健康情報: 葛根黄連黄芩湯(かっこんおうれんおうごんとう) の 効能・効果 と 副作用

2015年6月29日月曜日

葛根黄連黄芩湯(かっこんおうれんおうごんとう) の 効能・効果 と 副作用

臨床応用 漢方處方解説 矢数道明著 創元社刊
p.75 赤痢・疫痢・急性腸炎・肩こり・高血圧症
19 葛根黄連黄芩湯(かっこんおうれんおうごんとう) 〔傷寒論〕
 葛根六・〇 黄連・黄芩 各三・〇 甘草二・〇

 原本には葛根を先に煮ることになっている。普通は一緒に煮て用いる。

応用〕 裏の熱が甚だしく、表熱もあり、表裏の鬱熱によって心下が痞えて下痢し、喘して汗が出、心中悸等の症あるものに用いる。
 本方は主として下痢(赤痢)・疫痢の初期・急性腸炎・喘息・肩こり等に用いられ、また眼病(結膜炎・涙嚢炎・トラコーマ)・歯痛・口内炎・二日酔・火傷後の発熱・灸後の発熱・丹毒・麻疹内攻・高血圧症・中風・不安神経症等に応用される。

目標〕 裏熱が主で、表熱がこれに加わり、心下に痞え、下痢して喘し、汗が出て津液は燥き、あるいは項背こわばり、心悸を訴え、脈促(大小不定にくる脈で結滞とは異なる)であるのが、おもな目標である。

方解〕 構成は簡単であり、葛根が主薬である。葛根には滋潤の働きがあり、血液が水分を失って凝固し、項背筋の拘攣するものを滋潤してゆるめる作用がある。心下の痞硬もやわらげる能があるといわれる。黄連は裏の熱が上に迫るのを治し、黄芩は心胸中の熱をさますものである。甘草は諸薬を調和させる。
  〔附記〕 東大薬学部の和漢薬成分の研究(薬学雑誌 七九巻八六二)によれば、日本産および中国より輸入の葛根より、daizein,daizin および二種の未知 isoflavone かと思われるものを分離し、マウス腸管について鎮痙作用を試験してみると、daizein が葛根のもっているパパベリン様鎮痙作用を代表していることがわかった。すなわち葛根中の微量成分の中に、筋の痙攣を緩解する作用のあるものが含まれていたことが証明された。葛根が項背こわばるものを治すといわれた意味が了解されたわけである。

主治
傷寒論(太陽病中篇)に、「太陽病桂枝ノ証、医反ツテ之ヲ下シ、利遂ニ止マズ、脈促ノモノハ表未ダ解セザルナリ。喘シテ汗出ズルモノハ葛根黄連黄芩湯之ヲ主ル」とある。
 類聚広義には、「平日項背強急、心胸痞塞、神思悒鬱ユウウツ憂鬱舒暢ジョチョウセザルモノヲ治ス。或ハ大黄ヲ加フ」「項背強急、心下痞塞、胸中エン熱シテ眼目、牙歯疼痛、或ハ口舌腫痛腐爛スル者ニ大黄ヲ加フレバ其効速ナリ」とあり、
 勿誤方函口訣には、「此方ハ表邪陥下ノ下利ニ効アリ。尾州ノ医師ハ小児早手(疫痢)ノ下利ニ用テ屢効アリト云フ。余モ小児ノ下利ニ多ク経験セリ。此方ノ喘ハ熱勢ノ内壅スル処ニシテ主証ニアラズ。古人酒客(酒ノミ)ノ表証ニ用フルハ活用ナリ。紅花・石膏ヲ加エテ口瘡ヲ治スルモ同ジ」とあり、
 腹証奇覧には、「コレハ誤治ニヨリテ熱内攻シテ下利スルモノユヘ、内攻ノ熱ヲ瀉スレバ下利モ喘モ自ラ治スルナリ。故ニ黄連ノ胸中ノ熱ヲ解スルモノヲ用ユルナリ、(中略)要スルニ項背強バリ、胸中煩悸シテ熱ノアルモノヲ得バ、其下利及喘シテ汗出ノ証ノ有無ヲ問ハズシテ此方ヲ用ユベシ。因テ転ジテ酒客ノ病、火証、熱病、湯火傷、小児丹毒等ニ此方ノ証アルコトヲ考フベシ」とある。

鑑別
○葛根湯 20 (発熱・表熱)
○麻杏甘石湯 139 (・汗出で喘)
○麻黄湯 136 (発熱・喘而胸満、無汗而喘)
○甘草瀉心湯 119 (下痢・腹鳴下痢)
○桂枝人参湯 35 (下痢・裏寒表熱)

参考
 館野健氏は動脈硬化症患者に対し、心下痞・心悸・腹動・多汗・項背の凝り・左半身の知覚麻痺・左心室肥大・じっとしているのがきらいな活動家と感うのを目標として、葛根黄連黄芩湯を用い、きわめて効果的であったと、第十七回日本東洋医学会関東部会(一九六〇)で発表した。



治例
 (一) 疫痢様下痢
 四歳の男児。突然四〇度の発熱を起こし、意識混濁し、臭気ある粘液を下した。腹部は軟弱で、左下腹部に索状を触れ、圧痛がある。脈頻数で強かったり弱かったりする。いわゆる促脈を呈している。葛根黄連黄芩湯を与えると、熱は次第に下降し、下痢も減少し、三日目に平熱となった。四日目には口渇を訴え、水が口に入るとたちまち吐き出し、煩燥と小便不利があったので、五苓散にしたところ、嘔吐はただちにやみ全治した。
 (著者治験)

