を与えましたが,翌日は平熱となって元気になったということです。
   (※昨年より欬嗽が少しあった? → 昨日より欬嗽が少しあった の方が正しいのでは?)

 (2) 28才の男子,中肉中背で,昨夜より悪寒,発熱があったが,今朝は腰痛が強くなったということであります。脈は浮数で,やや緊張が弱い方だが,浮弱というほどではないようです。自汗はないが,すこし食欲が落ちているということです。頭痛や,腰痛があります。現在は6月なので,流感という線が強いようです。麻黄湯を用うるには,脈がすこし弱いようですが,葛根湯を用うるには項背強という証が認められませんので,麻黄湯よりすこし弱いという点で桂麻各半湯を用いましたが,翌日は正常になったようです。

 (3) 50才の男子,体格は中等,栄養も良好ながっしりした身体つきであります。本日昼間より,身体が赤くなって,掻痒感がつよいということです。食欲も便通も正常とのことです。腹証に胸脇苦満などはなく,舌苔も認めません。脈は沈緊であって,胸腹部には赤い細かな発疹が認められて,搔把した爪痕よって,その痕が隆起しております。蕁麻疹ですが,皮膚の広範囲の発赤,発疹より桂麻各半湯を投与して,数日を経ずして軽快しました。

 鑑別
 麻黄湯は脈証も,表証としての主訴も桂麻各半湯よりは強くて,表実証であります。
 葛根湯は脈浮緊であって,項背強という証があって,首すじの強ばりを訴えます。桂麻各半湯よりは,すこしく実証の方であります。
 桂枝湯は,体格的には同様ですが,自汗を伴う点で,桂麻各半湯より表虚証です。
 麻黄附子細辛湯は,悪寒はっても熱感はすくなく,脈も沈んでいて,陰証の症状が明らかです。
 真武湯は,脈はやや弱く,悪寒も熱感も強くなく,高熱であっても,身体は熱がらない。自汗はなく,時に下痢を伴うことがあります。小児では鑑別の困難なこともあります。




『健保適用エキス剤による 漢方診療ハンドブック 第3版』
桑木 崇秀 創元社刊
p.218 
桂麻各半湯(けいまかくはんとう) <出典> 傷寒論(漢時代)

方剤構成
 麻黄 杏仁 甘草 桂枝 芍薬 生姜 大棗

方剤構成の意味
 桂枝湯と麻黄湯の合方である。桂枝湯は自然に汗の出やすい体質の人の発散剤,麻黄湯は汗の出にくい体質の人の発散剤であるが,これを合わせたものは麻黄と桂枝を共に含むので,麻黄湯と同じく強い発汗剤となり,汗の出にくい体質向きの方剤ということになる。
 さて合方と言っても,甘草と桂枝は共通するので,麻黄湯から見れば,これに芍薬と生姜・大棗の組を加えたものと見ることができる。芍薬は桂枝湯のところでも述べたように,いわゆる「風邪(ふうじゃ)」を治す薬であり,鎮痛・鎮痒作用があることが知られている。生姜・大棗の組は一種の緩和作用であるから,麻黄湯の発汗作用に,鎮痛・鎮痒作用が加わり,それにさらに緩和作用が加わったと見ればよかろう(したがって,麻黄湯よりはやや虚証向きと言える)。
 もう一との見方は,桂枝湯に麻黄と杏仁が加わったと見る見方で,桂枝湯が汗の出やるい虚弱児のアセモなどに用いられたことは既に述べたが,これを汗の出にくい体質向きにつくり変えたと見ることもできよう。ただこの場合,杏仁は不要かと思われるが,杏仁に祛痰作用があることと関連して,杏仁が発疹の発散に役立つ可能性も否定できない。

適応
 自然に汗の出にくい体質の者の皮膚掻痒症,蕁麻疹,湿疹の初期(急性期)。
 ただし,発疹がほとんどないか,軽度のもの。また明らかに熱証の者には適さない。
 やや温性であるが,証は特に考慮しないで用いることができる。



『健康保険が使える 漢方薬 処方と使い方』
木下繁太朗 新星出版社刊




桂麻各半湯(けいまかくはんとう)
傷寒論(しょうかんろん)
 東

どんな人につかうか
 桂枝湯(72頁)と麻黄湯(200頁)を、それぞれ半量ずつ合方したもの。比較的体力の弱い人で、頭痛、悪寒(おかん)、発熱のある人の咳(せき)や皮膚のかゆみに用い、こじれた風邪(かぜ)、蕁麻疹(じんましん),皮膚炎,麻疹(ましん)、風疹などに応用します。

