健康情報: 7月 2015

2015年7月14日火曜日

葛根紅花湯(かっこんこうかとう) の 効能・効果 と 副作用

臨床応用 漢方處方解説 矢数道明著 創元社刊
p.646 酒皶鼻・赤鼻
 
13 葛根紅花湯(かっこんこうかとう) 〔方輿輗〕
 葛根・芍薬・地黄 各三・〇 黄連・梔子・紅花 各一・五  大黄・甘草 各一・〇

 「酒査鼻しゅさびの劇症を療す。」
 強度のものには本方を服用し、かつ四物硫黄散を外用するという。中等または軽度のものは本方を連用するがよい。また刺絡により悪血をとる。黄連解毒湯を長服するもよい。
 酒査鼻(あかはな)専門の薬方である。



『症状でわかる 漢方療法』 大塚敬節著 主婦の友社刊
p.179
葛根紅花湯かっこんこうかとう




処方 葛根、芍薬、地黄各3g、黄連、梔子、紅花各1.5g 大黄、甘草各1g。
 以上を粉末とし、一回に飲む。

目標 顔面に赤斑のあるもの。
応用 酒皶鼻しゅさび(赤鼻)。肝斑かんぱん(しみ)


『漢方治療の方証吟味』 細野史郎著 創元社刊
p.657

酒皶しゅさ(その一)
-葛根紅花湯・黄連解毒湯

 〔患者〕 五十六歳の一杯飲み屋のおかみで、体重は五二kg、やや太りぎみの人。
 顔の両頬に約二年ほど前から細い血管が浮いて出てくるようになり、鼻の上も赤くなった。「あまりみっともないので一日も早く治してほしい」との希望である。
 大便は秘結傾向で二日に一回程度。月経は四十六歳で閉経し、血圧は普通。お酒はたくさんではないが毎日商売柄チビチビ飲んでいる。

 選方と経過

 十月五日。以上の所見から桂枝茯苓丸(粒剤、四・五g)合黄解散(粒剤、三・〇g)を一日量(三分服)として三〇日分を渡す。
 十二月十日。薬を渡してから二ヵ月目になるが、両頬の血管の赤味が少しましになっている。薬は一日二回しか飲んでいなかったと言う。便通はやはり二日に一回程度とのこと。
 そこで前方を二〇日と、桃核承気湯を(一・五gを一包みとして)三〇日分渡し、これを就床前に必ず飲むように言いきかせ、便通が一日一回になるように加減しながら飲みつづけるよう教えておいた。

 A その後、この患者はまだ来局しませんので、その結果は判りかねますが、こんな容態に、このような薬方でよいものでしょうか。また、このほかにも赤鼻の治し方をお教え下さい。

方証吟味

 S 少しいいのですか。頬や顔全体の赤いのは酒に関係のあることがずいぶん多いですね。それも、あまりたくさん飲まなくても、少しずつでも酒気にひたる機会の多い人では、頬や鼻の先が赤くなるもののようですね。
 A 五~六年前に一度みえたとき、これと同じような処方を渡し、それがよく効いたそうです。このときも前のを調べてみたのですが、はっきりしませんでした。しかし大分これに近かったと思いますので、ちょっと自信をもって渡しました。”赤鼻”のことについては、本を調べても、あまり見あたりません。
 S 黄解散でも効きますが、「待ってました!」というようにはなかなか効きませんよ。また時に、桂枝茯苓丸をもっていくとよく効くことがあります。葛根紅花湯という薬もよく効きますよ。これは浅田の『方函』にはない薬方ですが、『校正方輿輗』にはあります。しかし詳しいことは『稿本方輿輗』(有持桂里)を見るとよくわかります。
 これによりますと、酒皶では、軽症から重症までを三度に分けられるが、一度のものは最も軽症で、飲みぐすりだけで治るもの、二度のものは中間で、内服薬だけでは治りにくいもの、三度のものは難治で、特別なすりこみ薬を患部にすりこんで、鼻の赤いツブツブを摺り潰すようにして治療する、非常に難治の症である、と言っております。
 しかし、われわれの所へはそんな重症なものは現われません。この人の言うように、頬が赤くなるくらいで、みっともなくて仕方がないという程度のものの方が多いのです。この病は男女ともにありますが、軽症のものでは、われわれの手で治す方法もあり、一つはAさんの方法、他は葛根紅花湯またはこれに併せてもっていくのです。少なくとも酒皶に似たようなものならよく治るように思います。細血管の怒張によるものであれば割合に効きやすいようです。
 それが瘀血に関係があって、酒皶様の症状の起こっている人には桂枝茯苓丸やその類方が効きます。あるいは桃核承気湯証があって、上にのぼせて頬の赤くなっているのに桃核承気湯がよく効きます。桃核承気湯証があつて、上にのぼせて頬の赤くなっているのに桃核承気湯がよく効きます。桃核承気湯証のときは骨盤腔内や大腸、直腸、S字状結腸の周辺部に血行異常があって、欝血現象などが起こっているとき、ここが刺激源となって仙骨迷走神経を通して上方、頭、顔面に反応が現われる場合には、第一には桃核承気湯、次に桂枝茯苓丸またはその類方が効くはずです。
 酒皶様アクネのときは、アクネの療法を加え、また小柴胡湯当帰芍薬散、あるいは、より体力のある人では大柴胡湯にこれらの駆瘀血剤、そしてその上に葛根、紅花を加えると非常によく応じるように思います。
 瘀血で、のぼせが特に強く目につくときには桃核承気湯の方がよく効くので、これを小柴胡湯に合わせるとか、あるいは逍遙散、加味逍遙散に合方してゆくなどすることもあります。しかし、これでもどうしても赤味が取れないときは、葛根紅花湯をこの上に加味して赤味を取ります。単なるアレルギー性の日光性皮膚炎で顔の赤味だけが取れないときは、葛根紅花湯を主にして後、他の処方、たとえば体質があまり弱くなければ温清飲とか他の湿疹を治す処方を加えることによって赤味が取れ、きれいになって喜ばれることも少なくありませんよ。
 これらがだいたい酒皶やこれによく似た病症を治す方法だと心得ておればよいのです。
 A どのくらい続けたらいいですか。
 S その人を診ないで、そんなことは言えませんし、一週間もやってみずに、どれくらいで効くのだろうとも言いにくいのですが、まあ、そんなことを考えるよりは、まず長くかかるものだと考えて、病人が信じてついてきてくれるだけの態度をとってほしいです。たとえば感冒のようなわかりきった病症なら、一週間とか言えもしますが、このような慢性的な病症となっては的確に言えないのもあたりまえでしょう。そんな心配をしているよりは、すべからく自信たっぷりの態度で接することです。それには一にも勉強、二にも勉強です。
 B 粒剤の単味の葛根や紅花では〇・三gでいいでしょうか。
 S 〇・三gではちょっと少なくはないでしょうかなあ。もっと多く加えてやった方がよいと思いますよ。たとえばその倍量ぐらい。葛根や紅花を加えるのも、黄連解毒湯だけでは赤味が減らないからのことで、温清飲四物湯黄連解毒湯の合方ですから、ただの黄連解毒湯のみでなく、四物湯のような虚証にいく駆瘀血剤が加わっているわけですね。これは、黄連解毒湯桂枝茯苓丸を加えるとか、また桃核承気湯を加えるのと同じような理屈ですから、温清飲だけでもよく効くときがあるかもしれません。それに更に葛根紅花湯の合方にすると、もっと効くだろうとも思えますね。それが確実に根治させるかどうかはまた別としましてね。
 葛根は首から上の方に薬を効かせるようにするし、紅花は駆瘀血剤で、血管が怒張するのを軽減すると考えることはできないものですかなあ。『和語本草』には、紅花は多量に用いると瘀血をとるが、少量だと血を活かす作用があると言っています。要するに紅花は血をめぐらす要剤だと言うのです。
 A 男の人で鼻の真中が真赤になっている人がありますね。それも同じでしょうか。
 S おそらく同じでしょうね。
 B それから私の経験では、温清飲が非常によく効いた例がありました。
 C 頬や顔の赤い人は、冬は絶対にマスクをめるべきですね。
 S そして酒皶には酒は飲まないようにですかね。
 A 若い人でもワサビとか生姜をたくさん食べると赤鼻になるおそれはありませんか。
 S それだけ生姜を食べようと思ったら、よっぽどたくさん食べねばならないでしょうね。
 B 私の経験では、薬を飲んでいると良いのですが、根治することはないように思うのです。
 S そんなことも考えられなくはありません。酒皶の人は、根治するまでしっかり薬を飲み続けてくれないものですからね。根気が要りますから、少し良くなると飲まないのです。酒皶様のアクネなら割合によく治るものですね。そのときは桃核承気湯あるいは当散鬚散を葛根紅花湯に合方する方が一層効果的のようです。特に女の人で酒皶様アクネの人では、それがよく効きますね。
 A 赤い血管がシュシュと細絡のように出ている人に。
 S こんなとき瀉血するといいのですがね。黄連解毒湯に葛根紅花湯がやはりいいように思いますよ。
 C 悪化するのを抑制することはできますが、なかなか治り切るものではありません。細菌感染は防げますが根治した例は私には一度もありません。
 S あなたはやってみたことがあるのですか。
 C 一人二人はありますが、新薬も使います。
 S ここの話では新薬は勉強になりませんね。
 C スルファミンとかエリスロマイシンで悪化するのを止めておいて、それから漢方に変えるのです。続けていると悪化しません。
 S どのくらい続けるのですか。
 C 三ヵ月ぐらいです。
 S 私のところでは治りますよ、三年も四年も続けますから。
 C 赤いのが……、
 S とれます。効くとみたら長く飲ませることですよ。
 かつて、こんなことがありました。それは十二指腸潰瘍の疑いのある人でした。潰瘍だと思ってレントゲンで見ますと、そうではなくて、十二指腸壁に中等大の憩室けいしつが一つあったのです。それが平常は何ともないのですが過食になったときなどには食物の残滓ざんしがその部分に入り込み、腐って炎症を引き起こし、刺激になって十二指腸潰瘍のときと同じように、おなかが減ったときに軽く痛んできます。その人の鼻頭は酒皶のように真赤になっていました。しかし不思義なことに、柴胡桂枝湯とか延年半夏湯を与えているうちに、いつとはなく如上の痛みもなくなり、数ヵ月のうち例の赤鼻も全く消え失せていました。
 それにしても、同じく赤鼻と言っても、ニキビ型のものと、ただの赤くなったのとでは、その治し方が違うようです。ですから、酒皶を治すのも、ただ赤鼻だけに心をとらわれて証を見つけ出そうなど考えずに、もっと身体全体に充分注意し、たとえば診察のできる人なら腹をしっかり診て、 何の反応が出ているかよく調べるとか、その病人でも問診をもっと詳しくして、その根本治療となるような手段を考えた上での治療でなくてはならないと思います。そして全体的な体質改善法の上に、局所治療剤として、たとえば葛根紅花湯を加味してみるようにしますと、期待に添うた漢方とすることができると思います。それには、病人の顔つきもさることながら、心の動きぐあい、食物の好み、大小便の様子、月経時の様子など、必ずしも腹診したり脈をとらなくても青:充分理解できるだけの域に達することが大切でしょう。