(二) 高血圧症
 六〇歳の婦人。高血圧症で六年前左眼様出血、左半身の知覚鈍麻がある。最近感冒後、食欲なく、冷汗が出て、軟便となり、心下痞硬、右臍傍に瘀血の圧痛点があった。葛根黄連黄芩湯一週間で、諸症状が好転し、二週間後、血圧もほぼ正常(一三〇~九〇)となった。
 (館野健氏、日東洋医学会誌 一一巻四号)


(三) 高血圧症
  三四歳の男子。本態性高血圧の患者。心動悸・不眠・小便不利等の症は、柴胡加竜骨牡蛎湯で好転したが、左肩こり・左背痛があり、汗をかきやすく、診療室でも額に汗を流し、常に汗をぬぐっている。涼しい日でも同じである。のぼせ気味で、赤い顔をしている。葛根黄連黄芩湯に三黄丸を兼用したところ、一七〇~一〇〇であった血圧が一三〇~七〇に落ちついた。この人は酒豪で、左半身に知覚麻痺があった。
  (館野健氏、日東洋医学会誌 一一巻四号)




和漢薬方意辞典 中村謙介著 緑書房
葛根黄連黄芩湯かっこんおうれおうごんとう  [傷寒論]

【方意】 上焦の熱による胸中煩悸・心悸亢進・息切れ・心下痞・自汗等と、脾胃の熱証よる下痢・悪心・嘔吐と、表の熱証による項背強・促脈等のあるもの。時に上焦の熱証による精神症状を伴う。
《少陽病と太陽病の併病.実証》

【自他覚症状の病態分類】

上焦の熱証

脾胃の熱証 表の熱証 上焦の熱証による精神症状
主証 ◎心中煩悸
◎心悸亢進



◎下痢

○項背強



客証 ○息切れ
○心下痞
○自汗
 顔面紅潮
 ほてり
 口渇
 口内潰瘍

○悪心 嘔吐○促脈
 頭痛
 悪寒
 発熱
 不安
 不眠
 熱性痙攣


【脈候】 促・浮数・弦にしてやや浮。

【舌候】 乾燥して軽度の白苔。

【腹候】 腹力中等度。心下痞または痞硬がある。腹直筋の軽度の緊張、時に腹満を伴う。

【病位・虚実】 裏熱・裏実の陽明病ではなく、上焦を主として脾胃までの熱証が中心的な病態であって少陽病である。更に表の熱証が存在し、少陽病と太陽病との併病となる。脈力、腹力共に充実しており実証。

【構成生薬】 葛根8.0 黄連3.0 黄芩3.0 甘草2.0
【方解】  黄連・黄芩の組合せは三黄瀉心湯・黄連解毒湯でみるように、上焦の熱証およびこれより派生する精神症状を散じる。本方意にも同様に上焦の熱証による胸中煩悶感・心悸亢進・心下痞と、上焦の熱証による精神症状を伴う傾向がある。本方の黄連・黄芩・甘草の組合せは、三つの瀉心湯(半夏瀉心湯・生姜瀉心湯・甘草瀉心湯)の場合と同様に、脾胃の熱証による下痢を治す。葛根は寒熱両証に有効だが、黄連・黄芩と組合せられて、本方では上焦の炎症性・充血性の病態に対応し、表の熱証の項背強・頭痛・悪寒・発熱を治す。

【方意の幅および応用】
 A 上焦の熱証:胸中煩悸・心悸亢進・息切れ・心下痞・ほてり等を目標にする場合。
   インフルエンザ、気管支喘息、二日酔、火傷、口内炎、舌炎、充血性眼疾患、酒渣鼻
 B 脾胃の熱証:下痢・悪心・嘔吐を目標にする場合。
   胃腸型感冒、赤痢等急性胃腸炎、各種の発熱性下痢
 C 表の熱証:項背強・頭痛等を目標にする場合。
   肩凝り、高血圧症、脳血管障害発作後
 D 上焦の熱証による精神症状:不安・不眠を目標にする場合。 


【参考】 *桂枝湯の証、反って之を下し、利遂に優まず、脈促、喘して汗出づる者は葛根黄連黄芩湯之を主る。『傷寒論』
*項背強急し、心中悸して痞し、下利する者を治す。『方極附言』
*此の方は表邪陥下の下利に効あり。尾州の医師は小児早手の下利に用いて屡効ありと言う。余も小児の下利に多く経験せり。此の方の喘は熱勢の内壅する処にして主証にあらず。古人酒客の表証に用ゆるは活用なり。紅花・石膏を加えて口瘡を治するも同じ。『勿誤薬室方函口訣』
*促脈とは脈の立ち上がりが急で、やや不整、あたかも拍動が迫るような状を覚えるものとされ、表証がいまだ解していない徴候であるとする。また一説では脈頻数で、強かったり弱かったりするものとある。この脈候を目標に本方を用いて著効をおさめている。
*小児の急性食中毒で疫痢状となり、下痢・高熱・痙攣など脳症状を起こしかけ、脈の乱れがちのものに用いる。

