健康情報: 消風散(しょうふうさん) の 効能・効果 と 副作用

2013年11月1日金曜日

消風散(しょうふうさん) の 効能・効果 と 副作用

漢方精撰百八方
26.〔方名〕消風散(しょうふうさん)

〔出典〕外科正宗(明・陳実功)

〔処方〕当帰3.0 石膏3.0 地黄3.0 木通2.0 牛蒡子2.0 蒼朮2.0 防風2.0 知母1.5 胡麻1.5 甘草1.0 荊芥1.0 苦参1.0 蝉退1.0

〔目標〕慢性皮膚疾患、強い瘙痒、滲出物過多、夏季に悪化、痂皮形成、皮膚枯燥、便秘、偏食(酸性食)、口渇。

〔かんどころ〕患部はカサブタが厚いか滲出物が多く、臭気があったり汚くみえる。そして掻くと液が多く出る。患部以外の健康な皮膚も浅黒く荒れ性でカサカサしている。

〔応用〕慢性に経過して何年も再発を繰り返す蕁麻疹、頑固な慢性湿疹で手をかえ品をかえても処方無効のものに長服させると奇効を奏することがある。本方の適応は漢方的表現をとれば湿性の陽証に属する慢性皮膚疾患ということになる。患部がきたなく浸出液に臭気があり、カサブタの出来やすいのは陽に属する。しかし急性または亜急性の軽症の場合なら越婢加朮湯がよく、悪臭強く濃い浸出液が出てカサブタ厚くきたない場合は桃核承気湯が適することが多い。本方と鑑別を要する点である。
  また本方は長期間(半年以上)の連用によってはじめて効をみることが多いのと、処方に稀用生薬があるので煎剤とするよりも散剤またはエキス散剤を用いた方が便利であり、兼用方としても応用出来る。

〔治験〕四十五才の主婦、終戦直後から湿疹がひどく一時は全身にひろがったが、その後は手足の内側の軟部に限局した。冬の寒い季節には少しよいが四月頃から悪化し夏になると眠れないほどひどくなり、口渇と便秘を伴う。あらゆる治療も効なく副腎皮質ホルモンで一時好転したが、翌夏また再発した。そこで局部をみると新旧各病期の症状がいりまじっているので、腹証により桃核承気湯を主方とし、十味敗毒湯と本方エキス散を合方して兼用(一回量二グラム)した。一ヶ月で桃核承気湯が不要となったので中止。その後、散剤だけで八ヶ月連用したら昨年の春以来再発をみない。

〔附方〕消風敗毒散

〔処方〕消風散と人参敗毒散の合方。これは表に風水があり汗によって解すことを目的に中国でよく用いるが、私は十味敗毒湯をとり消風散と合方してエキス散を用い良結果を得ている。
石原 明



漢方薬の実際知識 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
3 消風散(しょうふうさん)  (外科正宗)
〔当帰(とうき)、地黄(じおう)、石膏(せっこう)各三、防風(ぼうふう)、蒼朮(そうじゅつ)、木通(もくつう)、牛蒡子(ごぼうし)各二、知母(ちも)、胡麻(ごま)各一・五、蝉退(せんたい)、苦参(くじん)、荊芥(けいがい)、甘草(かんぞう)各一〕
 本方は亜急性または慢性の湿疹で内熱があり、分泌物が多く、瘙痒が非常に強いものに用いられる。本方證の湿疹は頑固な湿疹で、分泌物も多く、 痂皮のため患部はきたなく、地肌が見えるところは赤味を帯びており、痒みも強く、口渇を訴えるものに用いる。本方は秋から冬にかけては消失するが、夏にな り発汗すると悪化したり、うすい分泌物が止まらない湿疹を目標としたり、皮膚を爪で引っかくと、あとが丘状に盛りあがることを目標にすることもある。 
《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
41.消風散(しょうふうさん) 外科正宗

当帰3.0 地黄3.0 石膏3.0 防風2.0 蒼朮2.0 牛蒡子2.0 木通2.0 蝉退1.0 苦参1.0 荊芥1.0 知母1.0 胡麻1.0 甘草1.0

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
  長年瘉えない頑固な皮膚疾患で,患部が乾燥あるいは稀薄な分泌液があり,夏期もしくは温暖時に特に悪化しやすいもの。本方は10年,20年も治癒しない皮 膚病で十味敗毒湯などで効果がない場合に長期間服用させるとよい。特に夏期に患部が湿潤して稀薄な滲出液が止まらない湿疹に特効があるが,急性症状には無効でこの場合は越婢加朮湯が適する。



漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
 本方は湿疹の病変が再発,軽快を反復している過程に,皮ふ深部に波及したいわゆる慢性の湿疹症候群を対象に,繁用され著効のある処方として重宝されている。すなわちその主たる目安には次のごときものがある。
①急性湿疹のそれと異り,慢性湿疹特有の炎症,湿潤,糜爛,結痂性湿疹などが患部に交錯成て認められるもの。したがって部分的に乾燥していたり,分泌物があったり,あるいは掻痒を自覚するなどの症候群があるもの。
②患部は一見乾燥しているかに見えるが,瘙痒があってかくと分泌物が出て,そのあとが湿潤して治りにくいものや,温暖時や夏季に発汗すると増悪するもの。
③秋から冬にかけて消失するが,暑気にあうと悪瘡を形成し,結痂や稀薄な分泌液があるもの。
④常時患部が湿潤して長年瘉えないもの。