『漢方処方・方意集』 仁池米敦著 たにぐち書店刊
p.53
葛根紅花湯かっこうこうかとう
 [薬局製剤] 葛根3 地黄3 芍薬3 山梔子1.5 黄連1.5 紅花1.5 甘草1 大黄1 以上の切断又は粉砕した生薬をとり、1包として製する。

 «方輿輗ほうよげい»葛根3 地黄3 芍薬3 山梔子1.5 黄連1.5 紅花1.5 甘草1 大黄(加減する)1 

  【方意】血と津液を補って瘀血と湿邪と熱を除き、肝胆と肺大腸を調えて、血の行りを良くし上逆した気を降ろし大便を出し、酒皶鼻しゅさび(赤鼻などの病)や面皰めんほう(ニキビなどの病)などに用いる方。

  [原文訳]«方輿輗»   ○酒皶鼻しゅさびの者を療する方なり。



『薬局製剤 漢方212方の使い方』 第4版
埴岡 博・滝野 行亮 共著
薬業時報社 刊


K19. 葛根紅花湯かっこんこうかとう

出典
 原出典は不明。天保年長の名医有持桂里の著した校正方輿輗にくわしく紹介されている。

構成  主薬は葛根と紅花である。葛根の薬効は,肌の熱を発散し,酒毒を解することにある。紅花は血の滞りを散ずる。また浄血作用もあって,芍薬と共に血行を良くする。
 地黄は血熱をさまして陰をうるおし陽を退けるとされ、血糖降下作用や緩下、利尿作用も報告されている。
 大黄,黄連,山梔子は共に消炎,利尿,鎮静作用があり,鬱血炎症の除去に働いている。
 これらの相互作用によって限局性うっ血の酒査鼻(あかはな)などに効果を発揮するようである。


目標
 酒査鼻といえば本方,というほど有名であるが,そのわりには一般には使われていない。
 酒査鼻とは,頭部,顔面の充血,血管運動神経異常などの原因で鼻頭部,頬部,顎などに限局的な毛細血管拡張のため発赤が起り,組織の増殖と腫脹を伴うのをいうが,慢性的な経過をとるから,長期服用の必要がある。細野史郎先生によれば3~4年の服用が必要であるという。
  大塚先生は本方中の大黄をとり去り,黄芩,薏苡仁を加えたもので進行性指掌角皮症を治療した例を報告していられるので,他の限局的な血行障害による皮膚疾患にも本方が応用できるのではないかと思われる。

応用
1.酒査鼻。
2.酒査性痤瘡,日光皮膚炎。

留意点
◎紅花は多量に用いると瘀血をとり,少量だと血を活かすという。(岡本一抱子・和語本草綱目) 本方の分量では活血である。瘀血があれば増量するとか、桃核承気湯など他の血証剤を併用するとよい。
◎紅花は虫害をうけ易い。また色のわるいものは増量して用いる。
◎酒査花に限らず,ステロイドアクネにも効く。この場合,当帰鬚散や桃核承気湯を併用する。


文献
1.有持桂里・稿本方輿輗。大塚敬節氏所有本を燎原が影印したもの
2.有持桂里・校正方輿輗:T文政12)
3.細野史郎ら・方証吟味(昭53) P.65


K19 葛根紅花湯
成分・分量
 葛根    3.0
 地黄    3.0
 芍薬    3.0
 黄連    1.5
 山梔子   1.5
 紅花    1.5
 甘草    1.0
 大黄    1.0
以上8味  15.5
カット。500→250煎
効能・効果
あかはな,しみ
ひとこと
●酒査鼻(あかはな)に。