【症例】 急性腸炎
 3歳、女児。東京人であるが、当地へ来る数日前大腸カタルを患い、いまだ落治せざるに避暑に来たのである。そして転地早々、名所小湊に遊び、汽車中アイスクリームを食べさせられ、また中食の時は不消化なイカを食べたり、氷水を飲んだり、大分乱暴なやり方をしたのである。その夜帰宅すると発熱し、夜中下痢4回、翌朝になって粘液に血液を混じたる下痢7回。腹痛時々。元気がすっかりなくなった。
 体格栄養普通なる女児。脈浮にして1分間120至。舌苔薄く白色を呈す。口渇あれども嘔気なし。心下軟。腹部一般に膨満し下腹部中央に特に抵抗があり、圧すれば痛むものの如くである。体温38.9℃。
 まず葛根黄連黄芩湯を処す。発病の翌日午後から投薬したのであるが、その日の夜中下痢7回、翌日4回あって体温は平温となった。ただし腹痛多少あり食欲もいまだ起こらない。重湯を少量与う。
 黄芩湯に転ず。この日下痢少量なれど4回あり。その翌日更に普通便一回となり、食欲起こり粥1椀を食するに至った。通計5日。
(附記)本方は葛根湯より更に1歩進んだものに与うべきであると考える。しかし場合により、いずれを処すべきか大いに迷うことがある。
和田正系 『漢方と漢薬』 3・9・38

明解漢方処方 西岡 一夫著 ナニワ社刊 
p.135
 ⑩葛根黄連黄芩湯(かっこんおうれんおうごんとう) (傷寒論)
 葛根六・〇 黄連 黄芩各三・〇 甘草二・〇 (一四・〇)

 所謂、表邪陥下の下痢(太陽病に誤って下剤を与えたため、下痢がなかなか止らない状態)に用いるのが原典に示された本方の目標であるが、応用として小児の疫痢に使用される。なおこの下痢の場合は太陽、陽明合病の葛根湯症と 同じように、葛根特有の項背強(首筋のこり○○)がなくてもよい。疫痢。熱性下痢。


『漢方処方・方意集』 仁池米敦著 たにぐち書店刊
p.51
葛根黄連黄芩湯かっこんおうれんおうごんとう
 [薬局製剤] 葛根6 黄連3 黄芩3 甘草2 以上の切断又は粉砕した生薬をとり、1包として製する。

 «傷寒論»葛根6 黄連3 黄芩3 甘草2

  【方意】気を補って湿邪と熱を除き、脾胃と肝胆を調えて、気と水の行りを良くし上逆した気を降ろし下痢を止め、早手はやてや嘔吐などに用いる。
  【適応】止まらない下痢・小児の早手はやて(小児の疫痢)・ぜん(呼吸が急促な症状)して汗が出る者・胃腸の病・結腸炎・二日酔い・嘔吐など。

  [適応]紅花と石膏を加えて口瘡こうそう(口内炎などの病)に用いる。

  [原文訳]«傷寒論・弁太陽病脈証併治中»
   ○太陽病で、桂枝湯證に醫が反ってこれを下し、利すること遂にまず、脉が促なれ、表は未だ解せざるなり。喘し汗が出れ、葛根黄連黄芩湯が之を主る。
   «勿誤薬室方函口訣»
   ○此の方は、表邪の陥下の下痢に効ある。尾州の醫師は、小兒の早手はやての下利に用いてしばしば効ありと云う。余も小兒の下痢に多く經驗せり。此の方の喘は熱勢の内壅ないようする處にして主証にあらず。古人は、酒客の表証に用いるは、活用なり。紅花・石膏を加えて口瘡を治するも同じ。



『改訂 一般用漢方処方の手引き』 
監修 財団法人 日本公定書協会
編集 日本漢方生薬製剤協会

葛根黄連黄芩湯
(かっこんおうれんおうごんとう))

成分・分量
 葛根5~6,黄連3,黄芩3,甘草2

用法・用量
 湯

効能・効果
 体力中等度のものの次の諸症:下痢,急性胃腸炎,口内炎,舌炎,肩こり,不眠

原典 傷寒論
出典 
解説
 熱があって下痢し,首すじや肩がこり,みぞおちがつかえ,発汗,喘鳴するような場合に用いる。
瀉心湯の加方である。熱性症候があり,虚して,胸ぐるしく,のぼせ,いらいらして眠ることができなく,各種出血,皮膚の瘙痒,下痢の症状があり,瀉心湯で下しがたいものに用いる。


        生薬名
参考文献名         
葛根 黄連 黄芩 甘草
傷寒論 太陽病中篇 注1 半斤 3両 2両 2両
診療医典        注2 6 3 3 2
症候別治療      注3 6 3 3 2
応用の実際      注4 5 3 3 2
処方解説        注5 6 3 3 2
漢方あれこれ     注6 6 3 3 2