<他処方との鑑別>
 本方症状に似た分泌物や湿潤を認めるもので,急性湿疹には本方よりも越婢加朮湯が適する。 越婢加朮湯は滲出液過多や,水疱性湿疹または湿潤性湿疹を対象にし,本方適応症に見られる結痂,膿疱などを認めない。患部が乾燥して炎症症状と瘙痒がある点で温清飲(黄連解毒湯四物湯)と類似するが、温清飲は望診上貧血の傾向があって,しかも患部は充血性の赤味をおび,灼熱様の瘙痒感があり,掻くと鱗屑様のものが落ち,ほとんど滲出液がない点で区別する。また丘疹性湿疹で,掻爬後に出血または出血痕を残すものにも温清飲がよい。湿潤と瘙痒で八味丸料と似ているが,八味丸が適応する慢性湿疹は,老人性のもので排尿異常,腰冷,腰痛,口渇などを伴うので本方と区別できる。


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○亜急性,慢性の湿疹に用いる。その目標は,皮膚に丘疹が密生して癒合し,一面に発生,腫張し,滲出液が多くて湿潤し,瘙痒が甚だしいもので,あるいは口渇があり,あるいは厚い痂皮を生じて一見きたならしくみえる。活動的な病変のものである。大塚氏は「個々の発疹部が円形をなし,余り大きくなく,滲出液を生じるものに最もよい。」「夏期に増悪する経のが多い。」と述べている。
○本方の適応症は,漢方で陽証という場合で,若い元気な人に多く,患部の病変は顕著で,活動的である。もし病変がはっきりせず,丘疹は小さくて少なく,乾燥ぎみで,非活動的にみえるものには本方の適応症は少ない。このようなときは漢方では陰証とい感,当帰飲子などの適応症である。
○疎註要験に①頭部にふきでものが出て,熱感,瘙痒があり,ふけのでるものによい。
 ②風熱で赤の中が痒ゆく,頭痛するもの。濃く粘稠な鼻汁がでて長い間治らないもの。小児が生まれたてから赤くただれてなおらないものによい。



漢方治療の実際〉 大塚 敬節先生
○湿疹で分泌物が多く,痂皮を形成し,かゆみの強いものによい。口渇を訴えるものが多い。
○方函類聚「婦人年30ばかり,年々夏になれば惣身悪瘡を発し,肌膚,木皮の如く,痒搨時,稀水淋漓忍ぶべからず,諸医手を束て愈えず,余此方を用いること1月にして効あり,3月にして全く愈ゆ。」
○湿疹で分泌物が多く,貨幣状に痂皮をつくるものにこの方を用いてまことによ決きくことを知った。
○消風散のきく湿疹は夏期に増悪する傾向,分泌物が多い傾向がある。




漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 頑固な湿疹で,分泌物物く,痂皮を形成し,地肌が赤味を帯び,痒みが強く,口渇を訴えるものを目標とする。



外科正宗〉 陳 実 功 先生
 風湿,血脈に浸淫し,瘡疹を生ずることを致し,瘙痒

餐英館療治雑話〉 目黒 道琢先生
 此方,疥其の他一切の湿熱血脈に浸淫し,瘡疥を生じ,痒みつよみのをの治す。此方を亦,発表並びに土茯苓,大黄など用ひても愈えず,半年1年の久しきを歴て,痒みつよく,抓かねばd使ち没し(注蕁麻疹,皮膚紋画症などを含む)又はじとじと脂水出で,或は乾て愈ゆれば又跡より出で,或は病人腹内に熱あるを覚ゆ。時々発熱のように,ぐわっと上気し,夜に入れば別して痒み甚しきなどの証候此方を用ゆる標準なり。瘡疥の類,久しく愈え兼ぬるは血虚か血熱の2つに外ならず。血虚は当帰飲の血熱ならば此方の右に出るはなし。此方中にある苦参,別して血熱を去ること妙なり。虚人又は左程に熱深からざる者は石膏を去り用ゆべし。小児夏季に至ると疥の如き小瘡を発し,痒みつよく,夜寝かぬる者,世上多し。後世家は荊防敗毒散加浮萍,古方家は胎毒と云て紫円などにて下せども愈えず,斯様の証必ずしも胎毒ばかりに非ず。皮膚血脈の内に風湿を受けたる者を覚ゆ。此方に胡麻,石膏を去り用ゆべし。妙なり。


【副作用】
重大な副作用と初期症

1) 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等)を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
2) ミオパシー: 低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。

理由
 厚生省薬務局長より通知された昭和53年2月13日付薬発第158号「グリチルリチン酸等を含 有する医薬品の取り扱いについて」に基づく。

処置方法
 原則的には投与中止により改善するが、血清カリウム値のほか血中アルドステロン・レニ ン活性等の検査を行い、偽アルドステロン症と判定された場合は、症状の種類や程度により適切な治療を行う。低カリウム血症に対しては、カリウム剤の補給等により電解質 バランスの適正化を行う。


その他の副作用
過敏症:発疹、発赤、 瘙痒、蕁麻疹等
      このような症状があらわれた場合には投与を中止する。
理由
 本剤によると思われる 発疹、発赤、 痒、蕁麻疹等が 報告されているため。
処置方法
  原則的には投与中止にて改善するが、必要に応じて抗ヒスタミン剤・ステロイド剤投与等の適切な処置を行う。


消化器:食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、軟便、下痢等
理由
 本剤には石膏(セッコウ)・地黄(ジオウ)・当帰(トウキ)が含まれているため、
食欲不振、 胃部不快感、悪心、嘔吐、軟便、下痢等があらわれるおそれがある。
また、本剤によると 思われる消化器症状が文献・学会で報告されているため。
処置方法
 原則的には投与中止にて改善するが、病態に応じて適切な処置を行う。