『改訂 一般用漢方処方の手引き』 
監修 財団法人 日本公定書協会
編集 日本漢方生薬製剤協会

葛根紅花湯
(かっこんこうかとう)

成分・分量
 葛根3,芍薬3,地黄3,黄連1.5 山梔子1.5 紅花1.5 大黄1,甘草1

用法・用量
 湯

効能・効果
 体力中等度以上で,便秘傾向のものの次の諸症:あかはな(酒さ),しみ

原典 校正方輿輗
出典 

解説
 あかはなという特殊用途の専門薬であり,長期連用しなければならない。


        生薬名
参考文献名
葛根 芍薬 地黄 黄連 山梔子 紅花 大黄 甘草
方輿輗   注1 1銭 1銭 1銭 1銭 1銭 1銭 1銭 3分
診療医典  注2 3 3 3 1.5 1.5 1.5 1 1
症候別治療 3 3 3 1.5 1.5 1.5 1 1
処方解説  注3 3 3 3 1.5 1.5 1.5 1 1
*生地黄

注1 療酒皶鼻劇症。右八味,以水四合,煮取二合,渣再以四合,煮取一合半,日二剤,服湯数日,覚患所痛痒,則将四物硫黄散,擦鼻上,當大熱発,此毒欲尽也,熱既発之後外擦則須止,内服不須止也,若病軽者,小剤減水,不用外擦薬。

注2 酒皶:頭部,顔面の充血,血管神経異常などよって発生したものには,一般に本方が用いられる。
 しかし短時日で全治するわけにはゆかないから,永く続ける必要がある。
注3 「酒皶鼻の劇証を療す」強度のものには本方を服用し,かつ四物硫黄散を外用するという。中等または軽度のものは本方を連用するがよい。また刺絡により悪血をとる。黄連解毒湯を長服するもよい。酒皶鼻(あかはな)専門の薬方である。


『210処方漢方薬物治療学 薬理的アプローチ』 原田 正敏著 廣川書店刊
p.110
20.葛根紅花湯(かっこんこうかとう)
 [処方] 甘草 1, 芍薬 3, 黄連 1.5, 葛根 3, 紅花 1.5, 山梔子 1.5, 地黄 3, 大黄 1.
 [適応症] あかはな,しみ.
 [薬効群] 皮膚疾患用薬.
 【解説】  本邦の有持桂里(1758~1835)口述の稿本方輿輗ほうよげいに「あかはなのひどい症状を治す」とある.葛根黄連黄芩湯黄連解毒湯両者のほとんどを含む. 



『日本東洋医学雑誌』 Vol. 60 (2009) No. 1 P 93-97
難治性の顔面の皮疹に葛根紅花湯が著効した3症例
大塚 静英1), 及川 哲郎1), 望月 良子1), 早崎 知幸1), 小曽戸 洋1), 伊藤 剛1), 村主 明彦1), 花輪 壽彦1) 2)
1) 北里大学東洋医学総合研究所 2) 北里大学大学院医療系研究科


要旨
難治性の顔面の皮疹に葛根紅花湯が著効した3症例を経験したので報告する。症例1は39歳男性。20歳頃より鼻に限局して丘疹が出現し,以後,塩酸ミノサ イクリンの内服にて寛解,増悪を繰り返し,いわゆる酒さ鼻となったため,2007年5月に当研究所を受診した。葛根紅花湯(大黄0.3g)を服用したとこ ろ,3週間後,鼻全体の発赤が軽減し,丘疹も減少,額・頬部の発赤も消失した。症例2は,56歳女性。鼻,口周囲を中心としたそう痒感を伴う皮疹にて 2006年10月に当研究所を受診した。ステロイド外用剤にて軽減するものの中止すると増悪を繰り返していたことより,酒さ様皮膚炎と診断した。葛根紅花 湯(甘草0.8g,去大黄)を服用し,ステロイド外用剤は同時に中止したところ,3週間後,全体的に紅斑は鼻と口周囲のみとなり,8週間後には症状はほぼ 消失した。症例3は,26歳女性。鼻口唇部の紅斑,アトピー性皮膚炎にて当研究所を受診した。黄連解毒湯にて全体的には症状が軽減するも,鼻口唇部の紅斑 は不変であったため,葛根紅花湯(大黄1g)に転方したところ,2カ月後,鼻口唇部の紅斑は消失し,6カ月後には鼻口唇部の色素沈着がわずかに残るのみと なった。葛根紅花湯は,従来,いわゆる酒さ鼻に用いられてきたが,鼻だけでなく,顔面・鼻周囲の皮疹にも応用が可能であると考えられた。
キーワード: 葛根紅花湯, 酒さ鼻, 酒さ様皮膚炎, アトピー性皮膚炎

 諸言
 葛根紅花湯は有持桂里が『稿本方輿輗』に記し,従来,いわゆる酒皶鼻に用いられてきた処方であるが,その治験例は数少ない。緒方の報告した「ニキビに当帰芍薬散加方,次で(残った顔面の赤味に)葛根紅花湯」,「洗顔後,鼻尖部が赤くなると訴える婦人に葛根紅花湯」,「酒皶に葛根紅花湯」の3例の症例報告のみである。
 今回,我々は,葛根紅花湯が,いわゆる酒皶鼻,酒皶様皮膚炎,アトピー性皮膚炎なとの皮疹に著効した3例を経験したので報告する。

 症例1:39歳,男性。
 主訴:鼻の丘疹と発赤腫脹。
 現病歴:20歳頃より鼻に吹き出物が出来たため,15年来断続的に塩酸ミノサイクリンを服用していた。最近では,月に2度程度,増悪時のみ塩酸ミノサイクリンを差用し,5日程度で丘疹は消退していた。漢方薬局にて煎じ薬(詳細不明)を半年服用するも改善しないため,2007年5月に当研究所を受診した。
 飲酒歴:なし。
 身体所見:身長175cm,体重61kg,血圧120/70mmHg。
 皮膚所見:鼻に限局した丘疹を多数認め,追全体が赤発,腫脹していた。瘙痒感はなかった。額・頬部に発赤を認めた。
 漢方所見:舌は乾湿中間,淡紅,薄い白苔を認め,脈は弦,腹診では,腹力は中等度で,両側の胸脇苦満,心下痞鞕,腹直筋攣急,小腹不仁,臍下に正中芯,両側臍傍部の圧痛,軽度の回盲・S状部の圧痛を認めた。
 経過:初診時,臨床所見からいわゆる酒皶鼻と診断し,葛根紅花湯(大黄0..3g)を処方した。先服3週間後には,鼻全体の赤発が軽減,丘疹も減少し,額・頬部の発赤は消失した。

 症例2:56歳,女性。
 主訴:鼻,口周囲を中心として瘙痒感を伴う皮疹。
 現病歴:2005年10月,顔面に散在性の紅斑と丘疹が出現し,近医にて湿疹と口唇ヘルペスと診断された。アシクロビル,ステロイド外用剤(詳細不明)の処方を受けたが,口唇ヘルペスが軽快した後も湿疹は完治には至らなかった。湿疹が悪化するたびにステロイド外用剤を使用し,さらにセレスタミン(マレイン酸クロルフェニラミンとベタメタゾンの合剤)の内服も併用したが,湿疹は一時的に軽減するものの,ステロイド外用剤を中止するとすぐに増悪を繰り返していた。他院で某社の十味敗毒湯エキス,十全大補湯エキスを服用するも改善しないため,2006年10月に当研究所を受診した。
 飲酒歴:なし。
 身体所見:身長153cm,体重56kg,血圧148/100mmHg