 注1   太陽病:桂枝証,医反下之,利遂不止,脈促者,表未解也,喘而汗出者主之。右四味,以水八升,先煮葛根,減三升,内諸薬,煮取二升,去滓分温再服。
 注2  本方は三黄瀉心湯中の大黄の代わりに葛根と甘草を入れた方であるから、三黄瀉心湯証に似ていて表熱証があり、森実の候のないものに用いる。そこで「傷寒論」に「太陽病の桂枝湯証を誤って医者が下したために、下痢が止まず、脈が促であるものは,表証がまだ残っている。このような患者で,喘鳴があって汗が出るものは葛根黄連黄芩湯の主治である」という条文によって,急性胃腸炎,疫痢,胃腸型の流感などに用いるばかりでなく,肩こり,高血圧症,口内炎,舌炎,不眠などにも用いる。
 注3  二日酔で,嘔吐するものには,五苓散や順気和中湯がよくきくが,嘔吐,下痢があり,また心下部の痛むものには,この方のよくきく場合がある。疫痢で高熱が出て,下痢とともに痙攣を発する場合に用いる。
 注4  熱のある下痢の初期に用いる。このとき,項背がこわばり,心下が痞える。勿誤薬室方函口訣には,小児の下痢によく用いられるとある。また汗が出て,喘鳴を発することもある。
 注5  原本には葛根を先に煮ることになっている。普通は一諸に煮て用いている。裏の熱がはなはだしく,表熱もあり,表裏の鬱熱によって心下が痞えて下痢し,喘して汗が出,心中悸等の症のあるものに用いる。
 注6  はしか:高熱を出し,咳をして下痢気味のときは葛根黄連黄芩湯を用いる。


-考え方から臨床の応用まで- 漢方処方の手引き 
小田 博久著 浪速社刊
p.140
葛根黄連黄芩湯かつこんおうれんおうごんとう (傷寒論)
 葛根:六、黄連・黄芩:三、甘草:二。

主証
 脈促。下痢、喘して汗出る。太陽と陽明の合病。

客証
 項背強がなくとも可。なかなか止まらぬ下痢(熱があり長期症状が変化しない)。

考察
 表裏の欝熱。
 熱が出て下痢。腹満→桂枝加芍薬湯。腹中雷鳴→瀉心湯類。
 傷寒論(太陽病中篇)
 「太陽病桂枝の証、医反って之を下し利逐に止まず○○○○○○、脈促のものは表未だ解せざるなり。喘して汗出ずる者○○○○○○○○は葛根黄連黄芩湯之を主る。」


『臨床傷寒論』 細野史郎・講話 現代出版プランニング刊
p.58
第二十一条

太陽病、桂枝証、医反下之、利遂不止、喘而汗出者、葛根黄連黄芩甘草湯主之。

〕太陽病、桂枝けいししょうかえって之を下し、ついまず、ぜんしてあせずる者、葛根黄連黄芩甘草湯かっこんおうれんおうごんかんぞうとう之を主る。

講話〕 葛根黄連黄芩(甘草)湯で私が一番最初、よく効くなと思ったことがあるのです。それはハシカです。ハシカが内攻しまして、下痢を起こし、肺炎を起こしているような状態で熱もあった、そんな状態の子供(家内の弟の子供で四歳か、五歳の頃)に私はこの処方を使ってみたのです。一服飲ましたら、すごく効きました。熱はシューと下がりますし、下痢も止まり、ゼイゼイいっていた肺炎の症状も治まりました。それで感心しました。本当に漢方というものはよく効くなあと思いました。内攻したハシカによく使う薬方に二仙湯という処方があります。二仙湯というのは、芍薬と黄芩の二味です。しかし分量を書いていないので、適当な分量を同分量づつ入れて、青くなってチアノーゼを起こしている子供に飲ませたら、もうこれはだめだろうと思って飲ませたのですが、飲んて暫くして、すっと血色がよくなってきた。よくなるはずですね、江田先生の研究報告によると、黄芩には抗アレルギー作用、アナフィラキシー反応に対して、顕著な防御作用がある。その作用は、黄芩の主成分のバイカリンだということです。それで、二仙湯が効く理由がわかりました。なるほど、ああいうように、もうだめになっているものでもね。黄芩が入っているということは大切だなと思いました。この葛根黄連黄芩(甘草)湯も黄芩が入っていますから、効いてもよいですよね。それに、先ほどもいいましたように、葛根には喘を止める性質があるし、黄連は細菌を殺す力はものすごくあるし、だから、効いて当りまえです。姪を助けて非常に喜ばれ、それから後、二仙湯でハシカ内攻のもう小児科で見放された子供を救えて、なるほど効くものだなと、私は感心させられました。
 薬というものは、用いようですね、やはり体験をしっかり踏まえていないといけないですね。また、薬理的な研究がすすんで、二仙湯のもとになる、このようなことがわかれば非常に面白いですね。
 また私はこれを喘息に使うのです。葛根黄連黄芩(甘草)湯を始めて使ったのは、ものすごくよく肩の凝る人で、その頃は、私の頭はまだ麻黄から離れていないので、喘息の時は、麻黄、麻黄の入っていないものな効かないと思っていた時ですから、それで葛根湯を土台にして、それに黄連、黄芩と加えたのです。そうすると葛根黄連黄芩(甘草)湯でしょう、そうしてやったらその人はすっとよくなって、他の処方を与えるとためなようになる。それから後、葛根黄連黄芩(甘草)湯が喘息に効くということを見つけたわけです。そのようにして、次から次、自分のやった土台を広げて、広応範囲を考えていったわけです。皆さんもよく勉強して、広げていって下さい。今、私がこんないろいろの話ができるのは『傷寒論』があるからです。『傷寒論』が土台になって、今の私の経験談ができてきたのですよ。


『臨床応用 傷寒論解説』 大塚敬節著 創元社刊
 p.200
第二十一

太陽病、桂枝證、醫反下之、利遂不止、喘而汗出者、葛根黃連黃芩甘草湯主之。

校勘〕宋本、成本では「不止」の下に「脈促者、表未解也」の七字がある。康平本は「表未解也」を「表不解也」に作り、この七字を傍註とする。今、康平本によって、この七字を原文より削って、註文とする。「葛根黃連黃芩甘草湯」を康平本は「葛根黃連黃芩湯」に作り、宋本、成本は「葛根黃芩黃連湯」に作る。今、厚朴生姜半夏甘草人參湯、乾姜黃芩黃連人參湯の例にならって、甘草を加える。


