健康情報: 苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)の効能・効果と副作用

2014年1月29日水曜日

苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)の効能・効果と副作用

漢方診療の實際 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊

苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)
茯苓六・ 乾姜 白朮各三・ 甘草二・
本方は水中に坐するが如き腰冷感・身体倦重感を目標にして用いられる。小便は稀薄で量が多い。脈は沈んで弱い。この病症も一種の水分不循・血行不調による ものであるから、茯苓と朮が主となっている。乾姜は温薬で血行を盛んにし寒冷を去り、茯苓の薬効を助けるものである。今本方と苓桂朮甘湯とを比較するに、 その差異は乾姜と桂枝の出入にある。同じく水分不循・血行不調を治するのであるが、その病症を異にしている。桂枝の配伍は眩暈を治し、心悸亢進を治する。 乾姜の配伍は専ら寒冷を去るのである。ここに於て薬物配伍の妙用を知らねばならない。
本方の応用は腰痛・腰冷・坐骨神経痛・帯下・遺尿・小児夜尿症である。



漢方薬の実際知識 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
11 駆水剤(くすいざい)
駆水剤は、水の偏在による各種の症状(前出、気血水の項参照)に用いられる。駆水剤には、表の瘀水を去る麻黄剤、消化機能の衰退によって起こ る胃内停水を去る裏証Ⅰ、新陳代謝が衰えたために起こった水の偏在を治す裏証Ⅱなどもあるが、ここでは瘀水の位置が、半表半裏または裏に近いところにある ものについてのべる。

7 苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)  (金匱要略)
〔茯苓(ぶくりょう)六、乾姜(かんきょう)、白朮(びゃくじゅつ)各三、甘草(かんぞう)二〕
本方は、苓桂朮甘湯の桂枝のかわりに乾姜を加えたものである。本方には、気の上衝がないため、水毒は下半身に集まるが、苓桂朮甘湯の水毒は上 半身に集まる。また、温補作用は苓桂朮甘湯よりも強いが、利尿作用では劣っている。したがって、本方は腰以下に寒冷と水を訴えるもので、腰部の冷重感(水 中に坐しているような感じ)、冷痛、倦怠感、尿利異常などを目標とする。また、本方は人参湯(前出、裏証Ⅱの項参照)の人参を去り、茯苓を加えた薬方とし ても考えられ、停水は激しいものである。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、苓桂朮甘湯證を呈するものが多い。
一 夜尿症、遺尿症その他の泌尿器系疾患。
一 湿疹その他の皮膚疾患。
一 そのほか、坐骨神経痛、腰痛、脚痿弱症、帯下など。


《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集中日漢方研究会
82.苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう) 傷寒論 金匱要略
  茯苓6.0 乾姜3.0 白朮3.0 甘草2.0

(金匱要略)
○腎著之病,其人身体重腰中冷,如坐水中,形如水状,反不渇,小便自利,飲食如故,病属下焦,身労汗昔,衣裏冷湿,久々得之,腰以下冷痛,腰重如帯五千銭,本方主之(五蔵風寒)


現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
 腰部から下肢にかけて,ひどい冷感を自覚し,腰冷痛,身体倦怠感を伴い,排尿回数,量ともに多いもの。
 下腹部,腰部,下肢などの冷感が著しくあたかも水中に座っているような,腰冷感と腰冷痛を自覚する前記疾患に用いられる。すなわち腎臓機能が悪く水分代謝障害と,これに伴う血行障害があって,苓甘姜味辛夏仁湯に似た感はあるが,同方の水毒症状は下身半にあって,身体冷重感や倦怠感,腰痛と利尿障害を主訴とする点で異なる。したがって本方を応用する疾患は坐骨神経痛や冷え症の腰痛が最も多いが,下身半の著明な冷感という病証が類似するものに桂枝加朮附湯八味丸当帰芍薬散五積散などがある。

桂枝加朮附湯> 四肢の著しい冷感とマヒ感が対象になる。これは本方が水分代謝障害が主であるに対し,桂枝加朮附湯は内分秘障害と水分代謝障害の傾向があるもので,冷え,マヒ,痛みを四肢に自覚するので本方と区別ができる。
八味丸> 身体冷感,腰痛,利尿障害,倦怠感などで類似するが,八味丸は副腎の機能,血管運動神経,知覚神経などの異常や高血圧症状など,本方証よりも広範囲にわたる症状が現われるので,その鑑別ができる。
当帰芍薬散> 腰部や下肢の冷感,倦重感,利尿障害の点で本方証に似ているが,本方は排尿回数,量ともに多いのに対し当帰芍薬
は排尿回数,量ともに少なく排尿回数が多く,浮腫が現われるときな全身的に軽度に現われる。
五積散>  冷え症で疲れやすく,腰痛,坐骨神経痛で類似するが,さらに消化器症状が伴うか,あるいはその傾向があるので,本方との区別ができる。