 皮膚所見:鼻,口周囲を中心とした瘙痒感を伴う紅斑・丘疹が散在している。鼻頭部に点状の毛細血管拡張を伴う談紅色斑と,小豆大の紅斑を認めた。気温の上昇時や発汗時に瘙痒感が増強するとのことであった。
 漢方所見:舌は,湿,薄い白苔を認め,脈は沈,腹診では,腹力は中等度,両側の胸脇苦満,軽度の心下痞鞕,腹直筋攣急,臍傍・回盲・S状部の圧痛を認めた。
 経過:初診時,経過よりステロイド外用剤の長期使用に伴う酒皶様皮膚炎と診断し,葛根紅花湯(甘草0.8g,去大黄)を処方した。ステロイド外用剤は漢方服用開始と同時に中止した。3週間後,丘疹は消失し,紅斑は鼻と口周囲のみとなり,8週間後には,紅斑もほぼ消失した。

 症例3:26歳,女性
 主訴:鼻口唇部の紅斑。
 現病歴:小児期より軽度のアトピー性皮膚炎があり,成人後も少し紅斑が出現する程度であった。2006年5月より,鼻の下,首,背中に強い瘙痒感を伴う紅斑が出現,皮膚科を受診し,塩酸オロパタジンの内服,ステロイド外用剤(詳細不明)を使用し軽減したが十分な改善がみられず,2006年6月に当研究所を受診した。
 飲酒歴:ビール1本を週3回。
 身体所見:身体171cm,体重70kg,血圧110/60mmHg。
 皮膚所見:全身の皮膚は乾燥し,鼻の下,首,背中に強い瘙痒感を伴う紅斑,特に鼻口唇部に浸潤性紅斑を認めた。
 漢方所見:舌は乾湿中間,淡紅色で無苔であり,脈は沈,腹診では,腹力は中等度,両側に軽度の胸脇苦満,腹直筋攣急を認めた。
 経過:初診時,黄連解毒湯を処方した。2ヵ月後,背中の強い瘙痒感を伴う紅斑は改善し,4ヵ月後,全体的に症状は軽減した。便秘のため4ヵ月以降大黄1gを追加した。しかし,6ヵ月経過後も鼻口唇部の浸潤性紅斑は改善せず,ステロイド外用剤を中止すると増悪するため,葛根紅花湯(大黄1g)に転方した。転方2ヵ月後,鼻口唇部の浸潤性紅斑は消失し,色素沈着のみとなり,瘙痒感も消失した。変方6ヵ月後には鼻口唇部の色素沈着がわずかに残るのみとなった。

 考察
 葛根紅花湯の原典は,有持桂里(1758-1835)が記した『稿本方輿輗』(第12・鼻)で,「葛根紅花湯は酒査鼻のはげしき者にて重きものは腫れあがる者なり。黄連解毒湯は腫れるに及ばずして軽きものなり。葛根紅花湯は鼻疣が出来て癩の如くに鼻がなる者なり。それには,黄連解毒はちと届き兼ぬるなり。酒査鼻は自ら痛きことはなきものなり。痒みはあるものなり。」とある。その構成生薬は,大黄,黄連,山梔子,葛根,芍薬,生地黄,紅花,甘草で,北里大学東洋医学総合研究所では,葛根・芍薬・地黄各3g,黄連・山梔子・紅花各1.5g,甘草1g,大黄(適量)を用いており,治酒査鼻方に葛根を加えたものである。
 治酒査鼻方は,『勿誤薬室方函口訣』に,「此の方は三黄瀉心湯に加味したる者にて,総じて面部の病に効あり。酒査鼻に限るべからず。若し瘡膿ある者,大弓黄湯治頭瘡一方)に宜し。清上防風湯は二湯より病勢緩なる処に用ゆ。」とある。治酒査鼻方の構成生薬の薬効は,大黄,黄連,山梔子は清熱作用,芍薬,地黄は四物湯加減で血の道を滑らかにし,紅花には強い駆瘀血作用がある。葛根紅花湯は治酒査鼻方に葛根が加わるため,前述の薬効を顔面に引き上げる方意を持つものと考えられる。
 葛根については,岡本一抱(1655-1716)の記した『和語本草綱目』に,「葛根は胃熱を解きて渇を止む。酒毒を消す。肌熱を解て汗を発し,痘瘡,斑疹出難きを発し,陽明の頭痛を治する聖薬なり。」とある。つまり,葛根は,鼻症状の原因となる胃熱を去り,津液を増やして口渇を軽減し,酒毒を消し,皮膚の熱を去って,汗を出し,痘瘡,斑疹を皮膚から出し尽くす作用がある。葛根紅花湯は,治酒査鼻方の清熱および駆瘀血作用に加え,葛根が鼻の症状 をきたす胃熱を清する薬能をもつために,いわゆる酒齄鼻に有効な処方とされるものと考えられる。
  今回提示した3例のうち,1例目はいわゆる酒齄鼻と考えられる。諸方の報告によると,十分な効果が得られるまで4ヵ月から1年程度の服用が必要であったが,本例では3週間後に明らかな皮疹の改善が認められた。後述の2例も,8週間後には著明な皮疹の改善が得られており,葛根紅花湯の効果は比較的速やかに現れると考えられる。2例目は酒齄様皮膚炎だが,炎症所見が強く,消炎作用をもつ生薬を多く含む本方が,特に有効であったと考えられる。通常みられるステロイド外用剤の中断によるリバウンドもみられず,速やかな軽快をみた。3例目はアトピー性皮膚炎であり酒齄ではないが,鼻口唇部に炎症を繰り返して形成された紅斑があり,その酒齄にも似た,厚みを持った所見を参考に本方を撰択したところ著効を呈した。本例の罹患部位は瘀血を伴うと考えられ,駆瘀血作用のある葛根紅花湯が有用なのではないかと推察される。
 葛根紅花湯は,従来,「酒査鼻専門の薬方である」とされ,実際そのように選用されてきたと思われるが,より広く顔面の難治性湿疹などに応用が可能であると考え,若干の文献的考察を加えて報告した。

 結語
 鼻・口周囲を中心とした顔面の皮疹に対して,その部位や局所的な炎症所見,瘀血所見を参考に葛根紅花湯を処方し,著効を得た3症例を経験した。葛根紅花湯は,従来,いわゆる酒齄鼻に対して用いられてきたが,鼻だけでなく,顔面・鼻周囲の皮疹にも応用が可能な処方であると考えられた。今後症例を集積し,より詳細な葛根紅花湯の使用目標について検討してゆきたい。

 附記 顔写真の掲載に関しては,患者から書面による承諾を得ている。
 本稿は第58回日本東洋医学会総会(広島・2007年)において報告した。
 本稿で投与した,葛根紅花湯の構成と生薬集散地は以下の通りである。
 葛根紅花湯:葛根(3.0g,四川省),芍薬(3.0g,奈良県),地黄(3.0g,河南省),黄連(1.5g,岐阜県),山梔子(1.5g,江西省),紅花(1.5g,四川省),炙甘草(1.0g,内蒙古),大黄(適宜,四川省)