太陽病、桂枝の證、醫反って之を下し、利遂に止まず、喘して汗出ずる者は、葛根黃連黃芩甘草湯之を主る。


(154) 利遂不止-利は下痢である。遂には、或る一つのことがあって、それが原因で次のことが起こるのを言い、「因って」の意である。



太陽病中の桂枝湯の証は下してはならない。これを誤って医者が下し、そのために、ひきつづいて下痢が止まらなくなった。しかも、その上に、喘して汗出ずという症状もある。
 喘して汗出ずという症状は、喘が主であって、そのために汗が出るのであって、汗出でて喘の麻黄杏仁甘草石膏湯証と区別しなければならない。
 さて、この証は、表証を誤まって下し、邪の一部が裏に入って、下痢が止まらなくなったもので、この下痢は第十九章の太陽と陽明の合病の下痢に似ている。しかし前の合病では、表実のために、裏虚に似た下痢を起こしているのであって、表邪を散ずれば、下痢は自然に止むのであるが、この章の下痢は表証を誤下して、一部の邪が裏に入って、下痢を起こしたのであるから、表裏を倶に治する必要がある。そこで、脈促の者は、表未だ解せざるなりという註を入れたのである。促脈については、桂枝去芍薬湯の章で述べたので、参照してほしい。表未だ解せずという場合は、すでに、邪の一部が裏に入ったのに、まだ表証が残っている時に用いる法語である。

臨床の目
 (43) 私は葛根黄連黄芩甘草湯を患者に何回か用いたことがある。またこの方を下痢も、喘もない場合に用いることがある。その場合は、三黄瀉心湯の大黄の代りに、葛根と甘草を入れたものとして方意を考える。そこで、婦人の血の道症、不眠症、高血圧症などに、この方を用いることがある。

 葛根黃連黃芩甘草湯方
葛根半斤 甘草二兩炙 黃芩三兩 黃連三兩
 右四味、以水八升、先煮葛根、減二升、内諸藥、煮取二升、去滓、分溫再服。

校勘〕 諸本みな、方名中に「甘草」の二字がない。今、これを加える。黃芩の「三兩」を、成本は「二兩」に作る。「味」の下に、玉函には「㕮咀」の字がある。


葛根黃連黃芩甘草湯の方
葛根(半斤) 甘草(二兩、炙る) 黃芩(三兩) 黃連(三兩)

右四味、水八升を以って、先ぶ葛根を煮て、二升を減じ、諸薬を内れ、煮て二升を取り、滓を去り、分溫再服す。




『康平傷寒論読解』 山田光胤著 たにぐち書店刊
p.99
(34)三四条、第二十一章、十五字
太陽病、桂枝の証、医反って之を下し、利遂に止まず(傍・脈促なる者は表解せざるなり)、喘して汗出ずる者は、葛根黄連黄芩湯之を主る。
葛根黄連黄芩湯方
葛根半升、甘草二両炙る、黄芩三両、黄連三両
右四味、水八升を以て、先に葛根を煮て二升を減じ、諸薬を内れて煮て二升を取り、滓を去り、分ち温めて再服す。

【解】
太陽病の中で桂枝湯の証は、(葛根湯証も同様で)発汗によって病邪を解散させるべきものである。それを医者が誤って下剤を用いた為、遂に下痢が止まらなくなった。それは誤下によって邪の一部が裏に入って下痢を起したのである。そういう場合一般には陰証になったり、脉は沈微になり易いがこの場合は、傍註で云うように脉が促なのは邪が表に残っていることを示しているのである。
傷寒論では「表未だ解せず」という表現は、邪が既に裏に及んだが、表も未だ解決せずの意味である。一方又熱邪が裏に及んだ為、気が逆して喘が起し、汗が出た。このような時は、表と裏を同時に治する葛根黄連黄芩湯で、表邪を散じ裏熱を除くことができるので此の方が主治するのである。
即ち、葛根で表を治し、黄連黄芩で裏を治して、下痢も喘も止めるのである。前条の合病では、表邪を解散すれば下痢自然に止むものであり、本条では、表裏を倶に治す必要がある場合をのべているのである。
 (注・喘は息切れのこと。本方は太陽と少陽の合病)