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○腰と腰より下部がひどく冷え,冷感を自覚するものに用いる。「水中に坐するが如く」「腰以下冷痛し,腰重きこと五千銭を帯ぶるが如し」と表現され,腰,脚が冷痛し,腰が重く感じ,尿利が近くて尿量が多く,飲食が変わらない。脈は沈で遅,細,微,腹部は軟弱のものが多い。
○金匱要略にはこういう病気は腎著病といっている.要するに水毒があって,そのために身体下部(下焦)が厥冷するものである。また「身労して汗が出て着衣をぬらし,長くほっておいたために起る」とある。
○類聚方広義には本方に杏仁を加えたものを腎著湯といい,妊婦の浮腫,尿利増加,腰冷痛,喘咳するものを治すとある。
○また老人が尿を失禁し,腰脚重く冷痛するものによい。子供が14,15歳になっても遺尿,夜尿の止まないものに,本方に反鼻を加え,症によっては附子を加えて用いるとよいとある。



漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
 本方は水中に坐するが如き腰冷感,身体倦重感を目標にして用いられる。小便は稀薄で量が多い。脈は沈んで弱い。この病症も一種の水分不循,血行不調によるものであるから,茯苓と朮が主となっている。乾姜は温薬で血行を盛んにし寒冷を去り,茯苓の薬効を助けるものである。今本方と苓桂朮甘湯とを比較するにはその差異は乾姜と桂枝の出入にある。同じく水分不循,血行不調を治するのであるが,その病症を異にしている。桂枝の配伍は眩暈を治し,心悸亢進を治する。 乾姜の配伍は専ら寒冷を去るのである。ここに於て薬物配伍の妙用を知らねばならない。本方の応用は腰痛,腰冷,坐骨神経痛,帯下,遺尿,小児夜尿症である。

漢方入門講座〉 竜野 一雄先生
 運用,腰脚の冷重感,或は冷痛
 「腎著の病はその人身体重く,腰中冷ゆること水中に坐するが如く,形水状の如くにして反って渇せず,小便自利,飲食もとの如し。病下焦に属す。身労し汗出で衣裏冷湿,久々之を得れば腰以下冷痛し,腰重きこと五千銭を帯るが如し」(金匱要略五臓風寒病)腎著とは冷湿が腎に著いたとの意で,腎は腰髄と関係するから腰以下又は下腹部の冷感を主とし,腎は水分代謝と関係するから身重と冷湿が起るのである。しかし停水でないから渇も小便不利もない。腰がただ冷えるばかりでなく重い感じがするか,或は 冷痛するという点が 本方の特徴で,ただ痛むとか,ただ重感麻痺だけでは他の処方も之を治することがある。こういう冷えた状態では全身的にも冷え性なことは言うまでもなく脉も沈み弱い。腰痛,坐骨神経痛,夜尿症,帯下などで腰脚の冷えを訴えるものに使う。体表に在っては衣裏冷湿を応用して湿疹,潰瘍,瘻孔などで分泌物が薄く量が多く,肉芽不良貧血性のもの,腰脚が冷えれば確実である。腰脚の冷えを主とするものに当帰四逆加呉茱萸生姜湯,八味丸,当帰芍薬散桃核承気湯などがあるが,此等は他に個有の症状があるのと重いという感じはあまり訴えないので区別される。腰痛も右の外,大黄附子湯(脉緊弦)防已黄耆湯(脉浮)などがあるが区別は右の要領と同じにする。体表の皮膚病,潰瘍,冷汗等で区別すべきは附子湯,真武湯,桂枝加附子湯,桂枝加黄耆湯などがあるが,腰冷を伴うのは本方の特徴である。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 腰部又は腰以下に冷感を訴え,「水中に坐せるがごとく,また五千金を帯ぶるがごとし」という表現のとおりである。また冷えばかりでなく,五千金を帯ぶるごとく重く感じる。あるいは冷痛する。脈は沈んで細く微で,舌苔や口渇はなく,一般に腹壁は軟かいことが多い。小便不利や頻尿がある。また冷湿,陰下湿とあるように,湿疹のときには薄い分泌物をともなうものである。

勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
 此方は一名腎著病と云て下部腰間の水気に用て効あり。婦人久年腰冷帯下等ある者紅花を加えて与れば更に佳也。



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