 文献
1) 有持桂里:「稿本」方輿輗,江戸時代期写,巻15,鼻,28丁裏,燎原書房影印(1973)
2) 矢数道明:臨床応用漢方処方解説,増補改訂版,646,創元社(1981)
3)  緒方玄芳:ニキビに当帰芍薬散加方,次で葛根紅花湯,漢方診療おぼえ書(48),漢方の臨床,27,482-483 (1980)
4)  緒方玄芳:鼻が赤くなると訴える婦人,漢方診療おぼえ書(78),漢方の臨床,30,91-92 (1983)
5)  緒方玄芳:酒齄に葛根紅花湯,漢方診療おぼえ書(136),漢方の臨床,298-299 (1983)
6) 花輪壽彦監修:北里研究所東洋医学総合研究所漢方処方集,52,医聖社(2003)
7) 浅田宗伯:勿誤薬室方函口訣,近世漢方医学書集96影印,67,名著出版 (1982)
8) 岡本一抱:和語本草綱目(1),近世漢方医学書集成7影印,491-492,名著出版 (1979)


『日本東洋医学雑誌』 Vol. 60 (2009) No. 1 P 93-97
漢方治療が奏効した酒皶 の10症例
 桜井 みち代a), 本間 行彦b) 
a 桜井医院,静岡,〒439‐0006 菊川市堀之内201
b 北大前クリニック,北海道,〒001‐0014 札幌市北区北十四条西2丁目5

Ten Cases of Rosacea Successfully Treated with Kampo Formulas
Michiyo SAKURAIa Yukihiko HONMAb
a Sakurai Clinic, 201 Horinouchi, Kikugawa, Shizuoka 439-0006, Japan
b Hokudaimae Clinic, 5 Nishi 2 chome, Kita 14 jo, Kitaku, Sapporo 001-0014, Japan

 要旨
 難治性の中高年の女性にみられた第1,2度の酒皶の10症例に,漢方治療を行い,著効を得たので,報告する。患者の年齢は,46歳から81歳までで,平均 年齢は60.6歳,発病から受診までの期間は1カ月前から5,6年前までで,平均期間は約2.2年であった。奏効した方剤は,大柴胡湯黄連解毒湯の併用 が7例,葛根紅花湯が3例であった。後者のうち,1例は葛根紅花湯のみ,1例は始め葛根紅花湯で治療し,のち白虎加人参湯加味逍遙散の併用に転方した。 残りの1例は桂枝茯苓丸黄連解毒湯で開始,のち葛根紅花湯に転方した。本病に大柴胡湯黄連解毒湯の併用,または葛根紅花湯が治療の第一選択として試み る価値がある。
キーワード: 酒皶,大柴胡湯黄連解毒湯,葛根紅花湯

 緒言
 酒皶 は中高年の顔面にびまん性発赤と血管拡張をきたす慢性炎症性疾患であり,原因は不明で,難治性である。重症度によって3段階に分類される。第 1度は鼻尖,頬,眉間,オトガイ部に一過性の紅斑が生じ,次第に持続性となり,毛細血管拡張と脂漏を伴うようになる。瘙痒,ほてり感,易刺激性などの自覚症状がある。第2度は上記症状に,毛孔一致性の丘疹,膿疱が加わり,脂漏が強まり,病変が顔面全体に広がる。第3度は丘疹が密集融合して腫瘤状となる。とくに鼻が赤紫色となり,ミカンの皮のような凸凹不整となる。第1,2度は中年以降の女性に好発するが,第3度は男性に多い1 ) 。今回,中高年の女性にみられた第1,2度の酒皶1 0例に対し,漢方治療を行い,著効を得たので報告する。

症例1 :50歳,女性。
 初診:2005年2月。 現病歴:3,4年前から顔面発赤し,複数の皮膚科で治療を受けたが改善しないため,来院した。
 既往歴,家族歴に特記すべきことなし。
 現症:154cm,54kg。飲酒歴はない。肩こりがひどい。口渇著明。
 皮膚所見:両側頬全体が潮紅し,額,顎部,鼻梁部まで紅斑を認めた。紅斑上に細かい丘疹や一部膿疱が多数みられ,熱感と瘙痒がある。
 漢方医学的所見:脈候は虚実中間。舌候は乾燥し,やや濃い赤色,薄い白苔を認めた。舌下静脈の怒張や歯圧痕はない。腹候では,腹力はやや充実しており,両下腹部に圧痛を認めたが,胸脇苦満はない。
 経過:初診時,顔面の紅斑,熱感と痤瘡様の丘疹が多数みられること,および腹診で下腹部圧痛が あることから,黄連解毒湯桂枝茯苓丸加薏苡仁を処方したが,無効であった。さらに膿疱を目標として,十味敗毒湯を併用したり,黄連解毒湯を同じく清熱剤の桔梗石膏排膿散及湯に転方するもまったく効果がみられなかった。7カ月後,著明な肩こりと顔面の痒みより,大柴胡湯7. 5 g +黄連解毒湯7.5gに転方したところ,著明に改善した。13カ月後,ほぼ顔面の紅斑は消失したため,廃薬した。

症例2:46歳,女性。
 初診:2005年6月。
 現病歴:5,6年前から顔面に紅斑が出現した。2ヵ所の皮膚科で治療を受けたが改善しないため受診した。
 既往歴:19歳のとき虫垂炎から腹膜炎をおこしたことがある。子宮筋腫あり。
 家族歴:特になし。
 現症:160cm,57kg。お酒はたまにたしなむ程度。疲れやすい。イライラする。月経時頭痛あり。下痢しやすい。足が冷える。やや寒がり。肩こり。腰痛あり。夕方に下肢に浮腫が出現する。血圧100/60mmHg。
 皮膚所見:眼周囲と鼻の下以外の,ほぼ顔面全体に紅色の紅斑を認めた。触るとざらざらした触感がある。熱感と軽度の瘙痒感を伴う。
 漢方医学的所見:脈候は虚実中間。舌候は紅でやや熱証。軽度の瘀斑を認める。腹候では腹力やや充実しており,胸脇苦満あり。両腹直筋緊張。
 経過:初診時に,桂枝茯苓丸加薏苡仁5g+清上防風湯5g+白虎加人参湯6gを処方した。これ仲;少し楽になったというが,顔面紅斑には変化がない。1ヵ月後,扁桃に膿を認めたため,黄連解毒湯7.5g+小柴胡湯加桔梗石膏7.5gに転方したところ,やや顔面の紅斑が減少した。しかし腹満とガスがよく出ると訴えたため,腹証を考慮し,4ヵ月後に大柴胡湯7.5g+黄連解毒湯7.5gに転方した。以後次第に紅斑は消退し,14ヵ月後終診。

症例3:54歳,女性。
 初診:2005年5月。
 現病歴:5年前より顔面に潮紅が出現し,4年間某皮膚科でステロイドやケトコナゾール・クリームにより加療されていたが無効であったため,受診した。
 既往歴:40歳から頭痛あり。
 現症:160cm,55kg,1年前に閉経。便通はよい。飲酒歴はない。イライラして怒りっぽい。口内炎ができやすい。暑がり。
 皮膚所見:両頬と額に紅斑と,その上に細かい丘疹を多数認める。顔面にのぼせ感と軽い痒み,および軽度の浮腫を認める。
 漢方医学的所見:脈候は虚実中間。舌候は湿,薄白黄苔,歯圧痕あり。腹候では,腹力がやや充実している。胸脇苦満はない。
 経過:初診時,瘙痒を伴い熱感があることより三物黄芩湯を,また顔面の浮腫より猪苓湯を,あるいは軽い清熱剤として滋陰降火湯を,顔ののぼせから桂枝茯苓丸加薏苡仁を,強い清熱剤として黄連解毒湯桔梗石膏などを使用してみたが,いずれも無効であった。4ヵ月後,イライラして怒りっぽく,顔面潮紅より肝火上炎を考え,大柴胡湯(7.5g)に転方し,これに口内炎ができやすく,顔面紅斑と熱感より黄連解毒湯(7.5g)を併用したところ,漸次顔面紅斑は消退した。10ヵ月後,終診。