『傷寒論演習』 講師 藤平健 編者 中村謙介 緑書房刊
p.116

三四 太陽病。桂枝証。医反下憲。利遂不止。脈促者。表未解也。喘而汗出者。葛根黄連黄芩湯主之。

太陽病、桂枝の証、医反つて之を下し、利遂に止まず、脈促なる者は、表未だ解せざる也。喘して汗づる者は、葛根黄連黄芩湯之を主る。

藤平 太陽病で桂枝湯の証だと断わっているのですから、これを下すということはもってのほかですが、医者が誤ってこれを下してしまった。そのため下痢が止らなくなった。
 この場合には陰証、例えば桂枝人参湯証に陥ってしまうこともありますが、ここでは陽証の葛根黄連黄芩湯証になったわけです。
 ここに「医」とありますが、医の字が加わった場合には誤治になちがいありませんが、相応の下すべき症状があって下したのだと及川達さんは説明しています。つまりいたしかたない理由があった場合です。
 しかし「医」がなく「反下之」とある場合は、これは医者が誤って、全く下してはならないものを下してしまったという場合です。『傷寒論』の厳密さがここにもあらわれています。
 促脈というのは脈拍数の多い数脈の一種だという説がありますが、また促はうながすと読みますから、せっつかれるような感じをもつ脈だともいわれます。そしてこの促脈は太陽病を下してはならないのに下し、なおかつ未だ表証が残っている場合の脈だと考えられています。第二二条の桂枝去芍薬湯のところでも触れました。つまりここでも表証が解さずに残っています。
 「喘」は呼吸困難のことです。これに咳を伴えば喘咳、ゼロゼロいえば喘鳴、胸が張って苦しければ喘満となります。「喘而汗出者」の而の字に注意して、喘つまり呼吸困難のために汗が出ると読みます。一種の苦汗ですね。
 このような状態を葛根黄連黄芩湯はつかさどるというのです。


太陽病桂枝証 此の章は、第二二章の「太陽病。下之後云々」の句を承けて、且又前々章の「必自下利」に対し、其の誤下に因りて逆変を致せる者を挙げ、以て葛根黄連黄芩湯の主治を論ずるなり。
 桂枝の証とは桂枝湯証の略なり。凡そ単純なる桂枝湯証にして、他の証を挟まざる者は、下す可からずるを法則と為す。故に先づ太陽病と言ひ、又重ねて桂枝の証と言ふなり。
医反下之 単純なる桂枝の証なるに拘らず、肌を解せずして之を下す。故に先づ医と言ひ、反つて言ひて、深く其の誤を咎む。


藤平 先ほどちょっと触れましたが「医反」と、単に「反」の区別を『傷寒論古訓伝』の及川達さんはきちんと言及しています。この点に関して第一四条の解説の中でお話しました。
 及川達さんのことあたりの解釈や、合病及び併病の解釈はたいへんにすばらしいものだと思います。いろいろな所で卓見を述べています。

 このような状態を葛根黄連黄芩湯はつかさどるというのです。


利遂不止 既に之を誤り下す。故に利続いて止まざるなり。
脈促者 促とは短促の義。初の浮脈、茲に至つて逐次短促するを言ふ。此れ太陽病下後に於て、尚表証去らざるの候なり。
表未解也 故に表未だ解せざる也と言ふ。然れども既に表証を誤り下す。因て表邪直に裏に奔りて、裏も亦病まざるを得ず。既に之を                                       喘而汗出者促者 是其の応徴なり。喘而汗出と、汗出而喘とは少しく其の意義を異にす。喘而汗出は、喘するに因て汗出づる也。汗出而喘は、自汗出づるが為に喘するなり。而しての字の上を正証となし、其の下を兼証となす。今、喘して汗出づるは欝熱、胸に迫るの為す所となす。      此の証、表証未だ解せず。又裏には既に欝熱有り。是表裏を同時に双解せざれば其の病癒えず。之を葛根黄連黄芩湯の主治と為す。故に                                 葛根黄連黄芩湯主之 と言ふなり                                        此の章に拠れば、本方は、表裏の欝熱を清解し、兼ねて下痢及び喘を治するの能有りと言ふ可きなり。                                                         葛根黄連黄芩湯方 葛根半斤 甘草二両 黄芩二両 黄連三両
 右四味。以水八升。先煮葛根。減二升。内諸薬。煮取二升。去滓。分温再服。
                                                             

藤平 ここに表裏と二、三度使われていますが、表は太陽病の表証ですし、裏は半表半裏を意味しています。いわば方本は表的半表半裏証ということになります。



追記 此の章、誤下を設けて病の変化を明かにせんと欲するなり。今桂枝の証にして誤つて之を下す。故に其の所在を転じて、半ばは表位に止まり、半ばは心胸に止まりて、表裏解せず。脈促は表位に止まるの候、喘して汗出づるは心胸に止まるの徴なり。
                                                             

藤平 ないも葛根黄連黄芩湯証は誤下に現われるとかぎったものではないのですが、ここでは誤下のために本方証になったという場合を仮りに設定しているのです。このような方式で条文を書き起こしているところが『傷寒論』の中にはあちこち見られます。

 表証之を下し、利止まざる、之を甘草瀉心湯証となせば、表未だ解せざるは其の証に非ず。又利止まず、表裏解せざる、之を桂枝人参湯なせば、協熱に非ざるは其の証に非ず。又桂枝加厚朴杏仁湯証に似たりと雖も此の証は下利に因て津燥き痞熱加はるのなす所、即ち其の証に非ず。是に於て、本方証なること知るべし。
 此の証、其の表を攻めんと欲すれば、既に在る裏証を奈何せん。又其の裏を救はんと欲すれば、未だ解せざる表証を奈何せん。是に於て、同時に其の表裏を制し清むるなり。是即ち双解の法なり。此の証、合病に似て合病に非ず。  ○以上の四章は一節なり。初章に於ては先づ葛根湯の主治と本分とを明かにし、次章に於ては其の活用を論じ、又次章に於ては其の加味方に及び、終章に於ては葛根湯証に似て非なる者を論じ、以て一たび葛根湯類を結べるなり。
                                                             