目標となる症状
 ①発熱。②寒気(さむけ)。③頭痛。④かるい咳(せき)。⑤無汗。⑥蕁麻疹(じんましん)、皮膚炎(顔面、手足に赤い斑点(はんてん)があって,かゆみが強く,多少熱を伴う)。⑦自面紅潮。

 不定。  浮、弱。  薄い白苔(はくたい)。

どんな病気に効くか(適応症) 
 感冒せきかゆみ。気管支炎、麻疹、風疹、蕁麻疹(じんましん)、湿疹、皮膚炎。

この薬の処方
 桂枝(けいし)3.5g、芍薬(しやくやく)、生姜(しようきよう)、甘草(かんぞう)、麻黄(まおう)、大棗(たいそう)各2.0g。杏仁(きようにん)2.5g。
この薬の使い方 
前記処方を一日分として煎(せん)じてのむ。

東洋桂麻各半湯(けいまかくはんとう)エキス細粒(さいりゆう)、成人一日4.5gを2~3回に分け、食前又は食間に服用する。

使い方のポイント・処方の解説
桂枝湯(けいしとう)では力不足、麻黄湯(まおうとう)では強すぎるといった場合に用います。
桂枝湯(けいしとう)と麻黄湯(まおうとう)を半々に合方したので、桂麻各半湯(けいまかくはんとう)といいますが、見方を変えれば、葛根湯(かつこんと う)の葛根(かつこん)を杏仁(きようにん)に変えたものに相当し、頚(くび)、肩のこりをとる作用は弱くなるが、鎮咳(ちんがい)、袪痰(きよたん)作用が強まります。
皮膚炎にも良く用いますが、発疹(はつしん)が顔面、手足などの露出部に出ていて、腹部にはないような場合に用います。
エキス剤では、桂枝湯(けいしとう)エキス、麻黄湯(まおうとう)エキスを、半々に加えて用いてもよく、小児の感冒にも有効例が報告されています。
傷寒論には「太陽病、之(これ)を得て八九日、瘧症(ぎやくじよう)の如く、発熱悪寒し、熱多く寒少なく、其の人嘔(おお)せず、清便(せいへん)自家せんと欲し、 一日二三度発す、其の少しも汗出ずるを得る能わざるを以て、身必ず痒(かゆ)し、桂枝麻黄各半湯(桂麻各半湯)に宜(よろ)し」と記載されています。


『図説 東洋医学 <湯液編Ⅰ 薬方解説> 』 
山田光胤/橋本竹二郎著 
株式会社 学習研究社刊

桂枝麻黄各半湯(けいしまおうかくはんとう)

  やや虚  
   中間  
  やや実 

●保 出典 傷寒論 別名 桂麻各半湯(けいまかくはんとう)

目標 比較的体力の低下した人および体質虚弱の人。頭痛,発熱,悪寒(おかん)があり,脈は浮で緊張も弱い。喘咳(ぜんがい)を伴う。発汗しないので,皮膚がかゆい場合にもよい。

応用 感冒,気管支炎,皮膚瘙痒(そうよう)症。(その他:蕁麻疹(じんましん),湿疹の初期)

説明 本方証の虚実は,麻黄湯と桂枝湯の中間にある。皮膚瘙痒は,皮膚に異常がなく,汗腺がふさがって発汗を妨げられる場合で,発汗を促してかゆみを治す。

桂枝(けいし)3.5g 大棗(たいそう)2.0g 杏仁(きょうにん)2.5g 麻黄(まおう)2.0g 甘草2.0g 芍薬2.0g 生姜3.0g




副作用
重大な副作用と初期症状
1) 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等) を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
2) ミオパシー: 低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
[理由]
 厚生省薬務局長より通知された昭和53年2月13日付薬発第158号「グリチルリチン酸等を含 有する医薬品の取り扱いについて」に基づく。
 [処置方法]  原則的には投与中止により改善するが、血清カリウム値のほか血中アルドステロン・レニ ン活性等の検査を行い、偽アルドステロン症と判定された場合は、症状の種類や程度により適切な治療を行う。低カリウム血症に対しては、カリウム剤の補給等 により電解質 バランスの適正化を行う。

その他の副作用


頻度不明
過敏症注1) 発疹、発赤、そう痒等
自律神経系 精神興奮等
消化器 食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐等
泌尿器 排尿障害等


 注1) このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。