症例4:58歳,女性
 初診:2008年2月。
 既往歴:50歳,子宮筋腫のため子宮を全摘,高脂血症。56歳,誘因なく,顔面紅斑をきたし,桂枝茯苓丸越婢加朮湯により,2ヵ月で治癒したことがある。
 現病歴:4ヵ月前より顔面に紅斑が出現した。近医でステロイド軟膏を処方されたが,無効であったため受診した。
 現症:150cm,48kg。自汗あり。暑がり。便通はよい。口渇や肩こりはない。イライラしやすい。血圧126/84mmHg。
 皮膚所見:両頬,額,顎全体に紅斑を認める。触るとざらざらした触感があるが,丘疹は目立たない。ほてり感と痒みがある。
 漢方医学的所見:脈候はやや弱い。舌候は薄白苔。歯圧痕はなし。腹候では腹力やや充実~中等度。胸脇苦満あり。
 経過:初診時,過去に有効だった桂枝茯苓丸7.5g+越婢加朮湯7.5gを処方したが,今回はまったく効果はみられなかった。3週間後,イライラ感と胸脇苦満,顔面紅潮を目安に,大柴胡湯7.5g+黄連解毒湯7.5gに転方したところ,5週間後に紅斑は消失した。

症例5:48歳,女性
 初診:2009年1月
 現病歴:4ヵ月前から顔面の紅斑が出現し,次第に頬全体,額,顎に拡大した。瘙痒感と顔面の熱感を伴うため受診した。
 既往歴:高脂血症。
 現症:161cm,52kg,便通は2,3日に1回。月経は最近不順になってきた。頭痛あり。朝に顔が,夕には足がむくむ。肩こり,腰痛あり。足が冷える。自汗はない。寝汗は少しかく。手掌は汗ばんでいる。寒がり。上熱下寒あり。
 漢方医学的所見:脈候は沈弦。舌候は乾燥,紫青色,舌体はやや厚い。舌下静脈怒張あり。腹候では,腹力やや充実しており,上腹部がかたく張っている。胸脇苦満あり。末梢血,肝機能,血清脂質の検査では異常なし。抗核抗体陰性。
 経過:初診時,肩こり,胸脇苦満を目安に大柴胡湯7.5gを,それに顔面紅斑と熱感,瘙痒より黄連解毒湯7.5gを併用した。以後次第に紅斑が消退し,3ヵ月後には殆ど紅斑は消失した。4ヵ月後終診。


症例6:73歳,女性。
 初診:2009年1月。
 現病歴:5,6年前より顔面紅潮が出現するようになり,某病院で加味逍遙散を約1年間内服したが無効であった。1年前より増悪し,常時顔面紅潮を認め,顔面に熱感を自覚し,頭皮まで発赤が拡大するようになった。人前に出るのがつらいとの訴えで来院した。
 既往歴:5年前帯状疱疹。
 現症:154cm,55kg。飲酒歴はない。便通は2,3日に1回,食欲亢進,めまいはたまにある。顔ののぼせ感が強い。肩こりあり,咽がつまった感じがある。自汗。体は熱く感じる。足は冷たい。抗肌抗体陰性。血圧150/84mmHg。
 漢方医学的所見:舌候では薄黄苔を認める。舌質は紫赤色。脈候は弦。腹候では,腹力充実し,膨満し,胸脇苦満を認める。
 経過:初診時,腹力良く胸脇苦満より大柴胡湯7.5gを,それに紅斑,のぼせ,熱感より黄連解毒湯7.5gを併用した。1ヵ月後,紅斑は軽減し,便秘も解消した。3ヵ月後,著明改善し,顔の正中部が少し赤いのみとなる。5ヵ月後,日中は殆ど紅斑は目立たないが,入浴後に増悪するため,口渇を目標に白虎加人参湯12錠に転方した。入浴後も殆ど紅斑は目立たなくなり,同4錠を14日分処方して終診とした。

症例7:58歳,女性
 初診:2008年12月。
 現病歴:2008年8月に顔面に小紅斑。小丘疹が出現した。某皮膚科でステロイドの外用,内服で治療うけるも無効。瘙痒感は認めなかったが,逆に皮疹は拡大したため受診した。なお、この間に化粧品の変更はなく,日光皮膚炎の既往もない。
 既往歴:1999年子宮筋腫のため,子宮摘出術を受けている。
 家族歴:父が肺癌で65歳時死亡。
 現症:152cm,57kg,飲酒歴はない。便通はよい。夜間尿2回。温かい所に行くと顔がのぼせる。肩こりあり。乗り物酔いする。暑がり。自汗。イライラ感はない。末梢血,血液生化学的検査は正常。抗核抗体陰性。
 漢方医学的所見:脈候は虚実中間。舌候では薄い白膩苔を認め,胖大し,舌質は灰色暗赤色。腹証では,腹力やや充実しており,胸脇苦満はない。
 皮膚所見:両頬鮮紅色で,細かい丘疹が多い。顔面に軽度の浮腫を認める。
 経過:初診時,葛根紅花湯(葛根3g,芍薬3g,地黄3g,黄連1.5g,山梔子1.5g,紅花1.5g,大黄0.5g,甘草1g)を処方した。2週間後,紅斑が軽減し,皮膚表面の細かい丘疹が殆ど消失した。1ヵ月後,煎じ薬作用の手間のためエキス剤を希望し,桂枝茯苓丸加薏苡仁7.5g+黄連解毒湯7.5gに変更した。しかし,紅斑が増悪し、さらに瘙痒感とイライラ感が出現した。舌に黄膩苔を認め,顔面紅潮・イライラ感・胸脇苦満を目標に大柴胡湯7.5gを店方し,瘙痒・紅斑・のぼせを目標に黄連解毒湯7.5gを併用したところ,赤味が著明に減少した。以後同じ処方を継続し,7ヵ月後には紅斑はほぼ消失した。ほてりや瘙痒も消失し,よく眠れるようになった。炎症後の色素沈着があり,少し顎がざらざらしているため,桂枝茯苓丸加薏苡仁5g+温清飲5gに転方した。9ヵ月後,炎症後の色素沈着も軽快し,治癒に至った。


症例8:80歳,女性。
 初診:2009年3月。
 現病歴:半年前から両頬に発赤が出現。瘙痒はないが熱感があるため,受診した。
 既往歴:高脂血症。骨粗鬆症。膝関節痛。耳鳴り。鼻炎。
 現症:背のまがった小柄な女性。飲酒歴はない。便秘で,酸化マグネシウム(マグラックス4錠)を服用している。夜間尿2回。寝付きが悪く入眠に約1時間かかる。疲れやすい。セミの泣き声のような耳鳴りと肩こりがある。咳が出やすい。足が冷える。手足にしもやけを認める。寒がり。血圧155/90mmHg。
 漢方医学的所見:脈候は浮実弦。舌候は乾燥,白苔,舌質は絳,舌体はやや痩せている。舌下静脈の怒張あり。腹候では,腹力中等度,胸脇苦満と小腹不仁を認める。
 経過:健診時,酒皶鼻専門の薬方といわれる葛根紅花湯(葛根3g,芍薬3g,地黄3g,黄連1.5g,山梔子1.5g,紅花1.5g,大黄1g,甘草1g)を処方した。2週間後,顔面の赤味が半減した。また寝付きがよくなり,夜間尿も消失した。便通も改善し,下剤の服用量が半減した。1ヵ月半後,紅斑はほぼ消失し,2ヵ月後に終診。