藤平 私はこの葛根黄連黄芩湯証は併病で、ちょうど桂枝人参湯と陰陽相対するものだと思います。太陽病証を下したために陰証に陥ちこんでしまったというのが桂枝人参湯証ですし、下したために半表半裏にまで行ってしまったのがこの葛根黄連黄芩湯証です。
 桂枝人参湯証はまさに桂枝湯証と人参湯証とが完全に現われているものです。つまり桂枝湯証の頭痛、悪寒、発熱、自汗があって、しかも人参湯証の足が冷えて下痢が激しい等ももられるものです。子供等が夏に寝冷えしてカゼと下痢とがいっしょに発現することがありますが、これが桂枝人参湯証です。これに本方を一服飲ませればたちまちよくなります。
 一方、頭痛、悪寒、発熱があり項もこる。そして下痢もするが、陰証ではないという場合に葛根黄連黄芩湯を投じるとよいわけです。
 ですから桂枝人参湯は本来は桂枝湯と人参湯の合方が考えられるのです。併病の場合には合方で治す場合、先表後裏の場合、先急後緩の場合の三つがあります。桂枝人参湯は併病であってその合方で治す場合のものです。
 ところで『傷寒論』『金匱連略』を読みますと、合方の場合に両方の構成生薬をそっくりそのまま合わせる場合もありますが、そうでない場合もあります。
 例えば柴胡桂枝湯は小柴胡湯証と桂枝湯証との併病です。そして両方の構成生薬をそれぞれ二分の一ずつ取って合方し、重複薬は少ない方の二分の一を加えています。また、太陽病という同病位に於ける併病であるところの桂枝麻黄各半湯は、桂枝湯と麻黄湯の三分の一ずつ取り、重複薬も同じく三分の一ずつを合わせています。
 しかし桂枝人参湯は先ほども述べましたように症状では完全な桂枝湯証と人参湯証との併存ですが、構成生薬をみますと人参湯の中の甘草の量を少し増量して、これに桂枝を加えたものです。ですから桂枝湯の他の構成生薬は入っていないのです。それであるのに、これを飲ませるとすべての症状がきれいに消失します。
 『傷寒論』の作者は併病の場合に合方することがあるのですが、何かの理由によって、二つの薬方の構成生薬をそのまま合わせることをせず、いくつかの構成生薬を取り去って合方することがあるのです。そして新しい薬方を創設するわけです。桂枝人参湯がこれに該当しますし、麻黄附子細辛湯もそうです。
 麻黄附子細辛湯は、今はもう伝わらなくなってしまった少陰病の或る薬方、それには附子と細辛とが含まれているのですが、その薬方証と太陽病の麻黄の含まれた或る薬方証の併存で、それぞれから構成生薬を抜き出してこの薬方を創設したのだと思います。
 これらと同様に本条の葛根黄連黄芩湯は葛根湯と黄芩湯との合方だと思います。つまり葛根湯の頭痛、悪寒、発熱、項強があり、黄芩湯の陽証の下痢があるのです。二薬方証の併存でして併病です。しかし構成生薬をみてみますと、二薬方をそっくり合わせたものではなく、葛根湯の構成生薬中の或るものは捨て去り、また黄芩湯の或るものを捨てて合方し、一つの新しい薬方を創設したわけです。
 こういうことを『傷寒論』の作者は所々でやっているのですが、どうして単純に二薬方を合方せずに、構成生薬の一部を捨てたり抜き出したりして合方するのか、その理由はまだわかりません。ボクもなんとか知りたいと思っています。諸先生が何とかこの疑問を解決してください。何か大きなものがここにはあると思います。『傷寒論』の中には未解決のことがたくさんありますが、これなどは、その中の大きなものの一つだと思います。
 これは併病の範囲で考えてまずまちがいないと思いますが、併病はこれから研究し仲いかなければならない分野だと思います。中国のほうが今かなり考えつつあるようですから、うっかりすると逆輸入現象が起きるかもしれませんね。
 さて、何かこの条文でご質問はありませんか。
 会員B 下痢というとすぐ裏証だと思いがちなのですが、この下痢は半表半裏なのですね。
 藤平 半表半裏の下痢はいくらでもあります。これはその中の黄芩湯証の下痢です。
 会員A 本条は「太陽病。桂枝証。医反下之」となっていて、「太陽病。医反下之」となっていません。あえて「桂枝証」を加えてある理由は何でしょうか。
 藤平 太陽病証の中でも最も下すという治療方法からほど遠いということを意味していると思われます。
 会員A 次に「医反下之」の「医」てすが、先ほどの及川達先生の説ですといくぶんかは下すべき症状があって下したのだということですので、及川先生もこの条文を併病とみていたと考えてよいのでしょうか。
 藤平 「太陽病。反下之」とある場合には下すべき症状もないのに誤治をしてしまったという意味ですし、「太陽病。下之。」の場合には太陽病証のあるうえに腹満、便秘、苦しい等の陽明病証があるために、やむを得ず先急後緩で下したという意味です。
 本条の場合の「医反下之」も及川達さんは下すべき症状があったと言っているのですから、併病以外には考えられないと思います。
 会員A ではさらに、桂枝人参湯は協熱であると奥田先生は言っておられますが、この協とは何でしょうか。
 藤平 これは表熱つまり表証の熱をさしはさむと昔から説明されています。表証の熱ですから虚熱ではなく実熱ですが、表熱をさしはさむと言っても何を意味しているのか非常にわかりにくいですね。結局表証と陰証の併病と考えればよいと思います。
 会員A 最後の質問ですが、本条の病態が合病ではなく併病であるという理由ですが、それは症状からみると二薬方証の併存であるし、構成生薬からみると合病の治療原則の単一の薬方ではなく、元の薬方のままではないが二薬方の合方であるから併病であると感うのでしょうか。
 藤平 その通りです。
 ところでこの葛根黄連黄芩湯にからんでの話ですが、外国の或る人が吉益東洞さん等あの時代の人はきちんと経験を踏まえて発言しているから感心するが、日本の今の時代の人は経験もしていないことをあたかも経験したように勝手なことを述べていて誤っていると発言したことがありました。これに対して小倉さんとボクとが大論争をいどんだことがあります。
 その人の言では、この条文に示されているような状態に葛根黄連黄芩湯を使ったら患者を殺してしまうと言うのです。これは四逆湯でなければ救命できない。台湾の人も、中国の人も皆そう言っている。現代の日本の人だけが勝手なことを言っていると主張するのです。
 そこでボクが反論したのです。「あなたご自身で経験したことがあるのか」と尋ねたところ、経験はないと言う。「ボクは自分自身でも経験したし、患者さんでも度々経験して条文の通りに使って誤りない。ここに四逆湯等を使ってはかえって患者を殺してしまう」と言ったのです。
 私は自分自身の食中毒を葛根黄連黄芩湯で救われたことがあるし、この条文通りに使ってよく効く大事な薬方です。