症例9:81歳。
 初診:2009年11月。
 現病歴:1年前から顔面に紅斑が出現し,近医で治療(プロトピック軟膏外用)を受けているが無効。
 既往歴:25歳,虫垂炎。52歳,腸閉塞。腰痛あり。
 現症:135cm,48kg。飲酒歴はない。便通一日1回。夜間尿2回。足が冷えるので,靴下をはいて寝ている。毎朝少し痰が出る。末梢血及び血液生化学的検査正常。体温36.8度。血圧134/72mmHg。
 皮膚所見:両頬全体と眼瞼に紅斑がみられる。痒くはない。
 漢方医学的所見:舌候は乾燥,薄白苔,正常赤色。脈候は虚実中間。腹候では腹力やや軟弱,小腹不仁を認める。
 経過:初診時,葛根黄連黄芩湯(葛根6g,黄連3g,黄芩3g,甘草2g)を処方。1週間後,炎症症状がやや消退して,鮮やかな赤色が少し褪色した。まだ熱感がある。煎じ薬の手間を考え,桂枝茯苓丸5g+黄連解毒湯5gに変更した。1ヵ月後,紅斑は半減した。「肌がつるつるしてきて,手も皮がむけなくなった」,という。2ヵ月半後には紅斑は7割方減退していたが,腰が冷えて眠れない,と訴え,血圧も172/80mmHgに上昇した。腰痛と手足湿疹もあるため,八味地黄丸5g+桂枝茯苓丸5gに変更したところ,その2週間後の再診時に悪化していた。そのため,始めの葛根黄連黄芩湯も考えたが,酒皶鼻に有効とされる葛根紅花湯(大黄0.5g)を試みることにした。これにより,漸次紅斑が薄くなり,6ヵ月後,完治した。

症例10:68歳,女性。
 初診:2009年2月。
 現病歴:1ヵ月前より顔面に紅斑が出現し,一部落屑を伴う。痒みはないが,ヒリヒリした刺激感とほてり感がある。
 既往歴:高血圧,ドライアイ。
 現症:154cm,54kg。飲酒歴無し。足にしもやけができやすい。便通は2,3日に1回。夜間尿1,2回。眼のまわりにくまがある。朝顔がむくむ。足は冷えないが,暑がり。自汗。口角炎を認める。末梢血および血液生化学的検査正常。
 皮膚所見:頬,額,顎,鼻に広く左右対称性に紅斑がみられる。
 漢方医学的所見:舌候は乾湿半ば,薄白苔,舌質は濃い赤色,舌下静脈怒張,脈候は虚実中間。腹候では,腹力中等度,胸脇苦満と小腹不仁を認める。臍上悸を触れる。
 経過:初診時,便秘と胸脇苦満,および顔面の熱感と紅斑より,大柴胡湯5g+黄連解毒湯5gを処方。しかし,紅斑に変化がないため,1ヵ月後,大柴胡湯7.5g+黄連解毒湯7.5gに増量したが無効。2ヵ月後に葛根紅花湯(大黄1g)に転方した。これにより紅斑は7割方減少した。しかし,4ヵ月後,誘因なく急に悪化して丘疹,落屑がみられ,浮腫の状態と考えられたため,三物黄芩湯5g+越婢加朮湯5g+加味逍遙散5gに変更し,3週間で急性症状は消失し,顔面紅斑は3週間前の状態に戻った。その後,夏になり,よく汗をかき,暑がりで口渇があること,および舌証より瘀血が考えられるため,白虎加人参湯6g+加味逍遙散5gに転方した。これにより,すみやかに紅斑は消退し,6ヵ月後完治した。

表1

症例 年齢 発症から受診まで 肩こり
イライラ
胸脇苦満 腹力 有効と考えられた方剤 治薬期間
1 50 3,4年 やや充実 大柴胡湯黄連解毒湯 13ヵ月
2 46 5,6年 やや充実 大柴胡湯黄連解毒湯 14ヵ月
3 54 5年 やや充実 大柴胡湯黄連解毒湯 10ヵ月
4 58 4ヵ月 やや充実
~中等度
大柴胡湯黄連解毒湯 5週間
5 48 4ヵ月 やや充実 大柴胡湯黄連解毒湯 4ヵ月
6 73 5,6年 充実 大柴胡湯黄連解毒湯 6ヵ月
7 58 4ヵ月 やや充実 大柴胡湯黄連解毒湯 9ヵ月
8 80 6ヵ月 中等度 葛根紅花湯 2ヵ月
9 81 1年 やや軟弱 桂枝茯苓丸黄連解毒湯
 → 葛根紅花湯
6ヵ月
10 68 1ヵ月 中等度 葛根紅花湯 → 
白虎加人参湯加味逍遙散
6ヵ月




考察
 10例のまとめを表1に示す。大柴胡湯黄連解毒湯が奏効した症例は7症例,葛根紅花湯が奏効した 症例が1例,桂枝茯苓丸黄連解毒湯から始め,後,葛根紅花湯に転方して改善した症例が1例,葛根紅花湯で治療開始し,かなり改善していたが,その後 悪化したため,白虎加人参湯加味逍遙散に変更し た症例が1例であった。 漢方医学的に頭頸部は陽が盛んな所とされて,熱を帯びやすい。各種の熱は上昇して顔面に集まり,皮膚表面の血絡を赤く目立たせる。そのため,駆瘀血剤や清熱剤が必要となる。桂枝茯苓丸加味逍遙散のような駆瘀血剤や,黄連解毒湯白虎加人参湯などの清熱剤が奏効したのはこのためと考えられる。大柴胡湯黄連解毒湯が奏効した7症例において,全例腹力は充実していた。また胸脇苦満を示したのは4例にすぎなかったが,肩こりやイライラ感は全例に認められた。この7例は生来のイライラしやすい性質がストレスなどによって鬱結し,長期化するうちに鬱熱を生じ,化火して酒皶を生じた肝火上炎型と考えられる。顔面は三陽経の支配領域であり,太陽経,陽明経,少陽経が関与している。大柴胡湯は『傷寒論』の第136条に「傷寒十余日,熱結して 裏にあり,復た往来寒熱する者は大柴胡湯を与う」 とあり,少陽病に陽明腑証が併存した少陽と陽明の 併病に用いられる2)大柴胡湯の少陽経,陽明経の 通利をよくする作用により,酒皶に奏効したものと考えられる。
 黄連解毒湯は『外台秘要』を原典とし,その構成生薬は黄連,黄芩,黄柏,山梔子である。黄連が中焦の火を,黄芩が上焦の火を,黄柏が下焦の火を瀉 し,山梔子は三焦の火を通瀉し,あわせて,本方は上中下の三焦に火毒熱盛が充斥した場合の常用薬である3) 。高熱,煩燥,皮膚化膿症,不眠,鼻出血などのほか,アトピー性皮膚炎の著明な紅斑と瘙痒のあるときに頻用される。牧野は酒皶の肝火上炎型で体力があり,イライラしやすく,血圧も高い者に大柴胡湯黄連解毒湯加紅花が良いと述べている4)
 葛根紅花湯は有持桂里の記した『稿本方輿輗』が原典で5),従来,「酒皶鼻専門の薬方」とされてきた。 その構成生薬のうち,大黄,黄連,山梔子は清熱し, 芍薬,地黄,紅花は駆瘀血し,葛根は胃熱を去り, 斑疹を皮膚から出し尽くす作用がある。最近,酒皶以外にも難治性の顔面皮疹に著効した報告がある6) 。 この処方が奏効した3症例は,大柴胡湯黄連解毒湯が奏効した7症例に比べると,腹力は弱かった。
 酒皶によく似た病変に酒皶様皮膚炎がある。接触性皮膚炎や日光皮膚炎,アトピー性皮膚炎,脂漏性皮膚炎などの基礎疾患があり,ステロイドを外用し続けたためにおこる医原性の疾患である。その経過は各基礎疾患により異なるので,ここでは酒皶様皮膚炎は含まず,酒皶のみに限定して報告した。
 酒皶様皮膚炎に対する漢方薬の効果はしばしば報 告されているが4)6)7),酒皶に対する報告は少ない。 松田邦夫は35歳の女性に葛根黄連黄芩湯で3カ月で治癒した例を8),また大塚静英らは39歳の男性の酒皶鼻が葛根紅花湯で治癒した例をそれぞれ報告して いる6)。また前田学は71歳の男性に消風散で,49歳の男性に桂枝茯苓丸で著効した例を報告している9)
 酒皶の治療について,成書では葛根紅花湯を第一にあげ,ついで黄連解毒湯葛根黄連黄芩湯防風通聖散を推奨している10) 。坂東は葛根紅花湯を第一にあげ,エキス剤では第1度の酒皶には温清飲桂枝茯苓丸加大黄を,第2~3度には荊芥連翹湯防風通聖散通導散,または荊芥連翹湯防風通聖散桂枝茯苓丸を推奨している11)。酒皶では真皮毛細血管の拡張と周囲に円形細胞が浸潤し,鼻や頬にはうっ血や充血がみられ,瘀血と考えられる。このため桂枝茯苓丸温清飲で血行障害と炎症を改善し, 紅花を加えて瘀血を除く目的と考えられる。また防風通聖散は,酒皶の患者にはしばしば臓毒体質のも のがみられるためであろう。牧野4) はアルコールの飲み過ぎなどによる湿熱証の酒皶には黄連解毒湯加紅花や,黄連解毒湯治頭瘡一方を推奨している。 今回ここに報告した症例はいずれもアルコール摂取やタバコの吸い過ぎ,油っこい食事の多用などはな く,臓毒証体質は否定的であった。

 結語
 中年女性にみられた第1,2度の酒皶に漢方治療 を行い,著効を得た10症例を経験した。効果のあった主な方剤は大柴胡湯黄連解毒湯が7例,葛根紅花湯が1例,桂枝茯苓丸黄連解毒湯および葛根紅花湯が1例,葛根紅花湯および白虎加人参湯加味逍遙散が1例であった。第1度または第2度の酒皶の治療には,実証には大柴胡湯黄連解毒湯,虚実中間証または虚証には葛根紅花湯を第一選択肢として試みる価値があると考える。

 附記:本稿で使用した漢方エキス剤は,症例1, 2,3にはコタロー桔梗石膏を,症例6にはクラシエ 白虎加人参湯を,その他はツムラ社製のエキス剤を使用した。
 また,葛根紅花湯,および葛根黄連黄芩湯の生薬集散地は以下の通りである。
 葛根:四川省,芍薬:四川省,地黄:山西省,黄連:四川省,山梔子:安徽省,紅花:新疆,大黄:青海省, 甘草:内蒙古,黄芩:河北省。


 文献
 1)清水宏:あたらしい皮膚科学,317~318,中山書店, 東京,2005
 2)高山宏世:傷寒論を読もう,155,東洋学術出版社, 千葉,2008
 3)神戸中医学研究会:中医臨床のための方剤学,139~ 140,医歯薬出版,東京,2005
 4)牧野健司:皮膚疾患の漢方治療,66~70,新樹社書林, 東京,1995
 5)有持桂里:「稿本」方輿",江戸後期写,巻15,鼻,28 丁裏,燎原書房影印(1973)
 6)大塚静英,及川哲郎,望月良子,早崎知幸,小曾戸洋, 伊東剛,村主明彦,花輪壽彦:難治性の顔面の皮疹に 葛根紅花湯が著効した3症例,日東医誌 60,1,93‐ 97,2009
 7)中西孝文:酒皶のびまん性紅斑に対する十味敗毒湯の 効果およびアトピー性皮膚炎と酒$の合併について, 「皮膚科における漢方治療の現況8」67‐88,皮膚科 東洋医学研究会 総合医学社,東京,1997
 8)松田邦夫:酒皶に葛根黄連黄芩湯,「症例による漢方 治療の実際」382,創元社,1997
 9)前田学:酒皶(Ⅰ度)「皮膚疾患と瘀血,―レーダー グラフを用いた検討―」41‐43,緑書房,東京,1995
 10)大塚敬節・矢数道明・清水藤太郎:漢方診療医典,306 ~307,南山堂,東京,1994
 11)坂東正造「山本巌の漢方医学と構造主義:病名漢方治 療の実際」384~385,メディカルユーコン,京都,2002



【添付文書等に記載すべき事項】
 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
1.次の人は服用しないこと
   生後3ヵ月未満の乳児。
    〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕

2.授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること



 相談すること 
 1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
  (1)医師の治療を受けている人。
  (2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
  (3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。

  (4)胃腸が弱く下痢しやすい人。

  (5)高齢者。
        〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
  (6)次の症状のある人。
        むくみ
        〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
  (7)次の診断を受けた人。
        高血圧、心臓病、腎臓病
        〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
  (8)次の医薬品を服用している人。
      瀉下薬 ( 下剤 )

2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

関係部位 症状
消化器 食欲不振、胃部不快感、はげし い腹痛を伴う下痢、腹痛



まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。

症状の名称 症状
偽アルドステロン症、
ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)
含有する製剤に記載すること。〕


3.服用後、次の症状があらわれることがあるので、このような症状の持続又は増強が見られた場合には、服用を中止し、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
  軟便、下痢

4.1ヵ月位服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬 剤師又は登録販売者に相談すること

5.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
   〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕


 〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕

(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
   〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す
ること。〕
  1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注
意すること。
    〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
  2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
    〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
  3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ
服用させること。
    〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」を してはいけないこと に記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕


保管及び取扱い上の注意
 (1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
   〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕

 (2)小児の手の届かない所に保管すること。

 (3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
   〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕



【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】


注意
1.次の人は服用しないこと
   生後3ヵ月未満の乳児。
   〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕

2.授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること


3.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
 (1)医師の治療を受けている人。
 (2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
 (3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。

 (4)胃腸が弱く下痢しやすい人。
 (5)高齢者。   〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
 (6)次の症状のある人。
   むくみ
   〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
 (7)次の診断を受けた人。
   高血圧、心臓病、腎臓病
   〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
 (8)次の医薬品を服用している人。
   瀉下薬 ( 下剤 )


3´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
  〔3.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には3´.を記載すること。〕
4.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
5.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