『漢方原典 傷寒論の基本と研究』 大川清著 明文書房刊
p.119
三四 太陽病、桂枝證、醫反下之、利遂不止、脈促者、表未解也。喘而汗出者、葛根黃連芩湯主之。


 太陽病、桂枝の証、医反って之を下し、利遂に止まず、脈促なるもの者は、表未だ解せざる也。喘して汗出づる者は、葛根黄連黄芩湯之を主る。


  太陽病、桂枝(湯)証(であり、本来下してはいけないのに)、医者がかえって之を下し、下痢がついにまなくなったが、脈は促であるものは、表証が未だ解していないのである。汗を出しながら喘する者は、葛根黄連黄芩湯が之を主る。

解説 この章は第二二条の[太陽病、下之後、脈促]の句を承けて、桂枝湯証を誤って下し、下痢が止まなくなった場合の治法を論じる。

語意 [脈促] 数脈。
    [喘而汗出] 出を出しながら喘鳴を発する。第六三条[発汗後、不可更行桂枝湯、汗出而喘、無大熱者、可與麻黄甘草杏仁石膏湯主之。]との鑑別は自ずから明らかである。

註釈 瀉下の後に限らず、初発から葛根黄連黄芩湯証を示す者がある。
    太陽病下篇第一七〇条[太陽病、外証未除、而數下之、遂協熱而利、心下痞鞕、表裏不解者、桂枝人参湯主之。]桂枝人参湯も外証が未だ除かないうちに下した者であるが、桂枝人参湯は基本的には人参湯証で上衝するものである。湯は

 ◎葛根黄連黄芩湯大靑龍湯葛根黄連黄芩湯方 葛根半斤 甘草三兩 炙 黃芩三兩 黃連三兩 右四味、以水八升、先煮葛根、減二升、内諸薬、煮取二升、去滓、分温再服。

補記 『小刻傷寒論』では黄芩二両であるが、『類聚方広義』の頭註に【玉函、千金、宋板共作黄芩三兩今従之】とある。このような注釈も以下の条文では省略する。


補記 『傷寒論』は前後の条文との関連で証の推移が記述されている。葛根黄連黄芩湯は桂枝湯証を誤下した後に限らず、証に合わせて用いることができる。項背がこわばり、頻回の下痢を主徴とし、発熱して発汗し、喘鳴を伴う場合に用いる。『類聚方広義』に【治項背強急、心下痞、心悸而下利者】とあ音¥

 それぞれの薬方の証を知るには『類聚方広義』を参考にするとよい。


【添付文書等に記載すべき事項】

 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)

1.次の人は服用しないこと
   生後3ヵ月未満の乳児。
      〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕

 相談すること 
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。
  〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以 上)含有する製剤に記載すること。〕
(4)次の症状のある人。
   むくみ
   〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以 上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)次の診断を受けた人。
  高血圧、心臓病、腎臓病
  〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以 上)含有する製剤に記載すること。〕


2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること


症状の名称 症状
偽アルドステロン症、
ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)
含有する製剤に記載すること。〕


3.1週間位(急性胃腸炎に服用する場合には5~6回)服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
  〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕



〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕

(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
   〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕

(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す
ること。〕

  1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく
注意すること。
  〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕

  2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
  〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕

  3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ
服用させること。
  〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」を してはいけないこと に記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕


保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
  〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
  〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
 

【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
  生後3ヵ月未満の乳児。
  〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
 (1)医師の治療を受けている人。
 (2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
 (3)高齢者。
   〔1日最大配合量が甘草として1g以上 ( エキス剤については原生薬に換算して1 g以上 ) 含有する製剤に記載すること。〕
 (4)次の症状のある人。
    むくみ
   〔1日最大配合量が甘草として1g以上 ( エキス剤については原生薬に換算して1 g以上 ) 含有する製剤に記載すること。〕
 (5)次の診断を受けた人。
   高血圧、心臓病、腎臓病
   〔1日最大配合量が甘草として1g以上 ( エキス剤については原生薬に換算して1 g以上 ) 含有する製剤に記載すること。〕

2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
  〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
  〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